再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
201510077A
報告書区分
総括
研究課題名
再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-010
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター )
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再発性多発軟骨炎(RP)は、原因不明で稀な難治性疾患である。疫学情報は不十分であり、診断・治療のための指針も作成されていない。実地臨床医の認知度も低く診断が見過ごされている症例も多い。全患者の約1割程度が致死的であるが、欧米の報告によると特に呼吸器合併症および循環器合併症により、予後不良となると報告されている。本研究では、本邦RP患者の実態調査を疫学的に実施し、疾患活動性指標および重症度分類を作成することを当初の目的とした。さらには、治療介入を含めた研究を計画することにより、RP診断・治療ガイドを作成することを、目標とする。
我々はH21~23年度本研究事業「再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立」において、RPに対する患者実態・疫学調査(全239症例)を行ない本邦の患者実態に加えて、RPの最重症型である呼吸器症状における免疫抑制剤の治療薬としての有効性を報告した。
同時にフランス希少自己免疫疾患研究センターのARNAUD博士との国際多施設共同研究を行い、疾患活動性を評価する指標として疾患活動性基準RPDAIを提唱した。現在RPDAIの結果を我々の疫学調査の結果と比較検討する形でRP重症度分類(案)の作成を試みている。本研究ではこの重症度分類(案)の公表とそのデータの収集を中心とする。
H26年度までの研究では、RPの重症型を再解析して重症度分類をより正確なものへとアレンジを図った。重症型とは呼吸器、中枢神経、循環器障害をそれぞれ合併した状態であるが、既にこれらの解析を終了し論文公表した。
H27年度研究においては、RPにて多く認められる皮膚合併症と骨髄異形成症候群(MDS)の実態を調査することを目的とした。MDSは高齢者を中心に多く発症するが、一般的には致死性の高い疾患である。前述のRPDAIおよび我々のRP重症度分類(案)では、皮膚合併症のスコアリングは低い。本邦のRP実態に即して、RPDAI、重症度分類(案)ともに修正をかける前提で、研究を開始した。
研究方法
平成26年度研究では、当初に平成21~平成23年度本研究事業で行った患者実態・疫学調査(全239症例)をもとに中枢神経症状と心臓血管症状に関して詳細解析を行った。その結果および前回の疫学調査をあわせ解析すると、全患者のうち17症例に循環器合併症がみられた。この割合は、欧米のものよりも明らかに低い。しかしながら、その死亡率は35%と全体の割合(9%)に比較し明らかに高く、RPDAIおよび重症度分類(案)のスコアリングは本邦の現状に即したものと判断した。
本年度は、いままでの疫学調査の再解析の形で、RPにおける皮膚合併症と皮膚外合併症の関連を検討した。これは過去の研究にて、RPではスィート病とMDSが同時に合併することが多く認められると報告されていることを受けている。作成中のRP重症度分類(案)では、RPDAI同様に皮膚合併症には低いスコアがつけられており、しかも対象合併症は紫斑のみである。したがって修正を前提に解析を実施した。
結果と考察
全239例の本邦RP患者のうち、33人が皮膚症状を合併した。死亡率は15%と全体に比しやや高い。診断は、四肢結節性紅斑が15名と最も多く、四肢丘疹、皮膚潰瘍、アトピー性皮膚炎、紫斑、脂肪織炎が2名と続き、さらに皮膚血管炎、蜂窩織炎、毛嚢炎様紫斑、乾癬を1名に認めた。また粘膜病変ではあるが、口腔内または外陰部潰瘍を5名に認めた。
皮膚外病変との合併における解析では、MDS罹患5名、ベーチェット病5名、深部静脈血栓症2名、血管炎症候群1名の患者全員が皮膚病変を合併するという特徴を持った。2名のMDS患者はスィート病も合併している。
今回の追跡調査では、MDS合併RP患者5名の平均追跡期間は2.8年であった。その追跡期間でも4名が生存しており、前述の厚生労働省班会議研究の報告に照らすと、高リスク群である可能性は低いと考えられた。
これらのことより、本邦RPにおける皮膚合併症・皮膚外合併症の現状は、国際的な基準と大きく異ならないことが判明した。さらに、皮膚外合併症のうち最重症と考えられていたMDSの経過がそれほど悪くないので、重症度分類(案)のスコアリングも変更なしで可と判断した。しかし、多様な皮膚症状が観察されたため、現行の重症度分類(案)での皮膚合併症(紫斑)を、皮膚合併症(紫斑、紅斑、スィート病等の皮膚病変)への変更することを提案した。
結論
平成27年度研究では、本邦RPにおける皮膚合併症と皮膚外合併症の解析を実施し、その重症度分類(案)修正した。今後は、経過観察を含めた再疫学調査を予定している。全国の再発性多発軟骨炎の専門医の意見を聴取して、より完成度の高いRP重症度分類(案)を完成させる。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510077Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,006,000円
(2)補助金確定額
1,006,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 86,957円
人件費・謝金 225,067円
旅費 7,794円
その他 455,182円
間接経費 231,000円
合計 1,006,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
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