痙攣性発声障害の診断基準および重症度分類の策定に関する研究

文献情報

文献番号
201510076A
報告書区分
総括
研究課題名
痙攣性発声障害の診断基準および重症度分類の策定に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
兵頭 政光(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 宗一(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門 )
  • 大森 孝一(京都大学大学院 医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 石毛 美代子(東北文化学園大学 医療福祉学部リハビリテーション学科)
  • 西澤 典子(北海道医療大学 心理科学部言語聴覚療法学科)
  • 城本 修(県立広島大学 保健福祉学部コミュニケーション障害学科)
  • 讃岐 徹治(熊本大学 医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 阪口 昌彦(高知大学 医学部附属病院次世代医療創造センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の大森孝一は、平成27年10月1日付けで福島県立医科大学から京都大学に所属研究機関が変更になった。

研究報告書(概要版)

研究目的
 痙攣性発声障害は発声器官に器質的異常や運動麻痺を認めない機能性発声障害の一つで、発声時に不随意的・断続的な声の途切れや詰まり、失声などの症状を呈する。病型は内転型と外転型に分けられるが、いずれにおいても日常の会話が円滑にできず、社会生活が著しく障害される。本疾患は人口10万人あたり1人程度の稀な疾患とされている(山崎竜一, 音声言語, 2001)が、その患者実態はほとんどわかっていない。このため、国内はもとより海外においても診断基準や治療指針が確立されておらず、臨床的に非常に大きな問題となっている。
 本研究では本症の客観的な臨床像を明らかにするとともに、申請者らが所属する日本音声言語医学会および日本耳鼻咽喉科学会と協力して、本疾患の診断基準および重症度分類を作成し公表する。
研究方法
 申請者らは平成25年度に本邦における痙攣性発声障害の患者数、年齢、性別、音声症状などに関して大規模な疫学調査を実施した。本研究では、この疫学調査を基にして、臨床データを統計学的に解析する。また、音声データや音声機能検査データを収集して患者データベースを作成し、痙攣性発声障害の臨床像および音声所見を多角的かつ客観的に解析する。
 これらのデータを基にして、本症の診断基準および重症度分類を作成する。その際、本症の診療経験が豊富な有識者からも研究協力者として助言を得る。また、本研究の班会議を開催し研究分担者及び研究協力者が直接討議する。
結果と考察
 平成25年度に実施した全国疫学調査のデータを解析し、本症の臨床的特徴、特に鑑別上重要となる症状を抽出した。その結果、内転型では声のつまり、ふるえ、途切れなどが断続的に出現することが特徴的であり、外転型では気息性嗄声や声の抜け、湿性などが特徴的であった。発症年齢は20歳台が最も多く、性別では男女比が約1:4で女性に多かった。発症から診断までの中央値は3年0ヵ月であり、適切な診断の困難さが伺われた。以上の結果を参考にして、上記の症状を主症状と位置づけるとともに、参考症状として、話しにくい特定の語がある、発話以外の音声・裏声・歌声では主症状が軽減あるいは消失する、精神的緊張により音声症状が悪化する、症状出現に場面特異性があることなどを挙げた。これらの臨床的特徴を基にして診断基準の作成を進めており、本年度中に2回の班会議を開いて診断基準の素案を作成した。また、重症度分類においては、発声障害による日常生活の支障度などの自覚的評価(VHIやV-RQOL)を重視して、基準作成を進めている。
 また、本症の診断基準や重症度分類策定やその検証の参考にする目的で、痙攣性発声障害患者データベースを作成し、現在登録を順次行っている。将来的には患者の全国登録にも活用することを視野に入れている。
結論
 痙攣性発声障害の臨床像、特に音声症状の特徴を明らかにすることで診断基準(案)を作成した。現在は発声障害による日常生活の支障度などを指標とした重症度分類の作成を進めている。また痙攣性発声障害患者データベースを作成し、症例登録を進めている。このデータベースを活用して診断基準や重症度分類の妥当性について検証を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510076Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
988,000円
(2)補助金確定額
988,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 607,989円
人件費・謝金 40,000円
旅費 46,460円
その他 75,551円
間接経費 218,000円
合計 988,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
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