新規疾患; TAFRO症候群の確立のための研究

文献情報

文献番号
201510075A
報告書区分
総括
研究課題名
新規疾患; TAFRO症候群の確立のための研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
正木 康史(金沢医科大学 血液免疫内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 中村栄男(名古屋大学大学院医学系研究科 病理学)
  • 小島 勝(獨協医科大学 病理)
  • 川端 浩(京都大学医学研究科 血液内科学)
  • 佐藤康晴 (岡山大学大学院保健学研究科 病理学)
  • 木下朝博(愛知県がんセンター中央病院 血液・腫瘍内科学)
  • 塚本憲史(群馬大学医学部附属病院腫瘍センター 血液内科学)
  • 青木定夫(新潟薬科大学 薬学部病態生理学研究室)
  • 石垣靖人(金沢医科大学総合医学研究所・細胞生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 TAFRO症候群は、2010年に本邦より発信された新たな疾患概念である。TAFRO症候群は、thrombocytopenia;血小板減少, anasarca;全身浮腫・胸腹水, fever;発熱, reticulin fibrosis;骨髄のレチクリン線維症と巨核球の増勢, organomegaly;肝脾腫やリンパ節腫大などの臓器腫大、からなる造語であり、類似例が相次いで報告され注目を集めている。本疾患の病態はまだ解明されていないが、自己免疫・アレルギー・悪性腫瘍・感染症その他様々な病因が推定されている。TAFROのリンパ組織の病理像が多中心性Castleman病(MCD)に類似する事から、本症はMCDの特殊型と位置づけられる事もある。しかし、典型的なMCDとは幾つかの点で臨床像が異なる。例えば MCDの経過は多くが慢性で多クローン性高ガンマグロブリン血症を来し大きなリンパ節病変を認めるのに対し、TAFRO症候群の経過は急性・亜急性であり、高ガンマグロブリン血症は軽度あるいは正常でリンパ節も大きなものは認めない。TAFRO症候群では全身状態が急速に重篤化するため、迅速かつ的確な診断と治療が必要である。今までにこのような疾患概念がなかったため、臨床家はその診断と治療に苦慮してきた。この新しい疾患について診断基準と治療指針を策定する事を第一の目的とした。
研究方法
 臨床所見を蓄積するために全国的な多施設共同後方視的調査登録研究(UMIN000011809)で後方視登録を開始し、すでに多数(180例以上)の症例が登録されている。班会議およびその後のメール会議を通じで、TAFRO症候群の独立性や他疾患との異同を議論し、診断基準・重症度分類・治療指針の2015年度版を作成した。
結果と考察
 診断基準項目として、まず必須項目を3項目;①体液貯留、②血小板減少、③原因不明の発熱または 炎症反応陽性を定め、さらに小項目4項目①リンパ節生検でCastleman病様の所見、②骨髄線維化または骨髄巨核球増多、③軽度の臓器腫大、④進行性の腎障害とした。そして、必須項目3項目+小項目2項目以上を満たす場合TAFRO症候群と診断可能とした。重症度は、体液貯留、血小板減少、原因不明の発熱・炎症反応高値、腎障害の各々の項目をスコア化し分類する案を策定した。治療指針として、これまでの治療経験や報告に基づき、初期治療としては大量ステロイド(あるいはパルス療法)、二次治療はcyclosporinA, tocilizumab, rituximabなどを、血小板減少例にはTPO受容体作動薬を推奨する指針を提唱した。これらはホームページ上(https://www.facebook.com/CastlemanTAFRO)に公開した。さらには、英語論文化しInt J Hematol, 2016に掲載予定である。
結論
 TAFRO症候群はまだ歴史も浅く、その病因病態も全くわかっていない。今後もさらに後方視的症例登録を続けデータを蓄積するとともに、病理専門医の協力を仰ぎ臨床-病理中央診断を行ない、臨床病理学的な解析を追加検討する。さらに前方視研究を行い血清や病理検体を収集し、病因病態解明のための基礎研究も開始する予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510075Z