中隔視神経異形成症の実態調査と診断基準・重症度分類の作成に関する研究

文献情報

文献番号
201510074A
報告書区分
総括
研究課題名
中隔視神経異形成症の実態調査と診断基準・重症度分類の作成に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 光広(昭和大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 美保(浜松医科大学)
  • 田島 敏広(自治医科大学)
  • 川村 孝(京都大学環境安全保健機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
844,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の田島敏広が2015年12月7日から、北海道大学 講師から自治医科大学 教授に所属機関変更し転任

研究報告書(概要版)

研究目的
 中隔視神経異形成症Septo-optic dysplasia (SOD)は、透明中隔欠損と視神経低形成に、下垂体機能低下症を伴う先天異常である。英国の調査では年間発生率は1/1万出生以下と推測されるまれな疾患である。脳と眼と下垂体の3症状をきたす典型例は30%のみで、国内・海外ともに統一された診断基準はなく、視覚障害、てんかん発作や脳性麻痺など難治性疾患である一方、知能障害は正常から重度まで重症度に差がみられ、客観的な指標に基づく疾患概念が確立していない。近年HESX1などの遺伝子変異が報告され、我々もSOX2変異によるSOD症例を報告したが,多くは原因不明で、若年出産,薬物中毒との関連も推測されており、疫学調査が必要である。下垂体症状については治療可能であり、早期診断による発達、発育と生命予後改善が期待されることから、実態調査が急務である。
 平成26年度は文献調査を主とするケースシリーズによる予備調査を行ない、国内で135症例が確認された。また、眼症状、神経症状、内分泌症状毎に重症度分類を作成した。ただし、文献は会議録が主体で、病歴や症状、検査所見については不明な項目が多く、さらに詳細調査によって診断基準と重症度分類の妥当性を検証する必要がある。過去に学会等で症例報告を行った施設に詳細な実態調査を依頼し、前年度作成した診断基準と重症度分類の妥当性を検討する。
研究方法
 昨年度の調査で明らかにされた過去の報告症例(検索文献数160件、重複や総説を除く93文献)から、施設の現住所が確認できた90文献の診療科責任者宛てに疫学調査表を送付した。
 疫学調査用の調査項目選定は、前年度の文献調査で用いた調査票をベースに、研究班員間で再検討し、5.内分泌症状:初発症状のチェック項目に「思春期早発症」を追加し、新たに、8.医療・福祉施策の取得内容を追加した。
 眼症状については研究分担者の佐藤が、内分泌症状については研究分担者の田島が、患者背景、神経症状、頭部画像所見、医療福祉政策の取得内容、自由記載については、研究代表者の加藤が調査結果をまとめ、診断基準と重症度分類の妥当性について検討した。
結果と考察
 国内の学会や研究会等で報告された症例の診療科責任者90施設に、報告の書誌事項を明示して疫学調査票を送付し、有効回答の得られた28施設51例について、現行の診断基準と重症度分類の妥当性を検証した。
 患者背景としては、眼症状の併発率が最も高いが、小児科からの報告が多かった。眼症状の発症は新生児もしくは乳児期が多く、その後も神経症状や内分泌症状など全身の系統管理が必要なことを反映して小児科を主治医としている場合が多いと考えられた。ただし、三徴候のなかでは眼症状の併発率が最も高く、眼科と連携して診療を行う必要がある。
 今回の調査では男性に多い傾向がみられたが、前年度の調査では性差は認められず、前年度同様に全例孤発例であり、家族性発症の可能性は低いと考えられた。染色体異常例はなく、原因遺伝子解析が行われた12例中1例にHESX1変異が認められた。19歳以下の若年出産が4例、出生時頭囲が30cm未満の小頭症が3例、三徴候以外の併発奇形を16例に認め、口唇口蓋裂が7例と比較的特徴的であったが、その他に特徴的な所見はなく、原因は多様であることが推測された。
 前回の調査同様に、神経症状の幅は正常から大島分類1の重症児まで幅が広く、神経症状単独で診断することは困難と考えられた。現行の神経所見の診断基準は、「透明中隔欠損を認める」であるが、透明中隔に異常のない症例が13例あった。しかし、全例で何らかの頭蓋内正中構造の異常を認め、眼症状と内分泌症状を併発し、重症度が不明の2例を除き11例中10例は重症と判断されており、神経症状に関する現行の診断基準は妥当と考えられた。
 重症度に関して、重症例は神経症状は13例、眼症状が20例、内分泌症状が7例で、単独徴候で重症と判断された症例は23例、三徴候を統合して重症と判断された症例は40例であった。二徴候以上の併発を診断基準としており、重症例が単独徴候より増加することは予想されたが、単独での重症例の多くは眼症状であることが明らかにされた。今回の調査では該当例はなかったが、現行では併発症のない大島分類10-16および併発症のある大島分類21の群が重症度分類から漏れている。眼症状と内分泌症状の併発によっては重症と判定される可能性があり、併発症のない大島分類10-16および併発症のある大島分類21を神経症状の軽症に加えることが望ましいと考えられた。
結論
昨年度作成した中隔視神経異形成症(形成異常症)の診断基準は妥当である。重症度分類に関しては重症例の判定は妥当であるが、軽症例の判定から漏れる可能性がある群を重症度分類に包含することが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510074Z