機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムに関する研究

文献情報

文献番号
201510073A
報告書区分
総括
研究課題名
機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムに関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 奉延(慶應義塾大学医学部小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 鳴海 覚志(慶應義塾大学医学部小児科学教室)
  • 高橋 裕(神戸大学医学部糖尿病内分泌内科)
  • 安達昌功(神奈川県立こども医療センター)
  • 石井智弘(慶應義塾大学医学部小児科学教室)
  • 坂本好昭(慶應義塾大学医学部形成外科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
様々な器官のcAMPパスウェイを介在するGs蛋白質をコードする遺伝子GNASに体細胞モザイク性機能亢進変異が生じる機能亢進型GNAS変異関連疾患には最重症型であるMcCune-Albright症候群(MAS)のみならず、線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫、その他を含む。本研究の目的は、機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムを解明することである。当該研究年度の具体的な目的は、1.MAS、線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫の実態調査を行う、2.MASの診断基準および重症度分類を策定し、学会での承認を得る、3.機能亢進型GNAS変異の検出を試みる研究の対象となる疾患を設定し、疾患対象者の試料を収集する、4.疾患対象者の機能亢進型GNAS変異の検出を試みる、の4点である。
研究方法
1.実態調査として日本小児内分泌学会評議員を対象に機能亢進型GNAS変異関連疾患として、McCune-Albright症候群(MAS)、線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫の実態調査(一次調査)を行った。2.日本小児科学会、日本小児内分泌学会、日本内分泌学会、厚生労働科学研究費補助金「性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及研究班」とともに、MASの診断基準および重症度分類の策定を試みた。3.機能亢進型GNAS変異関連疾患の試料収集に際し、今回の研究の疾患対象をMAS、単骨性線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫の4疾患とした。4.次世代型遺伝子解析装置を用いて、対象疾患の試料(末梢血および病変手術試料)における機能亢進型GNAS変異(R201H, R201C, Q227L)の検出を試みた。
なお倫理面への配慮として、本研究は慶應義塾大学医学部倫理委員会、神戸大学院医学研究科遺伝子解析研究倫理委員会、神戸大学医学部倫理委員会の承認のもとに行った。またヘルシンキ宣言、ヒトを対象とする医学系研究に関する倫理指針、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に準拠した。
結果と考察
1.評議員106名(施設数63/115施設:55.8%)から回答を得た。2016年1月1日現在、日本小児内分泌学会評議員勤務施設で診療されている機能亢進型GNAS変異関連疾患の総数は160例であった。すなわち我が国で初めて機能亢進型GNAS変異関連疾患の実態調査を行い、機能亢進型GNAS変異関連疾患の総数を把握した。なお二次調査を行うため、慶應義塾大学医学部倫理委員会に申請し、承認を得た。2.MASの診断基準および重症度分類を策定し、日本小児内分泌学会での承認を得た。MASの診断、重症度、および治療に関する情報が一元化されたことにより、今後の機能亢進型GNAS変異関連疾患、とくにMAS診療の質の向上に寄与する。また、この診断基準および重症度分類を用い、日本小児科学会を通じてMASを第3次指定難病の対象疾患として厚生労働省に要望した。3.全国からMAS37例、単骨性線維性骨異形成12例、機能性下垂体腺腫59例、自律性卵巣嚢腫11例の試料を収集した。4.単骨性線維性骨異形成8例全例で骨病変と末梢血のいずれかまたは両者でモザイクとして機能亢進型GNAS変異を同定した。4例では骨病変由来DNAのPCRでGNASのみなならず、GAPDHも増幅されなかった。このうちの3例の骨検体は、脱灰処理時にギ酸を使用したホルマリン固定パラフィン包埋切片であった。もう1例の骨検体は凍結骨であるが、6回の手術を受けており、肉眼的に骨が強く石灰化していた。以上より、単骨性線維性骨異形成は機能亢進型GNAS変異関連疾患であり、単一疾患である。ホルマリン固定パラフィン包埋切片の脱灰処理時にギ酸によりDNAは損傷を受ける。強く石灰化した骨病変から通常の方法ではDNA抽出は困難である。先端巨大症59例30例で下垂体腺腫病変にモザイクとして機能亢進型GNAS変異を同定した。30例中4例において末梢血リンパ球においても機能亢進型GNAS変異を同定した。散発性先端巨大症の少なくとも一部はモザイク機能亢進型GNAS体細胞変異によって発症する。自律性卵巣嚢腫1例において、患児の末梢血リンパ球にモザイクとして機能亢進型GNAS変異を同定した。自律性卵巣嚢腫の少なくとも一部は機能亢進型GNAS体細胞変異によって発症する。
結論
当該研究年度に機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムに関し、実態調査・MASの診断基準および重症度分類の策定・機能亢進型GNAS変異の検出を試みる疾患対象者の試料収集・次世代型遺伝子解析装置を用いた対象疾患の試料(末梢血および病変手術試料)における機能亢進型GNAS変異検出、など多くの知見が集積された。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510073Z