霊長類を介する人獣共通感染症の制御に関する研究

文献情報

文献番号
199800496A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類を介する人獣共通感染症の制御に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
山田 章雄(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 吉川泰弘(東京大学)
  • 神山恒夫(国立感染症研究所)
  • 向井鐐三郎(国立感染症研究所)
  • 森川 茂(国立感染症研究所)
  • 藤本浩二(予防衛生協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
実験用霊長類にはヒトに感染する病原体に汚染されている個体のある可能性がある。特にBウイルスやエボラウイルスなどはヒトに感染した場合重篤となり高い死亡率を示すことが知られている。これらのウイルスによるヒトへの感染事故を未然に防止するためには、感染個体を確実に検出することが重要である。本年度はBウイルスならびにエボラ、マールブルグなどのフィロウイルスを血清学的あるいは分子生物学的に検出するシステムの開発を目的とした。
研究方法
Bウイルスに関してはBウイルス抗原の代替抗原として使用に耐えるものがあるかいなかを検討した。また,米国Oklahoma 州立大学およびSouthwestern Foundationとの共同で,国立感染症研究所筑波医学実験用霊長類センターで飼育されていた抗体陽性ザルについて,血清学的検査と三叉神経節からのPCRによるウイルスゲノムの検出を行った。フィロウイルスに関しては,エボラウイルスのNP蛋白をコードする遺伝子を発現させ,抗原として使用できるか否かを検討した。
結果と考察
フィロウイルスに関しては、昨年度エボラウイルスのNP蛋白をコードする遺伝子を発現させ,抗原として使用できるか否かを検討したが、非特異反応が多く本年度はその改善を目指した。エボラウイルスNP蛋白を哺乳動物細胞で遺伝子発現を可能にするバキュロウイルスベクターに挿入し,得られた組み替えウイルスをHeLa細胞感染させ蛍光抗体法(IF)様の抗原としたところ,非特異反応の極めて少ない,感度,特性の点でも優れた方法であることが認められた。また,およそ100アミノ酸から成る相互に重複するペプチドに分割し,その抗原性を免疫沈降法及びウエスタンブロッティングで調べたところ,C末端側と、NP5-8が、特異性並びに感度から考えて,エボラウイルスに対する抗体測定のための抗原として使用できる可能性が示された。また、米国CDCとの共同でこれらの抗原を用いた抗体検出方の評価を行ったところ,感度,精度いずれにおいてもCDCで採用されている方法に匹敵することが判明した。フィリピン熱帯医学研究所に保存されているReston感染サルのホルマリン固定組織8検体をパラフィン包埋切片からRNAを抽出しRT-PCR反応を行なった結果、2検体が陽性であった。陽性反応を呈したサンプルは遺伝子配列からRestonであることが確認された。また,免疫組織染色では陽性例すべてに,肝および脾にウイルス抗原が検出された。Bウイルスに関してはBウイルス抗原の代替抗原として使用に耐えるものがあるかいなかを検討したところ,アフリカミドリザル由来のSA-8が特異性及び感度の点で優れている可能性が示された。このウイルス抗原を用いた診断法の確立のため、様々な血清検体で検討中である。また、米国Oklahoma 州立大学およびSouthwestern Foundationとの共同で,国立感染症研究所筑波医学実験用霊長類センターで飼育されていた抗体陽性ザルについて、血清学的検査と三叉神経節からのPCRによるウイルスゲノムの検出を行った。血清学的検査に関しては筑波医学実験用霊長類センターにおける成績とほぼ一致していたが,少数例で曖昧な場合が認められ、検査法のより一層の改良が望まれた。PCRでは特異的なバンドが検出できたが、再現性を確認する必要がある。
結論
フィロウイルスの検出系に関してはほぼ満足のできる成績が得られた。SA8が代替抗原として使用できることは各研究施設で,Bウイルスの浸淫状況を把握できる可能性を示している。しかし,Bウイルスを確定的に診断するためには発現系の速やかな樹立が望まれる。

公開日・更新日

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更新日
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