ミトコンドリア病の調査研究

文献情報

文献番号
201510043A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア病の調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-053
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 仁(自治医科大学小児科)
  • 大竹 明(埼玉医科大学小児科)
  • 北風 政史(国立循環器病研究センター)
  • 古賀 靖敏(久留米大学医学部小児科)
  • 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター)
  • 佐野 輝(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系精神機能病学)
  • 末岡 浩(慶應義塾大学・産婦人科学)
  • 田中 雅嗣(東京都健康長寿医療センター)
  • 三牧 正和(帝京大学医学部附属病院・小児科学)
  • 山岨 達也(東京大学医学部・耳鼻咽喉科)
  • 米田 誠(福井県立大学・看護福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,487,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア病の多様な遺伝形式、多様な臨床症状、多様な臨床経過などから、その全体象を捕らえられていない。わが国における患者数、病型分類や合併症、現行の治療法などの実態調査を行うことが不可欠である。その上で「診療ガイドライン」を作成し、患者レジストリーを構築し、具体的な臨床研究・治験を進める基盤を作ることが必要である。
研究方法
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の診断に必要な3種類の検査方法(病理検査、生化学検査、遺伝子検査)の標準化と集約的な診断体制の構築を継続する。特に遺伝子検査の重要性が一段と増しており、臨床検査としての遺伝子検査実施体制の構築が行われる中に、ミトコンドリア病の遺伝子検査を位置づける。
2)認定基準の改定、重症度スケール、グローバルな診断基準作成に参加
 平成26年10月に診断基準と重症度分類を策定した。その改訂版の検討、及び、個別病型の診断基準策定を行う。
3)診療ガイドラインの作成
 実用化研究事業の村山班と協力して、診療ガイドラインを作成する。
4)ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワークと情報提供体制の整備
 患者・家族や本疾患を診ている医療従事者に対して、本疾患の医療情報をホームページ等で提供する。「ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワーク」を構築する。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
 実用化研究事業の村山班と協力して、連携しながら、日本におけるミトコンドリア病患者レジストリーを構築する。すでに、webを用いたプロトタイプを構築し、登録作業を開始する。
結果と考察
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の確定診断には、病理検査、生化学検査、遺伝子検査を行い、総合的な評価が必要である。特に遺伝子検査が重要であり、NCNPでは次世代シークエンサーを用いたミトコンドリアDNA検査を試みており、実用に耐える方法を確立した。分担研究者の大竹らは、埼玉医科大学を中心に、酵素診断から網羅的な遺伝子検査にいたる系統的病因検索システムを構築した。次世代シークエンサーを用いたエキソーム解析を行い、多数の症例で病因となる遺伝子変異を同定した。
2)診断基準、重症度スケールの作成
 2015年1月に始まった指定難病の認定に際して、新たな認定基準を作成した。一方で、小児慢性特定疾患の診断基準との整合性や臨床試験のための個別病型の診断基準作成も開始した。
3)診療ガイドラインの作成
 実用化研究班(村山班)と協力して診療ガイドライン作成を行う予定であり平成27年度に着手した。ミトコンドリア病は診断基準が確定されていないこともあり、エビデンスとして採用できる研究成果が少なく、Minds方式のガイドライン作成は極めて困難な状況にある。
4)ミトコンドリア病の情報提供体制の整備
 平成24年度に作成したパンフレットでは、以前から治療に関する記述が乏しいという指摘があった。そのため、ミトコンドリア病治療を目指して活動を行っている一般社団法人「こいのぼり」(http://koinobori-mito.jp)の協力をいただき、その点を考慮して内容をアップデートさせるための準備を始めた。「ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワーク」を構築する計画については、当初予定していた全国を7つの地域に分け、医療情報の提供や実態調査の援助をする計画である。平成28年度に具体的な活動を行う。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
NCNPにおけるミトコンドリア病患者レジストリーは、ウェブを用いた登録システムを構築した。平成28年度から実質的な登録を始める予定である。
結論
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 次世代シークエンサーを用いたミトコンドリアDNA解析法を新たに構築し、また、核DNA検査を中核とする系統的病因検索システムを構築した。
2)診断基準、重症度スケールについて
 小児慢性特定疾患の診断基準との整合性や臨床試験のための個別病型の診断基準作成も開始し、MELASとLeigh脳症の診断基準を実用化研究班(村山班)と合同で作成した。
3)診療ガイドラインの作成
実用化研究班(村山班)と協力して診療ガイドライン作成を行う予定であり平成27年度に着手した。
4)ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワークと情報提供体制の整備
 多臓器に及ぶミトコンドリア病の診療ガイドラインを作成することは容易ではないが、実用化研究班(村山班)と連携して、平成28年度までに作成することを目指している。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
 新しいウェブを用いた登録システムを構築した。平成28年度から実質的な登録を始める予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510043Z