IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指した研究

文献情報

文献番号
201510040A
報告書区分
総括
研究課題名
IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指した研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-050
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 勉(京都大学 医学研究科 消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 和一(関西医科大学 内科学第三講座)
  • 下瀬川 徹(東北大学 医学系研究科)
  • 神澤 輝実(都立駒込病院 消化器内科)
  • 川 茂幸(信州大学 総合健康安全センター 消化器病学・肝臓病学)
  • 中村 誠司(九州大学 歯学部・歯科口腔外科学)
  • 三嶋 理晃(京都大学 医学研究科 呼吸器内科学)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 能登原 憲司(倉敷中央病院 病理診断科)
  • 滝川 一(帝京大学 医学部内科・消化器内科学)
  • 岩崎 栄典(慶応義塾大学 医学部内科学(消化器))
  • 児玉 裕三(京都大学 医学研究科 消化器内科学)
  • 三森 経世(京都大学 医学研究科 臨床免疫学)
  • 住田 孝之(筑波大学 医学医療系内科・膠原病・リウマチ・アレルギー)
  • 吉野 正(岡山大学 大学院医学薬学総合研究科 腫瘍病理学)
  • 赤水 尚史(和歌山県立医科大学 内科学第一講座)
  • 川野 充弘(金沢大学医学部附属病院 リウマチ・膠原病学)
  • 田中 良哉(産業医科大学 医学部第一内科学)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学 医学部消化器内科・免疫・リウマチ内科学講座)
  • 後藤 浩(東京医科大学 臨床医学系眼科学分野)
  • 松井 祥子(富山大学 保健管理センター 呼吸器科)
  • 佐藤 俊哉(京都大学 医学研究科 医療統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
21,338,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「IgG4関連疾患」は、血清IgG4高値と組織へのIgG4形質細胞浸潤を特徴とする全身疾患である。本疾患は難病法改定に伴い指定難病となった。そこで本研究では、本疾患の難病指定が適切に行われるための診断基準、重症度分類を策定し、国の難病支援事業に貢献することを目的とした。
研究方法
1)臓器別専門家による専門部会を組織して臓器別診断基準の策定・改訂を試みた。
2) 従来の7分科会に加えて、新たに「心臓・大動脈・後腹膜病変」分科会を設置して、臨床調査、病態の分析、診断基準策定作業を開始した。
3) 1)の臓器別診断基準、重症度分類をもとに、難病指定のための診断基準、重症度分類の策定を行った。
4) 多数例について遺伝子、蛋白解析を継続して行った。
5) 本疾患のステロイドによる標準治療法を確立するための前向き臨床試験を継続した。
6) アメリカと共同で抗CD20抗体による臨床試験を立案した。なお共同研究と同時に、わが国独自の臨床治験の計画も行いつつある。
7) 本疾患のより精度の高い診断法の確立について各分科会で検討した。
結果と考察
1)IgG4関連疾患の各臓器別診断基準の策定
「硬化性胆管炎」「自己免疫性膵炎」、「涙腺唾液腺炎」、「腎疾患」の診断基準の再検討を行った。「IgG4関連眼疾患」の診断基準、重症度分類の暫定案を策定した。これら各臓器の診断基準では、病理診断を行うこととなっているが、病理組織採取が困難な例が存在するため、診断基準として「基本的には、包括診断基準によるものとするが、それが困難な場合は臓器別診断基準により診断する」とした。

2)IgG4関連心臓・動脈・後腹膜病変の臨床調査、病態の分析及び診断基準の策定
IgG4関連「心臓・動脈・後腹膜病変」の分科会をたちあげ、その特徴や問題点について検討を行った。

3)IgG4関連疾患の患者認定のための診断基準、重症度分類の策定
「難病指定」のための診断基準として、「基本的には、包括診断基準によるものとするが、比較的生検が困難な臓器病変で、本基準を用いて臨床的に診断困難な場合には、各臓器病変の診断基準を用いて診断できる」とした。さらに本疾患全体の重症度分類を策定した。今後、他の指定難病の重症度との比較、整合性について検討を加える必要があると思われた。

4) 病因病態解明のための、遺伝子、蛋白解析
多数例で網羅的SNP解析、全エクソン解析を行った。その結果HLA領域とFcRIIbに強い相関が認められた。IgG4は抑制性の免疫グロブリンであり、またFcγR-IIbに親和性が強いことが明らかとなっている。さらに形質細胞は本Fc受容体のみを発現している。したがってFcγRIIbの多型がIgG4の結合や作用にどう影響するのか興味深い。

5) IgG4関連疾患標準治療法の確立
標準治療法の確立について、自己免疫性膵炎、涙腺唾液腺炎、個別に研究を行った。その結果、治療抵抗例、再発例が少なからず存在することが明らかとなった。

6) ステロイド抵抗例、再発例に対する新しい治療法開発のこころみ
アメリカと共同でリツキサンによる臨床試験を計画中である。ただ対象症例、初回投与量、維持投与量、期間など、両国でかなりの隔たりがあるため現在調整中である。また臨床試験の効果判定のための国際的な「IgG4 Responder Index」について両国で調整中である。一方わが国単独のリツキサン投与の臨床治験のプロトコールを三森班と共同で立案した。

7)IgG4関連疾患の新しい診断法の確立
IgG4関連疾患の診断には組織生検が重要であるが、膵臓や腎臓などは生検の施行が困難であり、確定診断に苦慮する場合も少なくない。そこで採取がより容易で侵襲の少ない口唇生検を64例に施行してその診断能を検討した。その結果その感度、特異度、正診率はそれぞれ、55.6, 100, 68.8%であった。以上より口唇生研による診断は困難と考えられたが、一方で特異度は高いことが判明した。
結論
(1) 各臓器の臓器別診断基準の策定を行い、新たに眼疾患の診断基準を発表した。
(2) 甲状腺疾患、下垂体炎の暫定的な診断基準、重症度分類を策定した。また「心臓・大動脈・後腹膜病変」分科会を設けて病態   解析、診断基準、重症度分類の策定を開始した。
(3) 臓器別、また全体の重症度分類を策定した。
(4) これら1)-3)について厚労省に指定難病認定用の資料として提出した。
(5) IgG4関連疾患患者の遺伝子解析の結果、IgG4関連疾患特有の遺伝子が同定された。
(6) 涙腺唾液腺炎、自己免疫性膵炎について、ステロイド治療の臨床試験を行った。
(7) アメリカと共同、及びわが国単独で、リツキサンによる国際共同臨床治験を計画中である。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510040Z