新生児期から高年期まで対応した、好酸球性消化管疾患および稀少消化管持続炎症症候群の診断治療指針、検査治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201510038A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児期から高年期まで対応した、好酸球性消化管疾患および稀少消化管持続炎症症候群の診断治療指針、検査治療法開発に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-048
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部免疫療法研究室および、生体防御系内科部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 芳一(島根大学医学部内科学講座)
  • 千葉 勉(京都大学医学研究 科内科学消化器 内科学講座)
  • 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器内科)
  • 山田 佳之(群馬県立小児医療 センター、アレルギー感染免疫)
  • 大塚 宜一(順天堂大学医学部 小児科学講座)
  • 工藤 孝広(順天堂大学医学部 小児科学講座)
  • 藤原 武男(国立成育医療研究センター、成育社会 医学研究部)
  • 新井 勝大(国立成育医療研究 センター、消化器 科)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療研究 センター、アレルギー科)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター、免疫アレ ルギー・感染研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
13,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
好酸球性消化管疾患(以下Eosinophilic Gastro-intestinal Disorder: EGIDとする)は、消化管の炎症性疾患であり以下に挙げる3疾患の総称である。
新生児-乳児における
①食物蛋白誘発胃腸炎 (N-FPIES; 日本のFood-Protein Induced Enterocolitis Syndromeの意)
幼児から高年期(高齢者)まで罹患する
②好酸球性食道炎 (EoE; Eosinophilic Esophagitis) 食道に炎症が限局
③好酸球性胃腸炎 (EGE; Eosinophilic Gastroenteritis) 消化管の広い範囲に炎症あり 
治療を行わなければ、生涯消化管炎症が持続する可能性が高い。
N-FPIESは重大な低栄養、消化管穿孔、イレウス、ショック、吐下血からの貧血などの事象を6%に見る。EGEも腸閉塞や穿孔性腹膜炎、低蛋白血症、消化管出血が見られ、中等症以上では、ステロイド内服依存症となり、さまざまな副作用に苦しむことが多い。
これらのphenotypeは欧米と大きく異なり日本特有である。日本の医学研究者に本症解明の責任が課せられている。次の6つの研究を課題とする。
1.EGID症例集積により正確な疾患概念を確立する
2.診断治療指針とMinds準拠ガイドラインを公開し、全国で正しい診療が行われるようにする
3.精度の高い診断法を確立する(生体資料の検査については、他の研究計画にて行っている)。
4.6種食物除去をEGE重症患者で行い、有用性を評価する。
5.発症原因、発症リスクファクターの同定、遺伝的背景の探索。
6.世界のEGIDとの比較を行う。

研究方法
1.正確な疾患概念を確立する(症例集積研究、疾患コホート研究)。全国の各主治医から患者医療情報についてオンライン登録を行ってもらい、臨床データを蓄積、解析を行う。
2.Minds準拠ガイドライン作成;新生児-乳児、幼児-成人の2つのグループに分かれて、論文検索、各論文の構造化抄録を作成、エビデンスレベルと推奨度を決定する。
3.診断検査確立、消化管組織好酸球数正常値決定;EGIDのない患者の消化管組織好酸球を計測、正常値を決定する。
4.特に有望な6種食物除去について評価する(症例集積研究)。重症EGEについて寛解導入とその後の原因食物同定を行う。
5.発症原因を探索するために、N-FPIESと対照における、妊娠中の母の食物摂取状況など、質問紙を作成し、聞き取り調査を行う(症例対照研究)。
6.国際学会でこれまでの結果を議論する。
結果と考察
1.全国からのオンライン登録により、新登録サイト(Bサイト)264名の新たな登録を得た。これまでのAサイトの750名と合わせて、1000名に到達している。Aサイトの新生児-乳児N-FPIESの診断が確実と思われる350名について解析が行われた。発症日がクラスター1(嘔吐有、血便有)のグループが有意に早く、寛解も早期である。日本特有と考えられていたこのクラスター1は欧米にも多数存在する可能性が出てきた。開発中の診断バイオマーカーの確立が、国際的にも大きな意味を持ちはじめている。
2.Minds準拠ガイドラインについて; 2015年度も作成委員会と、責任者会議が開かれ、SRチームを選抜し、文献検索を行った。従来型診断治療指針の疾患別サイト検索数は、すべての医学的疾患のなかで、一位を維持するなど、全国の施設で利用され、患者の療に役立てたと考える。
3.2015年6月診断検査開発コホート開始し80名の登録がなされている。成人の各消化管組織の好酸球数正常値を確立し得た。これにより組織診断精度が高まると思われる。
4.EGEの症状寛解に成功し、その後の1食物1か月間連続摂取する長期負荷テストによって各患者がそれぞれ1-3種類持つ原因食物の同定も行え、QOLの大幅な改善が見られた。EGEは、これまで食物抗原の関与は疑問視されていたが、大きな転換点となりつつある。
5.患者からの聞き取り調査を実施した。
6.2つの論文が完成し、アジア人と白人の間で好酸球性消化管疾患の症状や好酸球浸潤部位に有意差があることが明らかになった。この発表によって、世界の研究者の認知が進むと考えられた。
結論
オンライン症例登録システムに支えられた詳細な臨床データと、それにリンクした免疫学的なデータが支えあって、高いレベルの事実が明らかになってきたと言える。通常の診断治療指針のブラッシュアップが進み、かつMinds準拠のガイドライン作成が進行している。欧米のFPIES診断治療指針作成グループにも編入され、国際的にも実力をもった研究グループとして認められつつある。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,524,000円
(2)補助金確定額
17,307,317円
差引額 [(1)-(2)]
216,683円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,586,291円
人件費・謝金 6,370,042円
旅費 2,142,426円
その他 3,164,558円
間接経費 4,044,000円
合計 17,307,317円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
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