脊柱靭帯骨化症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201510031A
報告書区分
総括
研究課題名
脊柱靭帯骨化症に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-038
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大川 淳(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 幹季(大阪労災病院整形外科)
  • 中嶋 秀明(福井大学医学部器官制御医学講座整形外科学)
  • 川口 善治(富山大学大学院医学薬学研究部整形外科学)
  • 山崎 正志(筑波大学医療系学部整形外科学)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学医学部整形外科学)
  • 松本 守雄(慶應義塾大学医学部整形外科学)
  • 竹下 克志(自治医科大学医学部整形外科学)
  • 今釜 史郎(名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学)
  • 松山 幸弘(浜松医科大学整形外科学)
  • 芳賀 信彦(東京大学医学部リハビリテーション医学)
  • 森 幹士(滋賀医科大学整形外科学)
  • 吉田 宗人(和歌山県立医科大学整形外科学)
  • 遠藤 直人(新潟大学教育研究院医歯学系整形外科学)
  • 小宮 節郎(鹿児島大学大学院運動機能修復学講座整形外科学)
  • 高畑 雅彦(北海道大学病院整形外科学)
  • 小澤 浩司(東北医科薬科大学整形外科)
  • 土屋 弘行(金沢大学医薬保健研究域医学系整形外科学)
  • 種市 洋(獨協医科大学整形外科学)
  • 山本 謙吾(東京医科大学整形外科学)
  • 渡辺 雅彦(東海大学医学部外科学系整形外科学)
  • 藤林 俊介(京都大学大学院医学研究科 運動器機能再建学講座)
  • 田中 雅人(岡山大学医歯薬学総合研究科整形外科学)
  • 田口 敏彦(山口大学大学院医学系研究科整形外科学)
  • 中島 康晴(九州大学大学院医学研究院整形外科学)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学医学系研究科総合医学専攻運動形態外科学)
  • 吉井 俊貴(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外科学)
  • 波呂 浩孝(山梨大学院医学工学総合研究科整形外科学)
  • 国府田正雄(千葉大学大学院医学研究院 整形外科学)
  • 石橋 恭之(弘前大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 佐藤 公昭(久留米大学医学部整形外科)
  • 筑田 博隆(東京大学医学部整形外科)
  • 海渡 貴司(大阪大学大学院器官制御外科学整形外科脊椎脊髄外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
16,387,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊柱に靭帯骨化をおこす、後縦靱帯骨化症(OPLL)、黄色靭帯骨化症(OYL)、びまん性特発性骨増殖症(DISH)、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の診断基準、重症度分類の作成、診療ガイドライン(GL)の作成、改訂を目標として、各疾患に対する多施設研究を中心とした臨床研究を行う。
研究方法
1)術中脊髄モニタリングの適切なアラームポイント設定、2)CTを用いた頸椎後縦靭帯骨化症における全脊柱評価3)DISHにおける脊椎損傷、4)頚椎OPLL患者における転倒による症状悪化に対する手術の影響、5)胸椎OPLLの手術成績、6)FOP症状経過と身体機能など、多数の多施設研究projectを立ち上げ、医学的根拠を蓄積していく。
結果と考察
1)14大学と2病院を対象として、2010年4月~2015年4月に行われた後縦靭帯骨化症手術の術中モニタリングについて調査を行った。振幅の70%低下をMEPのアラームポイントとしたところ、頚椎OPLL203例のうち10例に波形変化を認め、うち4例がレスキューされていた。麻痺遺残は6例である。胸椎OPLLは114例であり、波形変化20例のうち、レスキューが5例、麻痺遺残が14例であった。波形変化は椎弓切除による除圧操作時がもっとも多かった。その際には、脊髄への侵襲行為を中止する、血圧を上昇させる、体位を調整する、インストゥルメントにより脊柱後弯を矯正する、ステロイド剤の投与などの対策を取るべきと考えられた。
2)20施設が参加し、頚椎OPLL患者の全脊柱をCT撮影、OPLL、OYL、棘上靭帯骨化について相互関連の調査を行う。頚椎~仙椎まで撮影されたCT画像のうち、基本データが渉猟可能だった322名を対象とした。各椎間板、椎体レベルのOPLL数をOP indexとして骨化の重症度の指標とした。結果は、平均頚椎OP index 5.8±2.9で、胸椎は平均2.6、腰椎は0.7となり、全脊柱のOP indexでは平均9.2±6.7 となった。データを重回帰分析したところ、全脊柱のOPindexと有意な相関を示したのは、女性、頚椎OPindex、BMIであった。また、頚椎OPindexをgらで1-3と層別化すると、Gradeが1つ上がるごとに胸腰椎OPindexが6.4倍になることが判明した。それ以外においても、OYlと OALL、棘上靭帯骨化の存在はOPLLの重症度と相関があることがわかった。
3)全国12大学を中心に臨床データおよび治療成績の前向き集積を開始した。すでに200例を超える症例が集まっている。一部の結果であるが、受傷後24時間以内に正確な診断ができなかった例が40%、遅発性麻痺が29%に発生するなど診断時点での問題が浮き彫りになっている。80%に手術が行われていたが、今後CT画像をベースとした画像重症度分類を作成し、診療GLに反映されるような治療指針を策定する。
4)圧迫性頚髄症患者では、歩行バランスの低下による転倒の危険性が増大しており、転倒時の比較的軽微な外力による神経症状悪化が問題となる。手術治療の転倒への影響を2012年1月から2年間に手術治療を受けた圧迫性頚髄症患者を対象として、後ろ向きに検討を行った。すでに全国11施設から350例の症例が集積されており、一次解析を行った。その結果、術前には49%が転倒を経験していたが、術後は28%に減少していた。また、転倒による自覚的な神経症状の悪化は術前29%から術後は8%に減少し、手術の転倒防止および症状に対する効果が明らかとなった。
5)2011年11月から88例に対し、胸椎後方除圧固定術65例、後方固定術4例、後方除圧術6例で、後方侵入脊髄前方除圧術9例、前方除圧固定術4例が行われていた。周術期の合併症は約半数にみられ、術後麻痺が悪化しなかったのは32例であったが、一過性含む麻痺悪化を31例(35%)に認めた。麻痺例の詳細な検討から、骨化の椎間数、術前の重症度、術前体位変化による症状悪化などが術後麻痺出現に影響していることが推定された。
6)FOPは、進行性の異所性骨化により四肢関節拘縮、脊柱変形、開口障害を生じADLやQOLが低下する疾患である。現時点で、患者40名(男23名、女17名、10~45歳)を対象とし、病状の内容と今までの変化、画像上の特徴を調査した。その結果から、診断基準を策定した。症状のA項目、鑑別診断のB項目、遺伝学的検査のC項目から構成され、該当項目数からdefinite、possible、probableの3段階に分類した。





結論
靭帯骨化症調査研究班が新体制のもと発足してから2年経過し、少しずつ重要な結果が出始めている。今後、さらなる前向き臨床研究をおこなうことで質の高いエビデンスを蓄積していく。

公開日・更新日

公開日
2016-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510031Z