運動失調症の医療基盤に関する調査研究班

文献情報

文献番号
201510025A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の医療基盤に関する調査研究班
課題番号
H26-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 欽也 (東京医科歯科大学)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院)
  • 桑原 聡(千葉大学医学部)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究科)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学医歯学総合研究科)
  • 祖父江 元(名古屋大学医学部神経内科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学医学部)
  • 武田 篤(国立病院機構仙台西多賀病院)
  • 辻 省次(東京大学医学部神経内科)
  • 中島 健二(鳥取大学医学部神経内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所)
  • 宮井 一郎(大道会森之宮病院)
  • 吉田 邦広 (信州大学医学部神経難病学講座)
  • 若林 孝一(弘前大学大学院医学研究科)
  • 高橋 祐二(国立精神・神経医療研究センター)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院)
  • 大西 浩文(札幌医科大学公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
23,544,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診断基準・ガイドライン・重症度指標の作成、鑑別診断と重症度評価のバイオマーカー・最適リハビリテーション法の開発、小脳機能定量的評価法の開発、遺伝要因の探索研究を実施する。脊髄小脳変性症は、診断基準改訂、患者登録、自然歴調査、生体試料収集、遺伝子診断標準化を実施。多系統萎縮症は、診断基準改訂、自然歴収集、早期鑑別診断のバイオマーカー開発を実施。痙性対麻痺に関しては、JASPACの活動により臨床試料の収集を継続する。
研究方法
日本神経学会と協力し脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン作成小委員会を設立、診療ガイドラインを完成する。皮質性小脳変性症(CCA)、劣性遺伝性失調症、多系統萎縮症について診断基準を作成。重症度分類の評価基準案を再検討し、有用性について検証。運動失調症の患者登録・自然歴調査のためのコンソーシアムJ-CAT(Japan Consortium of ATaxias)の構築。多施設共同研究組織JASPACとJAMSACを継続。疫学・臨床研究により疾患の実体を明らかにする。臨床・病理の関連について検討。各疾患の早期鑑別診断に有用なMRI・機能画像指標の確立。患者由来血清と髄液を用い、分子バイオマーカーの開発に役立てる。小脳機能定量的評価法の開発。varenicline治療の有効性および安全性を検討する。
結果と考察
診療ガイドライン小委員会にて、ラインスコープの策定、CQの決定、文献検索を経て、推奨作成を開始した。適切なリハビリ法の検討を行い、1-2年毎の集中リハの反復が有効である可能性を示した。孤発性失調症において、家族歴の有無、除外診断、MRIと自律神経機能検査によるMSAの除外、遺伝性SCDの遺伝子検査などの分析結果を踏まえてCCAの診断基準案を策定した。自験例において診断基準案の妥当性を検証した。純粋小脳型のイメージが強いCCAに代えて“idiopathic cerebellar ataxia(ICA)”と呼ぶことが妥当ではないかと考えられた。 運動機能としてのmRS、呼吸機能、食事・栄養機能の3軸で評価する共通重症度分類を作成した。多系統萎縮症臨床スケールの統一された日本語版の設定とその妥当性・信頼性の評価を実施した。遺伝性痙性対麻痺患者におけるITB療法の治療評価尺度の作成を行った。運動失調症患者登録・自然歴調査J-CAT、多系統萎縮症の登録システムを構築、J-CATは遺伝子情報を含めた全国規模の患者登録研究であり、遺伝学的未診断例の診断確定や重要な病型の自然歴の解明という重要な役割を果たす。劣性遺伝性小脳変性症の遺伝子検査アルゴリズムを考案した。特定疾患研究事業調査に基づいて運動失調症の疫学を明らかにした。脊髄小脳失調症6型(SCA6)において、正常アレルのリピート数が臨床像に影響を与える可能性を示した。多系統萎縮症類似の画像所見を呈した緩徐進行性の運動失調症の家系例において、SCA34の病因遺伝子ELOVL4遺伝子に病原性変異を同定した。SCA34の臨床的スペクトラムを拡大するものと考えられる。多系統萎縮症におけるリン酸化αシヌクレイン(p-αS)の蓄積部位を解明した。軟膜下および脳室周囲アストロサイトにおけるp-αSの蓄積は、MSAにおける既知の封入体(グリア細胞および神経細胞)とは組織学的に異なっていた。[11C]BF-227 PETを用いてパーキンソン病のαシヌクレイン蛋白凝集体の可視化・画像化を可能にした。拡散尖度画像(DKI)と定量的磁化率マッピング(QSM)による自動解析が多系統萎縮症の基底核・脳幹の微細変化の検出および鑑別診断に有用であることを示した。脳内ネットワ-ク解析による多系統萎縮症の解剖学的神経回路障害を明らかにした。自己免疫性小脳失調症を疑うMRI所見を提示した。炎症性サイトカインが多系統萎縮症のバイオマーカーとなる可能性を示した。プリズム順応を用いた小脳の順応機能を評価する方法を開発した。3軸加速度計を用いた歩行障害評価の有用性を検証した。マチャド・ジョセフ病(MJD/SCA3)患者13例を対象としたバレニクリン酒石酸塩 (varenicline)治験を行い、サブ解析で改善傾向を示した。
結論
本年度は研究期間の2年目であり、前年度の成果を踏まえて、目標達成に向けた基盤構築及びその運用の期間であった。診断基準・重症度分類の策定、診療ガイドライン作成の進捗、患者登録システムの構築、疫学情報の充実、画像・分子マーカー候補の発見、運動失調症状の定量的評価法の確立を達成した。着実に研究が遂行されている。今後もさらに研究を推進していく予定である。生体試料と臨床情報を統合的に収集し、運動失調症における新たな知見の創出を目指す。

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,606,000円
(2)補助金確定額
30,606,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,300,651円
人件費・謝金 1,970,356円
旅費 2,833,516円
その他 5,453,402円
間接経費 7,062,000円
合計 30,619,925円

備考

備考
差額は自己資金にて充当

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
-