文献情報
文献番号
201510019A
報告書区分
総括
研究課題名
進行性大脳白質障害の疾患概念の確立と鑑別診断法の開発
課題番号
H26-難治等(難)-一般-023
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
山本 俊至(東京女子医科大学 統合医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 森本 昌史(京都府立医科大学大学院医学研究科小児発達医学)
- 折居 建治(岐阜大学医学部附属病院新生児集中治療部)
- 土井 宏(横浜市立大学医学部神経内科学)
- 田中 竜太(筑波大学医学医療系小児科)
- 山下 博史(京都大学医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
922,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究においては、希少難病である進行性大脳白質障害についての本邦における実態把握を行い、疾患概念の確立を行うことで、効率的な診断が行えるようにし、医療レベルの向上に資することを目的とした。
研究方法
本症患者においては、感染症による高熱や頭部外傷を契機に、突然運動機能障害やてんかんなどを生じ、階段状に症状が進行して数カ月のうちに寝たきりの状態となってしまうこともある。小児期に発症する場合もあれば、壮年期までまったく普通に日常生活を送ることができる場合もある。疾患背景としてミトコンドリア異常などの代謝異常によるものも含まれるが、臨床症状や画像パターンだけで鑑別が困難な疾患が複数含まれる。このように希少である上に多様性があり、根本的な原因に辿り着くことが困難な例も多く、実際さまざまな解析を行っても既知の診断に合致せず、原因不明のままである例も少なくない。
そこで本研究では、日本小児神経学会と日本神経学会に協力を依頼して本邦における実態を把握するための全国調査を行い、各疾患の疾患概念を確立させて診断基準を提言するとともに、診断の根拠となるMRI画像を収集した。既知の疾患概念に合致しない患者については新たな疾患概念を確立し、ゲノム解析拠点と協力して新たな原因遺伝子の探索も行った。個々の鑑別診断のためのアルゴリズムや診断基準はホームページでも広く公開するとともに学会においても提言する。
そこで本研究では、日本小児神経学会と日本神経学会に協力を依頼して本邦における実態を把握するための全国調査を行い、各疾患の疾患概念を確立させて診断基準を提言するとともに、診断の根拠となるMRI画像を収集した。既知の疾患概念に合致しない患者については新たな疾患概念を確立し、ゲノム解析拠点と協力して新たな原因遺伝子の探索も行った。個々の鑑別診断のためのアルゴリズムや診断基準はホームページでも広く公開するとともに学会においても提言する。
結果と考察
日本小児神経学会の共同研究支援を受け、全国の小児神経専門医の在籍する医療機関と重症心身障害児施設、全577施設を対象に一次調査を行った。その結果、324施設より回答があった(56%)。この結果を集計したところ、8例の「白質消失病」症例と7例の「皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症」例を確認した。これらの症例の二次調査により、より詳細な臨床情報を収集して論文としてまとめるとともに、疾患概要・診断基準としてまとめた。一方、全国一次調査では24例の未診断例が存在することが明らかになったが、これら未診断例のうち、9例について、ゲノム解析拠点と協力してゲノム解析を行うことができた。その結果、3例について、既知の疾患に合致する結果が得られ、2例は論文として報告した。残り1例は「卵巣機能障害を伴う新規白質ジストロフィー」であり、この症例の詳細な情報に基づいて診断基準を作成し報告した。
結論
本研究班の全国実態調査によって把握できた症例の二次調査を通じて詳細な情報を収集し、疾患概要・診断基準をまとめた。一次調査で未診断であることが明らかになった症例のゲノム解析により、新たな疾患概念を確立することができた。
公開日・更新日
公開日
2016-05-10
更新日
-