文献情報
文献番号
201510017A
報告書区分
総括
研究課題名
HSD10 病の発症形態と患者数の把握、診断基準の作成に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
深尾 敏幸(岐阜大学 大学院医学系研究科 小児病態学)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川 行洋(都立小児総合医療センター 内分泌代謝学)
- 山口 清次(島根大学 医学部 小児科学)
- 堀 友博(岐阜大学 医学部附属病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
789,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
β-ケトチオラーゼ欠損症と同様の尿有機酸所見を示すが臨床像が異なる疾患として、2001年に世界ではじめての症例が同定されて以降、日本においても本症の可能性について常に考えて、ケトン体代謝異常症の相談を行ってきたが、2012年にアジアではじめてのHSD10病の症例を同定することが出来た。本症は、単にイソロイシン代謝系でβ-ケトチオラーゼ欠損症の1つ上流のステップが障害されるのみでなく、この酵素が多機能蛋白であり、ミトコンドリア内のステロイド代謝、ミトコンドリアRNasePのコンポーネントとして働くことから、重症例では神経退行を示し予後の悪い疾患である。しかし世界でも報告例は20家系程度であり、まだ十分に臨床像が明らかになっていない疾患でもある。本研究の目的は、発症形態と患者数の把握、診断基準の作成である。
研究方法
1)診断法の確立
A) 遺伝子診断法の確立(深尾、笹井、堀):これは通常のゲノムレベルの解析である.
B) 2M3HBDH活性測定法の検討(深尾、笹井):基質、クロトナーゼという酵素が必要であるが、これらが試薬として供給されておらず、それを手に入れる必要がある。現在基質のtiglyl-CoAはストックが岐阜大学にあり、当面は使用可能である。
C) 尿有機酸分析におけるβ-ケトチオラーゼ欠損症とHSD10病の鑑別(山口、長谷川):尿有機酸分析にて鑑別のkeyとなる2-methylacetoacetateの検出をおこなった。尿中有機酸は、昨年度と同様に溶媒抽出-オキシム・トリメチルシリル誘導体化(oxim-TMS化)してGC/MS分析を行った。検体も昨年と同様にインド、ベトナム、日本のBKT欠損症それぞれ1例ずつと、HSD10欠損症の日本人症例3例を対象とした。インドおよびベトナムの症例では検体は尿ろ紙として送られた。日本人症例は凍結尿を用いた。
2)症例の経過報告(深尾、長谷川、秋葉、小林、赤川):日本の症例の主治医の先生方に研究協力者となっていただき、この1年間の経過についてまとめた。
3)診断基準の策定(全員)
深尾がまず昨年度の議論をふまえて草案を作成し、班会議にて検討を加えて策定した。
A) 遺伝子診断法の確立(深尾、笹井、堀):これは通常のゲノムレベルの解析である.
B) 2M3HBDH活性測定法の検討(深尾、笹井):基質、クロトナーゼという酵素が必要であるが、これらが試薬として供給されておらず、それを手に入れる必要がある。現在基質のtiglyl-CoAはストックが岐阜大学にあり、当面は使用可能である。
C) 尿有機酸分析におけるβ-ケトチオラーゼ欠損症とHSD10病の鑑別(山口、長谷川):尿有機酸分析にて鑑別のkeyとなる2-methylacetoacetateの検出をおこなった。尿中有機酸は、昨年度と同様に溶媒抽出-オキシム・トリメチルシリル誘導体化(oxim-TMS化)してGC/MS分析を行った。検体も昨年と同様にインド、ベトナム、日本のBKT欠損症それぞれ1例ずつと、HSD10欠損症の日本人症例3例を対象とした。インドおよびベトナムの症例では検体は尿ろ紙として送られた。日本人症例は凍結尿を用いた。
2)症例の経過報告(深尾、長谷川、秋葉、小林、赤川):日本の症例の主治医の先生方に研究協力者となっていただき、この1年間の経過についてまとめた。
3)診断基準の策定(全員)
深尾がまず昨年度の議論をふまえて草案を作成し、班会議にて検討を加えて策定した。
結果と考察
1)診断法の確立
A)遺伝子診断法の確立:既に昨年度遺伝子診断は確立した。本年はHSD17B10 cDNAの発現系による変異の評価を行う系の作成に取り組んだ。正常型のcDNAの大腸菌で発現するベクターの構築を行い、発現させ精製を行い、活性のある蛋白を精製することが出来た。変異体の発現は今後の課題である。
B) 2M3HBDH活性測定法の検討:
本酵素活性は、日本最初の症例において測定し、報告した(Fukao et al. 2014). この活性測定に必要なcrotonaseという酵素が市販されていることがわかり購入して活性の測定系が確立出来た。患者線維芽細胞において正常細胞に比べあきらかに2M3HBDHの活性の低下を示すことが出来た。
C) 17beta hydroxysteroid dehydrogenase(17HSD)活性測定法の検討:
本症における臨床像は上記2M3HBDH活性の有無によるのではなく, 本酵素の持つ他の活性17HSDの活性低下によるという報告があり、病態解明の上から本酵素活性が変異によってどのように変化するのか理解することが重要と考えられる。長谷川らはHSD10蛋白の正常および患者3名で見つかった遺伝子変異をいれたcDNAの発現ベクターを構築し、その発現細胞の検討をおこなった。
D) 有機酸分析による2-methylacetoacetateの検出
2MAAは2013年に採取・分析された検体では明らかにピークとして検出されたが、1980年代に採取したマイナス30度保管の尿ではピークを認めなかった。
2MAAのoxime-TMS誘導体の分子量はm/z 275と推定され、これをC-ionに、フラグメントイオンの中でも特徴的なm/z 260をQ-ionとし、Q/C比を81.4と設定した。このデータをガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC/MS)を用いた自動診断アルゴリズムに組み込んだ。 これを用いて再解析を行うと、HSD10欠損症では未検出だったが、BKT欠損症ではいずれも検出が可能であった。
2) 症例の経過報告 経過を詳細に検討した.
3) 診断基準 作成した.
A)遺伝子診断法の確立:既に昨年度遺伝子診断は確立した。本年はHSD17B10 cDNAの発現系による変異の評価を行う系の作成に取り組んだ。正常型のcDNAの大腸菌で発現するベクターの構築を行い、発現させ精製を行い、活性のある蛋白を精製することが出来た。変異体の発現は今後の課題である。
B) 2M3HBDH活性測定法の検討:
本酵素活性は、日本最初の症例において測定し、報告した(Fukao et al. 2014). この活性測定に必要なcrotonaseという酵素が市販されていることがわかり購入して活性の測定系が確立出来た。患者線維芽細胞において正常細胞に比べあきらかに2M3HBDHの活性の低下を示すことが出来た。
C) 17beta hydroxysteroid dehydrogenase(17HSD)活性測定法の検討:
本症における臨床像は上記2M3HBDH活性の有無によるのではなく, 本酵素の持つ他の活性17HSDの活性低下によるという報告があり、病態解明の上から本酵素活性が変異によってどのように変化するのか理解することが重要と考えられる。長谷川らはHSD10蛋白の正常および患者3名で見つかった遺伝子変異をいれたcDNAの発現ベクターを構築し、その発現細胞の検討をおこなった。
D) 有機酸分析による2-methylacetoacetateの検出
2MAAは2013年に採取・分析された検体では明らかにピークとして検出されたが、1980年代に採取したマイナス30度保管の尿ではピークを認めなかった。
2MAAのoxime-TMS誘導体の分子量はm/z 275と推定され、これをC-ionに、フラグメントイオンの中でも特徴的なm/z 260をQ-ionとし、Q/C比を81.4と設定した。このデータをガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC/MS)を用いた自動診断アルゴリズムに組み込んだ。 これを用いて再解析を行うと、HSD10欠損症では未検出だったが、BKT欠損症ではいずれも検出が可能であった。
2) 症例の経過報告 経過を詳細に検討した.
3) 診断基準 作成した.
結論
本年度は本研究班で同定されたHSD10病の3家系4症例の経過観察および最終年度として診断基準策定をおこなった。
公開日・更新日
公開日
2016-07-19
更新日
-