我が国におけるIdiopathic Slow Transit Constipation の疫学・診断・治療の実態調査

文献情報

文献番号
201510007A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国におけるIdiopathic Slow Transit Constipation の疫学・診断・治療の実態調査
課題番号
H26-難治等(難)-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中島 淳(横浜市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学)
研究分担者(所属機関)
  • 稲森 正彦(横浜市立大学医学部 医学教育学)
  • 飯田 洋(横浜市立大学医学部 医学教育学)
  • 正木 忠彦(杏林大学 消化器一般外科)
  • 大久保 秀則(横浜市立大学附属病院 内視鏡センター)
  • 冬木 晶子(横浜市立大学附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性機能性便秘症は、有病率約30%近くにも及ぶ大衆疾患であるが、患者・医療者ともに治療満足度は低い。その中でも特に結腸通過遅延型便秘症(Slow Transit Constipation : STC)は、内科治療に抵抗を示し、時に結腸全摘術を余儀なくされる難治性疾患とされている。しかし疾患概念が明確でなく、その実態や疫学は未解明な点が多い。罹患者は若年女性に多いとされており患者のQOLや社会生産性の著明な低下が大きな問題となる。本邦におけるSTCの疾患概念の整理や統一された診断基準の確立が切に求められている状況であるが、これまでに本邦における調査や検討は行われてこなかった。本研究班では、当該疾患のわが国における実態(患者数、診療の実態、疾病の自然史や予後)を全国調査により明らかにし、日本消化器病学会を中心とした学会との連携を図りながら専門家による診断基準・重症度分類案を策定し診療のガイドライン作成を目指すことを目的とした。
研究方法
平成26年度は、文献検索に加え、本邦の専門家の本疾患そのものに対する認知を把握するためアンケート調査を全国調査に先駆けて施行した。
また、そのアンケート結果をもとに研究班作成の定義暫定案を設定した。またSTCの臨床経験を持つ専門医を対象にアンケート調査を開始した。平成27年度は、そのアンケート調査をもとにSTCに特徴的な臨床症状の抽出を行い、それをもとに実臨床に即した定義案へ改訂し、パブリックコメントをもとに策定することを試みた。そして定義案をもとに全国疫学調査へつなげることを目指した。
結果と考察
専門医に対する2次調査を開始していたが、暫定案に対して様々な意見がよせられ、専門医の間でさえもコンセンサスが得られない深刻な状況であることが明らかとなった。この状態での調査続行では有益な情報が集積できないことが危惧されたため、2次調査は一度中断し、定義暫定案に対して研究班内で議論検討を行った。それにより打ち出された最有力案に対しては、研究班内でも意見の食い違いがあり、コンセンサスを得ることは不可能であった。定義案の策定、全国疫学調査は施行に至らなかった。STCの定義暫定案については、過去の複数の研究報告をもとに行っており、妥当性はけっして低くないと考えている。しかし、症例数が少ないこと、臨床経験を有する専門医が少ないことから、意見の統一が非常に難しいと考えられる。
結論
STCの定義について、コンセンサスが得られなかった。

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201510007B
報告書区分
総合
研究課題名
我が国におけるIdiopathic Slow Transit Constipation の疫学・診断・治療の実態調査
課題番号
H26-難治等(難)-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中島 淳(横浜市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学)
研究分担者(所属機関)
  • 稲森 正彦(横浜市立大学医学部 医学教育学)
  • 飯田 洋(横浜市立大学医学部 医学教育学)
  • 正木 忠彦(杏林大学 消化器一般外科)
  • 大久保 秀則(横浜市立大学附属病院 内視鏡センター)
  • 冬木 晶子(横浜市立大学附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性機能性便秘症は、有病率約30%近くにも及ぶ大衆疾患であるが、患者・医療者ともに治療満足度は低い。その中でも特に結腸通過遅延型便秘症(Slow Transit Constipation : STC)は、内科治療に抵抗を示し、時に結腸全摘術を余儀なくされる難治性疾患とされている。しかし疾患概念が明確でなく、その実態や疫学は未解明な点が多い。罹患者は若年女性に多いとされており患者のQOLや社会生産性の著明な低下が大きな問題となる。本邦におけるSTCの疾患概念の整理や統一された診断基準の確立が切に求められている状況であるが、これまでに本邦における調査や検討は行われてこなかった。本研究班では当該疾患のわが国における実態(患者数、診療の実態、疾病の自然史や予後)を全国調査により明らかにし、日本消化器病学会を中心とした学会との連携を図りながら専門家による診断基準・重症度分類案を策定し診療のガイドライン作成を目的とした。
研究方法
<平成26年度>
・疾患認識度調査
日本消化器病学会評議委員96名、大腸肛門機能障害研究会登録医師200名に対してアンケートを郵送し、認識度調査を行った。この結果を参考にし、本疾患の定義暫定案を作成した。
そしてその案をもとに、STC診療経験を有する専門医への2次調査を開始した。
定義暫定案を満たす症例を集積し、特徴的な臨床経過や臨床像を集積することを目的とした。
<平成27年度>
2次調査の結果をもとに実臨床に即した定義案へのブラッシュアップを行い、策定された定義案をもとに全国疫学調査を施行する。
結果と考察
<平成26年度結果>
平成26年度に施行した疾患認識度調査では、専門家の間でもSTCの認識率が非常に低く、疾患概念も一定でないことが明らかとなり、混乱が伺えた。その中でも唯一の共通見解をあえて決めるのであれば、「結腸通過時間の遅延」といえた。これは疾患名からも想像に難くない概念である。そこで過去の報告もあわせて検討し、STCの暫定定義案を以下のように設定した。「器質的疾患を伴わない機能性便秘症で、結腸通過時間が遅延しているもの。結腸通過時間の遅延は、X線不透過マーカー(ジッツマーク)を内服後、5日目のレントゲンで結腸内に20%以上のマーカーが散在して残存することで証明する。」
<平成27年度結果>
平成26年度に設定した暫定案をもとに、2次調査を開始したが、暫定案に対して様々な意見がよせられ、専門医の間でさえもコンセンサスが得られない深刻な状況であることが明らかとなった。この状態での調査続行では有益な情報が集積できないことが危惧されたため、2次調査は中断し、定義暫定案に対して研究班内で議論検討を行った。それにより改訂された定義案に対して、研究班内でも意見の食い違いがあり、コンセンサスを得ることは不可能であった。定義案に対してコンセンサスが得られず、調査の続行および全国疫学調査は実施に至らなかった。
<考察>
初年度に施行した認識度調査では、内科系・外科系専門家を総計するとSTCの疾患認知率は55%と非常に低い結果であり、専門家以外の医師も含めた場合には、さらに低い数値が予測された。STCの病態として、「結腸通過時間が遅延している状態」は大多数の共通認識であり、論文検索とも矛盾はなかった。逆にそれ以上の認識は専門家の間でも存在していなことが浮き彫りになった。
結腸通過時間の測定には、X線不透過マーカーによる定量化が有用と考えられ、海外でも本邦でも共通認識である。しかし、本邦では保険収載がなく、すべての医療機関で検査を施行することが困難な状態である。現状では、X線不透過マーカーによらない診断基準の検討が必要と考えられるが、STCに特異的な臨床的特徴の存在は報告されておらず、今回のアンケート調査でも特定の症状を抽出することはできなかった。STCの診断にマーカーを除外することはできず、暫定的な診断基準案はマーカー検査を含めたものとした。専門家の中での認識の相違が浮き彫りとなり、疾患概念をさらに混乱させている一因と考えられた。このため、今後は国内および海外の専門家から批判を仰ぎ、基準案のブラッシュアップ、疾患概念の統一をはかっていくことが必要である。設定された暫定案は過去の複数の報告にもとづく内容であり、ISTCの定義暫定案については、過去の複数の研究報告をもとに行っており、妥当性はけっして低くないと考えている。概念の統一が課題である。
結論
本研究では、STCの定義についてコンセンサスが得られず、全国的な疫学調査を実施するに至らなかった。しかし本疾患の解明には統一した疾患概念の策定が急務であることは明白である。今後国内外の複数の専門家から批評を受けながらも改訂を繰り返し、国際的に許容される定義、診断基準の作成を目指していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201510007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
結腸通過時間遅延型便秘症は難治性稀少疾患であり、専門医の間でも疾患そのものの認知率が非常に低く、概念も統一されていないことが明らかとなった。結腸通過時間の遅延の証明には、X線不透過マーカーを用いる手法が過去の報告からも妥当であると考えられた。プロトコールに関しては研究班内でも意見の統一をはかることができなかった。
臨床的観点からの成果
結腸通過時間の遅延の証明にはX線不透過マーカーが有用であることは過去の報告でも示されており、妥当性があると考えられた。特徴的な臨床症状や臨床経過の抽出も試みたが、定義について意見の統一がはかれず、調査を完了することができなかった。
ガイドライン等の開発
疾患の定義について意見の統一をはかることができず、診断基準やガイドラインの策定には至らなかった。
その他行政的観点からの成果
該当事項なし
その他のインパクト
該当事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510007Z