ボルナ病ウイルス感染の実態に関する疫学的ウイルス学的研究

文献情報

文献番号
199800491A
報告書区分
総括
研究課題名
ボルナ病ウイルス感染の実態に関する疫学的ウイルス学的研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
池田 和彦(東京都精神医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 田代眞人(国立感染症研究所)
  • 生田和良(大阪大学微生物病研究所)
  • 風祭 元(東京都立松沢病院)
  • 園田俊郎(鹿児島大学医学部)
  • 倉根一郎(国立感染症研究所)
  • 田所憲治(日本赤十字社中央血液センター)
  • 堀本泰介(大阪府立大学農学部)
  • 宇野正威(国立精神・神経センター武蔵病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ボルナ病ウイルスがヒトの精神疾患の病因のひとつになっている可能性が指摘されている。一方、ボルナ病ウイルス遺伝子が献血者の血球で検出されるという報告がなされている。これは輸血の安全性にかかわる問題でもあるので、わが国における献血者血液のボルナ病ウイルス遺伝子の有無を多施設・盲検で検索することを目標とする。
研究方法
本年度は東京地区および札幌地区各100検体、総計200検体の献血者血液について、ボルナ病ウイルスp24遺伝子およびp40遺伝子の有無を、6研究施設・盲検で検索した。血球RNAはコード化され、6研究施設おくられ、共通のプライマーをもちいて、各研究施設のプロトコールにしたがってnested RT-PCRで検索がなされた。
結果と考察
すべての検体でPDGF-A遺伝子(血球単核細胞が主要産生細胞)の増幅がみられ、被検検体はnested RT-PCR法に適用可能であることが判明した。陽性コントロール(試験管内で合成したp24INS RNAおよびp40INS RNA)の盲検検索の結果から、6施設においては、BDVp24およびp40遺伝子が高感度で検出できることが判明した。そこで献血者血球200検体におけるボルナ病ウイルスRNA検出に関する6施設・盲検調査を施行した。結果は、すべての施設で、ボルナ病ウイルス遺伝子p24およびp40ともに、検出されなかった。したがって、<東京・札幌地区の輸血血液検体ではボルナ病ウイルスp24遺伝子断片がnested RT-PCR法により約5%の頻度で検出できる>、という過去の報告を支持することはできなかった。また、末梢単核球を精製して検査をすべきだと意見があることから、札幌地区献血者血液18検体について、末梢単核球を精製し、3施設で盲検による調査を施行したが、ボルナ病ウイルス遺伝子p24およびp40はともに検出されない、と判定された。したがって、<北海道の献血者末梢単核球を対象とした場合、著しく高い頻度でボルナ病ウイルスp24が検出される>という過去の報告も支持できなかった。
本共同研究および内外の過去4年にわたるボルナ病ウイルス研究を総合して考察すると、ボルナ病ウイルスのnested RT-PCR検索では、予期せぬ汚染にみまわれる可能性がきわめてたかいといえる。
今後、わが国のヒト・ボルナ病ウイルス感染の実態究明にむけて、血清診断法の標準化をめざした共同研究を展開する。
結論
献血者血球200検体におけるボルナ病ウイルスRNA検出に関する6施設・盲検調査を施行したが、ボルナ病ウイルス遺伝子p24およびp40はともに、検出されなかった。また、札幌地区献血者血液18検体については末梢単核球を対象に3施設・盲検調査を施行したが、ボルナ病ウイルス遺伝子p24およびp40はともに検出されない、と判定された。
ボルナ病ウイルスのnested RT-PCR検索では、予期せぬ汚染にみまわれる可能性がきわめてたかく、偽陽性をえる危険性がたかいと判断された。
今後、ヒト・ボルナ病ウイルス感染の実態究明にむけて、血清診断法の標準化をめざした共同研究を展開する。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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