特発性脳内石灰化症の遺伝子診断に基づいた分類と診療ガイドラインの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201510001A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性脳内石灰化症の遺伝子診断に基づいた分類と診療ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
保住 功(岐阜薬科大学 医療薬剤学大講座薬物治療学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 犬塚 貴(岐阜大学・神経内科)
  • 塩入俊樹(岐阜大学・精神科)
  • 竹内 登美子(富山大学大学院医学薬学研究部(医学)・老年看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,041,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性基底核石灰化症 (IBGC)患者の遺伝子を検索し、遺伝子診断に基づいた分類、その臨床症状を明らかにする。それを基盤として、病態の解明、治療薬の開発を目指す。患者やその家族の語りに基づく質的分析を行い、IT機器を活用した心のケアと合わせて、診療の質を高める。総合的な診療ガイドラインの作成を目指す。
研究方法
・IBGC患者においてSLA20A2、PDGFRB、PDGFB、XPR-1の遺伝子変異について解析を行う。次世代シーケンサー(NGC)による新規遺伝子変異の検索を行う。
・頭痛に関する調査をこれまで登録されたIBGC患者に対し、主に各医療機関を介して行い、得られた結果を解析する。
・日本老年精神医学会専門医へIBGCに関するアンケートを送付し、症例を収集し、解析を行う。
・SLC20A2遺伝子変異を有する患者およびDNTC患者と家族を対象として、インタビューを行い、記録
された語りの質的内容分析を行う。
(倫理面への配慮)
遺伝子解析に関する研究は、岐阜薬科大学、岐阜大学ならびに東京大学の医学研究等倫理審査委員会の承認のもとに実施した。
疫学調査および研究計画は岐阜薬科大学および岐阜大学の倫理審査委員会の承認を受け、実施した。
語りに基づく質的研究は、富山大学と岐阜大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
結果
IBGC患者について検索を行い、現在までSLC20A2遺伝子について96症例中10症例、PDGFB遺伝子について144症例から5症例に新たな遺伝子変異が認められた(平成28年1月末現在)。頭痛に関する調査をIBGC患者(175症例)に対し主に各医療機関を介して行った。返信が得られた83例のうち、34%の症例(28例)で頭痛が認められた。女性が約2倍多く、頭痛の性状は全体としては、前兆なしの片頭痛に近い傾向が認められた。日本老年精神医学会専門医へIBGC症例に関するアンケートを送付し(884通)、平成28年1月末現在まで42症例が登録された。症例は女性が3倍多く、年齢は主に60歳から90歳であった。SLC20A2変異を有する患者(IBGC3と分類)6名を対象として、語りに基づいた質的内容分析を行い、6つのカテゴリーと17のサブカテゴリーが抽出された。さらに、DNTC(Diffuse neurofibrillary tangles with calcifica- tion = 小阪・柴山病)の患者3名とその配偶者3名に、半構成的インタビューを実施し、特に1) 専門医受診までに複数の病院を巡るという困難な体験、 2) 治療法がなく進行する不安が明確となった。
考察
IBGC患者の遺伝子SLC20A2、PDGFBに変異を見出したことで、遺伝子診断に基づいた分類、遺伝子、ターゲット分子に基づいた病態の解明が進展する。頭痛のアンケート調査では34%の症例に頭痛が認められた。女性が約2倍多く、頭痛の性状は、前兆なしの片頭痛に近い傾向が認められた。DNTC症例の検索は進行中であり、登録症例が増えつつある。タウを可視化したPET所見も踏まえ、臨床的にDNTCとして、より診断が確実な症例を用いて臨床症状、病態の解明、原因・関連遺伝子の検索を行っていく。IBGC3患者には家族性疾患ゆえの苦悩や思考過程があることが明らかとなった。ゆえに、十分な遺伝カウンセリング体制と心理的支援が必要であることが改めて認識された。
結論
IBGC患者の遺伝子を検索し、遺伝子診断に基づいた分類、その臨床症状を明らかにしていく。それらを基盤に、病態の解明、治療薬の開発を目指す。患者やその家族の語りに基づく質的分析を行い、IT機器を活用した心のケアと合わせて、診療の質を高めていく。今後も引き続き、包括的な診療ガイドラインの完成を目指していく。 

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201510001B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性脳内石灰化症の遺伝子診断に基づいた分類と診療ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
保住 功(岐阜薬科大学 医療薬剤学大講座薬物治療学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 犬塚 貴(岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科・老年学分野)
  • 塩入俊樹(岐阜大学大学院医学系研究科 精神病理学分野)
  • 竹内 登美子(富山大学大学院医学薬学研究部老年看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
IBGC患者の遺伝子を検索し、遺伝子診断に基づいた分類、その臨床症状を明らかにする。それを基盤として、病態の解明、治療薬の開発を目指す。患者やその家族の語りに基づく質的分析を行い、IT機器を活用した心のケアと合わせて、診療の質を高める。総合的な診療ガイドラインの作成を目指す。 
研究方法
1) 遺伝子検査
患者においてSLA20A2、PDGFRB、PDGFB、XPR-1の遺伝子変異について解析を行う。次世代シーケンサー(NGC)による新規遺伝子の検索を行う。
2) 頭痛に関する調査研究
頭痛に関する調査をこれまで登録されたIBGC患者に対し、主に各医療機関を介して行い、得られた結果を解析する。
3) DNTCに関する調査研究
日本老年精神医学会専門医へIBGCに関するアンケートを送付し、症例を収集し、解析を行う。
4) 語り分析に基づく質的研究
SLC20A2遺伝子変異を有する患者およびDNTC患者と家族を対象として、インタビューを行い、記録された語りの質的内容分析を行う。
(倫理面への配慮)
遺伝子解析に関する研究は、岐阜薬科大学、岐阜大学ならびに東京大学の医学研究等倫理審査委員会の承認のもとに実施した。
疫学調査および研究計画は岐阜薬科大学および岐阜大学の倫理審査委員会の承認を受け、実施した。
語りに基づく質的研究は、富山大学と岐阜大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
結果
1) 遺伝子検査
遺伝子検索を行い、現在までIBGC患者のDNAの検索から検索済み96症例からSLC20A2遺伝子 10症例、検索済み144症例からPDGFB遺伝子 5症例に新たな遺伝子変異を見い出した(平成28年1月末現在)。
2) 頭痛に関する調査研究
頭痛に関する疫学調査をIBGC患者(175症例)に対し主に各医療機関を介して行った。返信が得られた83例のうち、34%の症例(28例)で頭痛が認められた。女性が約2倍多く、頭痛の性状は全体としては、前兆なしの片頭痛に近い傾向が認められた。
3) DNTCに関する調査研究
日本老年精神医学会専門医へIBGC症例に関するアンケートを送付し(884通)、平成28年1月末現在まで42症例が登録された。その中に含まれるDNTCに関する臨床的な検討を行っている。症例は女性が3倍多く、年齢は主に60歳から90歳であった。
4) 語り分析に基づく質的研究
SLC20A2変異を有する患者(IBGC3と分類)6名を対象として、語りに基づいた質的内容分析を行 い、6つのカテゴリーと17のサブカテゴリーが抽出された。さらに、DNTCの患者3名とその配偶者3名に、半構成的インタビューを実施し、特に1) 専門医受診までに複数の病院を巡るという困難な体験、 2) 治療法がなく進行する不安が明確となった。
考察
IBGC患者の遺伝子SLC20A2、PDGFBに変異を見出したことで、遺伝子診断に基づいた分類、遺伝子、ターゲット分子に基づいた病態の解明が進展する。頭痛のアンケート調査では34%の症例に頭痛が認められた。女性が約2倍多く、頭痛の性状は、前兆なしの片頭痛に近い傾向が認められた。DNTC症例の検索は進行中であり、登録症例が増えつつある。タウを可視化したPET所見も踏まえ、臨床的にDNTCとして、より診断が確実な症例を用いて臨床症状、病態の解明、原因・関連遺伝子の検索を行っていく。IBGC3患者には家族性疾患ゆえの苦悩や思考過程があることが明らかとなった。ゆえに、十分な遺伝カウンセリング体制と心理的支援が必要であることが改めて認識された。
結論
IBGC患者の遺伝子を検索し、遺伝子診断に基づいた分類、その臨床症状を明らかにしていく。それらを基盤に、病態の解明、治療薬の開発を目指す。患者やその家族の語りに基づく質的分析を行い、IT機器を活用した心のケアと合わせて、診療の質を高めていく。今後も引き続き、「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」を参考にしながら、包括的な診療ガイドラインの完成を目指していく。 

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201510001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特発性基底核石灰化症 (IBGC) 患者の300名を越す臨床情報、可能なDNAの収集を行った。登録患者の中から、10症例にSLC20A2(Neurologyに掲載)、5症例に血小板由来成長因子(PDGF)Bの遺伝子変異を新たに見出した。SLC20A2に変異を認めた患者の語りの質的内容分析を行い、報告した(SpringerPlusに掲載)。頭痛に関する調査を行い、その実態を報告した。危険因子を調べるアンケート調査を行った。診断基準が平成29年6月1日、日本神経学会より承認された。
臨床的観点からの成果
IBGCは全く原因不明の、治療法のない疾患とされてきたが、遺伝子検索にて、本邦にてSLC20A2遺伝子変異が10例、PDGFB遺伝子変異が5例に、新たな変異を見い出した。さらに、次世代シーケンサーで解析し、アイカルディー・ゴーティエ症候群等の遺伝子変異を見い出した。新規原因遺伝子の検索も施行されている。報告された症例の中から、副甲状腺機能低下症2症例を見つけており、治療を行った。別途、現在、これらの遺伝子変異を認めた患者のiPS細胞の作製、分化が順次進んでいる。
ガイドライン等の開発
いわゆる‘ファール病’に関する臨床的な名称もまちまちで、その原因として病態、臨床症状の多様性があった。原因遺伝子としてSLA20A2、PDGFRB、 PDGFB遺伝子変異が見つかった意義は大きい。全国から特発性脳内石灰化症として、症例の収集、相談を行った。平成26年2月26日、岐阜薬科大学薬物治療学研究室のホームページにファール病の診療ガイドラインを公開した。平成26年9月に公表された第1次実施分110疾患の指定難病に認定された。
その他行政的観点からの成果
上記のごとく、平成26年9月第1次の指定難病に認定された。臨床個人調査票(新規・更新)と疾患概要の作成と、毎年更新している。脳内石灰化症の専門外来を岐阜大学神経内科のホームページに掲載し、全国から主治医、患者、家族からのメール相談、外来診療を行っている。全国調査を含め、特発性脳内石灰化症として、症例の収集、相談、遺伝子検査を行った。遺伝子検査に限らず、iPS細胞の作製、心のケア、語りに基づく質的分析を行っていることは、患者や家族に安堵感、期待感、そして将来の治療に対する希望を与えている。
その他のインパクト
毎年2月にIBGC班会議を岐阜で開催した。同時期に岐阜脳神経研究会を開催し、主に神経難病疾患の研究に対する啓蒙、学習会を行ってきた。平成26に年は地方紙で紹介された。脳内石灰化症に関する専門外来の設置は岐阜大学神経内科のホームページ内に掲載され、全国から多くの問い合わせや直接の受診があった。IBGC研究班の研究内容、診療ガイドラインは岐阜薬科大学薬物治療学研究室のホームページに掲載した。 研究成果はまた、個別に心のケアのメール通信を行っている患者さん、ご家族にも発信した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ネット上で公開

特許

特許の名称
リン酸ホメオスターシス異常モデルにおけるPDGF-BBおよび関連化合物のスクリーニング方法
詳細情報
分類:
特許番号: 2016-054520
発明者名: 保住 功、位田雅俊、栗田尚佳
権利者名: 岐阜市
出願年月日: 20160317
国内外の別: C12Q 1/02

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
M. Yamada, M. Tanaka, I. Hozumi et al
Genetic and clinical spectrum of SLC20A2 mutations that cause idiopathic basal ganglia calcification in Japan.
Neurology , 82 , 705-712  (2014)
doi: 10.1212/WNL.0000000000000143. Epub 2014 Jan 24. PubMed PMID: 24463626.
原著論文2
M. Inden, M. Iriyama, I. Hozumi et al
The type III transporters (PiT-1 and PiT-2) are the major sodium-dependent phosphate transporters in the mice and human brains.
Brain Research , 1637 , 128-136  (2016)
doi: 10.1016/j.brainres.2016.02.032. Epub 2016 Feb 26. PubMed PMID: 26923164.
原著論文3
T. Takeuchi, I. Hozumi et al
Living with idiopathic basal ganglia calcification 3: a qualitative study describing the lives and illness of people diagnosed with a rare neurological disease.
Springerplus , 5 (1) , 1713-  (2016)
eCollection 2016. PubMed PMID: 27777849; PubMed Central PMCID: PMC5050183.
原著論文4
I. Hozumi, H. Kurita, K. Ozawa et al
Inorganic phosphorus (Pi) in CSF is a biomarker for SLC20A2-associated idiopathic basal ganglia calcification (IBGC1).
J Neurol Sci , 388 , 150-154  (2018)
doi: 10.1016/j.jns.2018.03.014. Epub 2018 Mar 8. PubMed PMID: 29627011.
原著論文5
S. Sekine, I. Hozumi et al
Functional Evaluation of PDGFB-variants in Idiopathic Basal Ganglia Calcification, Using Patient-Derived iPS Cells
Sci Rep , 9 (1) , 5698-  (2019)
DOI: 10.1038/s41598-019-42115-y
原著論文6
K. Nishii, I. Hozumi et al
Partial Reduced Pi Transport Function of PiT-2 Might Not Be Sufficient to Induce Brain Calcification of Idiopathic Basal Ganglia Calcification
Sci Rep , 9 (1) , 17288-  (2019)
doi: 10.1038/s41598-019-53401-0

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
2020-06-16

収支報告書

文献番号
201510001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,245,000円
(2)補助金確定額
1,245,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 798,413円
人件費・謝金 0円
旅費 113,640円
その他 128,947円
間接経費 204,000円
合計 1,245,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-