文献情報
文献番号
201508031A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性腎症 重症化予防プログラム開発のための研究
課題番号
H27-循環器等-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 智教(慶應義塾大学医学部)
- 三浦 克之(滋賀医科大学医学部)
- 福田 敬(国立保健医療科学院)
- 森山 美知子(広島大学)
- 村本あき子(公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター )
- 佐野 喜子(神奈川県立保健福祉大学)
- 樺山 舞(大阪大学大学院医学系研究科)
- 植木 浩二郎(東京大学医学部附属病院)
- 安田 宜成(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,325,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康寿命延伸および医療費適正化の観点から糖尿病性腎症重症化予防は重要な課題である。日本健康会議「健康なまち・まちづくり宣言2020」の『生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体を800市町村、広域連合を24団体以上とする』の目標を達成すべく、本研究では地域・保険者の実情に応じて選択可能な糖尿病性腎症重症化予防プログラムを開発することを目的とした。
研究方法
(1)糖尿病性腎症に関する文献検索:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン、CKD診療ガイドライン2013等の根拠論文のほか、新たに文献検索した介入研究について、対象者特性、対象者数、研究デザイン、介入方法、観察期間、評価指標、対照群の有無、結果を精査した。
(2)既存の糖尿病性腎症重症化予防プログラムの調査:国保ヘルスアップ事業やデータヘルス計画等において重症化予防事業と位置付けて取り組んでいる既存の保健事業について、対象者選定基準・実施人数・評価指標・介入方法・結果をまとめた。
(3)対象者数、割合の試算:市町村国保の健康診査データを用いて、糖尿病性腎症予防プログラム対象者数の試算を行った。
(4)糖尿病性腎症重症化予防プログラム開発:全国での実現可能性・既存の保健事業の活用可能性、予防効果を考慮し、健診・レセプトから対象者を抽出し、受診勧奨、保健指導を行うプログラムの暫定版を作成した。
(2)既存の糖尿病性腎症重症化予防プログラムの調査:国保ヘルスアップ事業やデータヘルス計画等において重症化予防事業と位置付けて取り組んでいる既存の保健事業について、対象者選定基準・実施人数・評価指標・介入方法・結果をまとめた。
(3)対象者数、割合の試算:市町村国保の健康診査データを用いて、糖尿病性腎症予防プログラム対象者数の試算を行った。
(4)糖尿病性腎症重症化予防プログラム開発:全国での実現可能性・既存の保健事業の活用可能性、予防効果を考慮し、健診・レセプトから対象者を抽出し、受診勧奨、保健指導を行うプログラムの暫定版を作成した。
結果と考察
(1)計64文献を抽出、とくに関連が深い10文献を精査した。医療機関における介入研究が多いが、低蛋白食・禁煙(カウンセリング、禁煙補助剤)・減塩・行動変容・かかりつけ医/腎専門医の連携の有効性が報告されていた。低蛋白食は有効性に疑問を呈するものもあり、高齢者においては注意が必要である。介入中に心筋梗塞や心不全等での死亡例が報告されていることから、対象者選定、安全管理が求められる。減塩によりアルブミン尿の改善効果を認め、腎症進展予防に有効である可能性が示唆された。腎機能評価としては蛋白尿、CCr、eGFRを腎機能の評価指標としており、透析導入をアウトカムとする文献は認められなかった。
(2)国保ヘルスアップ事業報告書、後期高齢者医療制度事業報告、市町村国保データヘルス計画、糖尿病医科歯科連携事業調査等より計37件、保健指導機関の実施報告書より203件の情報提供があった。「糖尿病性腎症重症化予防」として実施される保健事業は多く存在するが、対象者の選定基準が明確でないため国保全体の対象者数が読み取れず、実施率の算定ができなかった。保健指導終了時の検査値変化(HbA1c、eGFR等)等の短期的評価はあるが、腎機能、腎症の病期等の評価はほとんどなかった。保健指導終了率や1年後の検査値の把握も少ない。自治体の課題としては、保健指導人材不足、財源不足、関係団体との連携困難などが挙げられていた。
(3)健診受診者7,956人のうち糖尿病は全体の8.9%(707人)、うち尿蛋白+以上は8.6%(61人)、そのうち39.3%(24人)が未治療であった。尿蛋白±以下の第1~2期のうち49.7%(311人)が未治療であった。糖尿病性腎症第3期かつ未治療者には、糖尿病・腎症対策の必要性を本人に通知し、適切な医療につながるよう受診勧奨事業を行う必要がある。第1~2期かつ未治療者には、医療機関での尿アルブミン測定による病期判定や保健指導介入を行う必要がある。治療中の者については、医療と連携した保健指導の可能性を検討する必要がある。
(4) これらの研究成果を基に、全国で実施可能な糖尿病性腎症重症化予防プログラムについて検討をおこない、暫定案を作成した。
(2)国保ヘルスアップ事業報告書、後期高齢者医療制度事業報告、市町村国保データヘルス計画、糖尿病医科歯科連携事業調査等より計37件、保健指導機関の実施報告書より203件の情報提供があった。「糖尿病性腎症重症化予防」として実施される保健事業は多く存在するが、対象者の選定基準が明確でないため国保全体の対象者数が読み取れず、実施率の算定ができなかった。保健指導終了時の検査値変化(HbA1c、eGFR等)等の短期的評価はあるが、腎機能、腎症の病期等の評価はほとんどなかった。保健指導終了率や1年後の検査値の把握も少ない。自治体の課題としては、保健指導人材不足、財源不足、関係団体との連携困難などが挙げられていた。
(3)健診受診者7,956人のうち糖尿病は全体の8.9%(707人)、うち尿蛋白+以上は8.6%(61人)、そのうち39.3%(24人)が未治療であった。尿蛋白±以下の第1~2期のうち49.7%(311人)が未治療であった。糖尿病性腎症第3期かつ未治療者には、糖尿病・腎症対策の必要性を本人に通知し、適切な医療につながるよう受診勧奨事業を行う必要がある。第1~2期かつ未治療者には、医療機関での尿アルブミン測定による病期判定や保健指導介入を行う必要がある。治療中の者については、医療と連携した保健指導の可能性を検討する必要がある。
(4) これらの研究成果を基に、全国で実施可能な糖尿病性腎症重症化予防プログラムについて検討をおこない、暫定案を作成した。
結論
これまでの重症化予防保健事業では、対象者の選定基準があいまい、病期別の対策が不十分、評価指標が不統一、全国での実現可能性が低いなどの課題があった。これらの調査結果を踏まえ、全国での実現性を考慮したプログラムの暫定版を作成した。プログラムは学会ガイドラインに基づき、病期や治療歴の有無別のプログラムとして優先順位を示しつつも、各自治体の課題と実施体制等に合わせて選択可能にし、長期フォローを行うものである。次年度以降は自治体等における実際のプログラムを支援、効果検証しつつ、より安全で効果的なプログラムへと改善していく予定である。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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