心臓突然死の生命予後・機能予後を改善させるための一般市民によるAED の有効活用に関する研究

文献情報

文献番号
201508029A
報告書区分
総括
研究課題名
心臓突然死の生命予後・機能予後を改善させるための一般市民によるAED の有効活用に関する研究
課題番号
H27-心筋-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川 征四郎(医誠会病院)
  • 畑中 哲生(救急振興財団救急救命九州研修所)
  • 石見 拓(京都大学 環境安全保健機構健康管理部門)
  • 横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科外科系救急医学分野)
  • 田邉 晴山(救急振興財団救急救命東京研修所)
  • 森村 尚登(横浜市立大学 大学院医学研究科救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年7月の市民によるAED使用の認可に伴い、市中で利用可能なAED(PAD)設置が広がりをみせ、平成26年12月までのAED販売台数は累計63万台余、そのうちPADが51万台余と8割以上を占めている。しかしAEDの有効活用に関しての検証は十分に行われていない。平成26年に発表された救急蘇生統計によれば、心原性でかつ一般市民により心肺機能停止の時点が目撃された25,469例中、一般市民によりAEDを用いた除細動が行われたのは全体の3.6%、電気ショックが適応となるVF/無脈性VTに対して18.1%であり、AEDの使用に至らなかった事例も多く存在した。一般市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子を明らかにし、AEDの適正配置や救命講習の内容を改善することによりAEDの有効活用が推進されると考えられることから、本研究班では院外心停止に対するAEDの使用状況ならびに非使用事例における理由についての前向き調査、さらに既存の院外心停止症例集積データベースからのAEDの使用実態に関する検討、加えて基礎データとしてのAEDの普及状況に係わる研究を行った。
研究方法
院外心停止に対するAEDの使用状況ならびに非使用事例における理由についての前向き調査では、最初の段階として、専門家によるコンセンサス会議を行い本研究の対象となる院外心停止事例の絞り込みと、非使用事例における理由の類型化を経て調査項目および調査用紙を検討した。既存の院外心停止データベースからのAEDの使用実態に関する検討では、人口ベースの院外心停止登録である大阪ウツタインプロジェクトのデータベース(2011~2012年)を用い、大阪府下で発生した院外心停止における公共の場に設置されたAEDのパッド装着状況を調査した。AEDの普及状況に係わる研究では、AEDの製造販売業者の協力のもとで①平成27年のAED販売(出荷)台数、②PAD・医療機関・消防機関別の販売台数、③都道府県別の販売台数、④廃棄台数(自社で更新した台数)に関するデータを取りまとめた。
結果と考察
院外心停止に対するAEDの使用状況ならびに非使用事例における理由についての前向き調査において、対象は市民により目撃された院外心停止すべてとし、発生場所として「自宅」は含めず「公衆出入場所」「仕事場」「道路」のうち老人保健施設等を除外するものとした。調査項目について、消防機関による救急蘇生統計(ウツタイン様式)で収集された転帰情報などのデータの連結は行わないこととした。救助者の人数や通報時の口頭指導の状況等、救急隊が通常の業務として収集する情報で本研究に関連するものは調査項目に含めた。AEDの使用状況については使用の過程をふまえ、救急隊(消防隊)到着時のAEDの有無、パッド装着、電気ショック実施の各過程に分け、フローチャートを用いた調査用紙内に記載することとした。AED非使用の理由については類型化を行い該当状況を記載することとしたが、理由を把握するためには救助者からの聴取が必須であるため、迅速な救急隊活動や救助者の心理的負担を考慮して、実施可能な消防機関のみにおいて行う方針とすることが適切と考えられた。既存の院外心停止症例集積データベースからのAEDの使用実態に関する検討において、パッド装着割合は心停止の発生場所によって大きく異なり、院外心停止の大多数が発生する自宅では1.3%、公共の場所全体では14.6%で、学校(50.0%)、駅(46.2%)、空港(66.7%)、スポーツ施設(69.4%)で高く、道路上で低かった(5.5%)。パッド装着と各測定項目との関連についての分析では、パッド装着の割合は、公共の場所、心原性、目撃あり、バイスタンダーによる蘇生ありの場合で有意に高かった。バイスタンダーによりAEDパッドが装着されたうち除細動に至った割合は全体では29.6%であり、自宅では3.8%と低く公共の場所では40.5%と高かった。1か月後の社会復帰はパッド装着ありで19.4%、装着なしで3.0%と有意な差があり、自宅ではパッドの装着有無で差はなかったが、公共の場所では有意な差がみられた。AEDの普及状況に係わる研究では、わが国においてのこれまでのAEDの販売台数は73万台余で、うちPADが82%(60.2万台)を占めた。廃棄台数の調査では約8万台が廃棄されたとの数値を得たが、製造販売業者で把握されるのは同一社で機器更新がされた場合に限られるため、販売台数と廃棄台数の差として算出される設置台数は参考数値にとどまる。
結論
院外心停止に対するAEDの使用状況ならびに非使用事例における理由についての前向き調査では、本年度に検討された調査対象と項目、調査用紙を用いて次年度に調査を行う。AEDの普及は進んでいるが、より正確な設置台数の把握ができる体制構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201508029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,999,000円
(2)補助金確定額
4,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 898,004円
人件費・謝金 1,263,642円
旅費 434,980円
その他 1,249,374円
間接経費 1,153,000円
合計 4,999,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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