地域におけるアルコール対策に関する観察・介入研究

文献情報

文献番号
201508026A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるアルコール対策に関する観察・介入研究
課題番号
H26-循環器等(政策)-若手-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 光政(獨協医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康日本21(第二次)においては、がんや循環器疾患を予防するため、リスクを高める飲酒を減らすことが目標とされている。特定健診・特定保健指導においては、アルコールのリスクに着目した保健指導を行うためのツールとして、AUDIT(アルコール使用障害同定テスト:Alcohol Use Disorders Identification Test)とBI(減酒支援簡易介入:Brief Intervention)が紹介されている。
本研究は、これらのツールを用いて、現在の日本における飲酒の状況やアルコールによる問題を把握し、そして問題に対する対策を地域ごとの事情を勘案しつつ立案・実施し、その効果を検証することを目的とする。また、これらのツールを用いる上で生じる問題点等を整理し、これらを解消するための方策を考察・実施する。
本年度は健康診査の受診者を対象にAUDITを実施し、日本人におけるAUDITの成績と生活習慣病の既往歴や健康診査の結果との横断的な評価を行った。また、BIを特定保健指導対象者かつ問題飲酒のある者に実施し、その内容を評価した。
研究方法
横断研究(AUDITの実践と評価)の対象は、茨城県筑西市の平成26・27年度健康診査の受診者及び茨城県神栖市の平成27年度健康診査の受診者である。そのうち、本研究への参加に同意した40~74歳の男女計9,675人を分析対象とした。AUDITは健康診査の問診の一部として実施した。筑西市においては聞き取り式で、神栖市においては自記式でAUDITを実施した。分析対象者全体及び階層化対象者(腹囲が基準値以上もしくはBody Mass Index(BMI)が25kg/m^2以上の者)について、属性の集計およびAUDITの成績(0~7点、8~14点、15点以上)と生活習慣病の既往歴・健康診査の成績の関連を評価した。既往歴については、心疾患、脳卒中、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肝疾患、腎疾患のそれぞれについて、健康診査の成績については、BMI 25kg/m^2以上、高血圧、糖尿病、高LDL-コレステロール血症、低HDL-コレステロール血症、高トリグリセライド血症、肝機能異常を評価した。健康診査で聞き取った飲酒状況とAUDITの成績の比較も行った。
介入研究(BIの実践と評価)については、茨城県神栖市の平成27年度特定保健指導対象者のうち、特定健康診査時に実施したAUDITにて問題飲酒ありと判定され、本研究への参加に同意した者を対象とした。BIの実施を選択した者を介入群とし、「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】」に従いBIを実施し、減酒目標を設定した。BIの実施から4週間後を目安に電話等で減酒目標の達成状況や飲酒日記の記載状況、減酒への取り組みをフォローアップした。また、研究参加に同意したが、BIを受けないことを選択した者を対照群に設定した。
結果と考察
AUDITの成績は、高血圧、脂質異常症、肝疾患の既往歴を有する割合と有意な関連を認めた。また、AUDITの成績は、健康診査の結果が高血圧、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症、肝機能異常に該当した者の割合と有意な関連を認めた。これらの結果は男性で女性よりも明らかであった。また、健康診査で聞き取った飲酒状況とAUDITの平均点および問題飲酒と判定された者の割合は正の関連を示した。これらの結果より、従来飲酒との関連が指摘されている生活習慣病について、AUDITの成績とも関連することが明らかとなった。また、健康診査受診者ではAUDITが飲酒状況と正の相関を示すことが明らかとなった。
BIを受講した介入群は24人、対照群は11人であった。介入群24人のうち、17人が飲酒の1回量の減量につながる目標を設定し、5人が休肝日取得を目標として設定した。残りの2人は1回量を減量し更に休肝日を取得することを目標とした。介入群の4週間目のフォローアップには24人中23人が回答し、うち19人が減酒目標を達成していた。4人のうち3人は飲酒の1回量を減らす目標であったが、酒量の変化がないもしくは一度減ったが元に戻っていた。1人は休肝日を週2日設定するとしていたが、週1日しかとれていなかった。減酒目標としては、1回量の減量も休肝日の設定のどちらも達成可能と考えられた。
結論
健康診査受診者を対象にAUDITによる調査を実施した。また特定保健指導対象者で問題飲酒の指摘があった者にBIを実施した。AUDITにより、問題のある飲酒を行っている者の割合が明らかとなったとともに、AUDITの高得点者では従来言われてきた飲酒と関わる生活習慣病の割合が高いことが明らかとなった。BIについてはその実施に役立つノウハウを蓄積することができた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201508026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 98,612円
人件費・謝金 211,750円
旅費 555,475円
その他 2,134,163円
間接経費 900,000円
合計 3,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-08-24
更新日
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