文献情報
文献番号
201508025A
報告書区分
総括
研究課題名
自治体における生活習慣病重症化予防のための受療行動促進モデルによる保健指導プログラムの効果検証に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-循環器等(生習)-戦略-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
国立大学法人大阪大学(国立大学法人大阪大学)
研究分担者(所属機関)
- 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学)
- 下村 伊一郎(大阪大学大学院 医学系研究科 内分泌・代謝内科学)
- 野口 緑(田中 緑)(大阪大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 吉田 俊子(宮城大学大学院 成人看護学領域)
- 斉藤 功(愛媛大学大学院 医学系研究科 地域健康システム看護学)
- 新谷 歩(大阪市立大学大学院 医学研究科 消化器内科学)
- 今野 弘規(大阪大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学)
- 小橋 元(獨協医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
102,948,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者:新谷 歩
大阪大学大学院 医学系研究科 臨床統計疫学(平成27年4月1日~平成28年10月31日)→
大阪市立大学大学院 医学研究科 消化器内科学(平成28年11月1日~平成29年1月31日)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、自治体をクラスターとしたランダム化比較試験によって、脳卒中・虚血性心疾患・心不全・ 腎不全を発症するリスクの高い未受療者に対して、受療行動促進モデルを用いた保健指導の有効性を検証し、健康・医療政策の立案に資する科学的なエビデンスを創出することを目的とした。
研究方法
2015(平成27)年度から2016(平成28)年度にかけて、デモデータを用いて、主要・副次的評価項目および副次解析評価項目の解析プログラムを開発した。データ収集について、2016(平成28)年度は、4 月から6月まで、2016年3月までのレセプトデータをさらに収集した。そして、初年度の特定健診データと国保レセプトデータ、国保資格取得喪失データ、保健指導データを突合し、解析対象データ15,710件(介入群8,977件、対照群6,733件)を得た。主要解析として、自治体をクラスターとしたランダム化比較試験を行い、脳卒中・虚血性心疾患・心不全・腎不全を発症するリスクの高い未受療者に対する医療機関への受療行動を促進する強力な保健指導の実施とその後の医療機関への受療との関連を検証した。また、副次解析として、保健指導実施者の基礎データ(性、年齢、職種、職務についた通算年数、生活習慣病関連の職務についた通算年数、本研修履歴)、介入1年目における初回保健指導の実施時期、 初回保健指導時の保健指導実施者1人あたりの対象者受け持ち人数、保健指導の形態および回数、保健指導に関する自己評価アンケー卜結果、および介入実施サポートと医療機関への受療との関連を分析した。
結果と考察
上記の解析プログラムを用いて解析した結果、重症化ハイリスク者に対する受療行動促進モデルを用いた保健指導を行った介入自治体は、対照自治体と比較して、重症化ハイリスク者全体における医療機関累積受療率は、3か月で8.6%、6か月で12.4%、12か月で13.6%、18か月で11.8%と、いずれも有意に高く、全期間を通じた医療機関への受療率の多変量調整ハザード比は1.41(95%CI,1.20-1.67)と有意に高いことが示された。以上の結果は、メタボリックシンドロームの有無に関わらず同様に認められ、高血圧群、糖尿病群、脂質異常群、腎臓病群それぞれについても同様に認められた。さらに、重症化ハイリスク群全体、高血圧群、糖尿病群、脂質異常群における次年度の薬剤治療開始者の割合が、いずれも介入群は対照群より有意に高かった。また、男性全体における次年度の脂質異常者の割合、高血圧群における次年度のⅠ度以上高血圧者の割合、脂質異常群における次年度の脂質異常者の割合が、介入群の方が対照群より有意に低かった。さらに、高血圧群における血圧、糖尿病群におけるHbA1c、脂質異常群における血清LDLコレステロールの平均値の低下も介入群の方が対照群より有意に大きかった。特定健診受診者全体における特定保健指導完了率については、介入自治体は介入後、対照自治体より有意に高くなり、その差は平成26年度2.5%、平成27年度3.2%と、年度が進むにつれて拡がっていた。
また、介入群における保健指導に関する項目と医療機関への受療との関連を解析した結果、保健指導実施者の職務についた通算年数が長いこと、保健指導実施者の職種が保健師であること、介入1年目の初回健診日から保健指導実施までの期間を45日未満にするなど初動を早めること、保健指導実施者1人あたりの対象者受け持ち人数を15人未満と適正な数にすること、保健指導実施者が初回保健指導時に評価した受療行動の可能性が高いこと、保健指導の形態に関しては、個別面談、家庭訪問、電話のいずれかを完遂すること、保健指導の回数が複数であること、以上の保健指導に関する項目が医療機関への受療率を高める要因として見出だされた。
また、介入群における保健指導に関する項目と医療機関への受療との関連を解析した結果、保健指導実施者の職務についた通算年数が長いこと、保健指導実施者の職種が保健師であること、介入1年目の初回健診日から保健指導実施までの期間を45日未満にするなど初動を早めること、保健指導実施者1人あたりの対象者受け持ち人数を15人未満と適正な数にすること、保健指導実施者が初回保健指導時に評価した受療行動の可能性が高いこと、保健指導の形態に関しては、個別面談、家庭訪問、電話のいずれかを完遂すること、保健指導の回数が複数であること、以上の保健指導に関する項目が医療機関への受療率を高める要因として見出だされた。
結論
本研究は、自治体を対象としたクラスターランダム化比較試験による厳密な研究デザインに基づいて行われた世界でも稀な生活習慣病のリスクに対する大規模な地域疫学介入研究であり、重症化ハイリスク者に対する受療行動促進モデルを用いた保健指導が医療機関への受療率の上昇、および血圧、血糖、血清脂質の所見の改善につながることを世界で初めて示した。
公開日・更新日
公開日
2017-02-22
更新日
2017-04-27