非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201508021A
報告書区分
総括
研究課題名
非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究
課題番号
H27-循環器等-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学・疫学)
  • 岡山  明(合同会社生活習慣病予防研究センター)
  • 磯 博康(大阪大学 大学院医学系研究科社会環境医学講座公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 医学部社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 田中太一郎(東邦大学 健康推進センター)
  • 小川 佳宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・内科学)
  • 荒木田美香子(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部・公衆衛生看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成20年度よりわが国では、ウエスト周囲長(以下、腹囲)で男性85cm以上、女性90cm以上の内臓脂肪蓄積による肥満を必須条件としたメタボリック症候群に着目し、生活習慣病予防施策として特定健康診査・特定保健指導を実施している。すなわち、特定保健指導の対象者を選定する際には、内臓脂肪蓄積による肥満があることが必須条件である。
 一方で、わが国の疫学研究から、高血圧、糖尿病、脂質異常症等の循環器病(CVD)危険因子や危険因子の重積は、肥満と独立してCVDの発症や死亡のリスクを上昇させることが報告されており、非肥満者でのCVD予防策の是非についても検討する必要がある。
 本年度は、(1)コホートデータを用いた非肥満者における循環器疾患リスクの検証、(2)介入試験データを用いた非肥満者の予防介入方法の検証、(3)非肥満者における循環器疾患リスクと予防介入方法のエビデンステーブルの作成を行った。今後、(4)非肥満者の循環器疾患リスクと保健指導方法のガイドライン作成と(5)作成したガイドラインの実効性の検討を行う。
研究方法
(1)コホートデータを用いた非肥満者における循環器疾患リスクの検証:
 循環器疾患の発症リスク軽減の観点から、まず肥満者との比較を予考慮しながら、非肥満者における循環器疾患発症リスクを、吹田研究、Circulatory Risk in Communities Study、NIPPON DATA80/90/2010、糖尿病患者コホートを用いて検討した。
(2)非薬物介入研究データを用いた非肥満者の予防介入方法の検証:
 地域住民を対象とした高血圧・脂質異常症の長期介入研究、危険因子を2個以上有するハイリスク者1000人に対する健康教育による無作為化比較対象試験HISLIM研究、勤務者の循環器疾患危険因子の改善を目的とした数千人規模のポピュレーション対策であるHIPOP-OHP研究、浜松職域データの解析により、非肥満者に対する循環器疾患リスク因子の介入効果を検証した。
(3)非肥満者における循環器疾患リスクと予防介入方法のエビデンステーブルの作成:
 日本人を対象にした非肥満者の循環器疾患のリスクに対する非薬物的な予防介入方法に関する論文を網羅的に検索し、エビデンステーブルを作成した。
結果と考察
(1)コホートデータを用いた非肥満者における循環器疾患リスクの検証:
各コホートにおいて、肥満、非肥満のいずれにおいても血圧レベルの上昇、レベル、糖尿病、喫煙習慣がある場合、循環器疾患の発症・死亡のリスクは上昇していた。また、肥満を考慮せずに特定保健指導の階層化を行ったところ、肥満の有無にかかわらず、特定保健指導の対象者は循環器疾患のリスクが高かった。またCVD危険因子を改善した時の集団のCVDリスク低下への寄与(人口寄与危険割合)は肥満者と同等であった。非肥満者でもCVD危険因子があれば肥満者と同様にCVDリスクが上昇し、CVD危険因子を改善した時の集団のCVDリスク低下への寄与は肥満者と同等であることが示された。
(2)非薬物介入研究データを用いた非肥満者の予防介入方法の検証:
HIPOP-OHP研究では、肥満グループ、非肥満グループの両方で同様の介入効果が認められ、いずれのグループに対してもPopulation strategyを用いた介入が有効であった。地域一般人を対象とした高コレステロール血症者や高血圧者に対する保健指導に関する無作為化比較試験では、肥満の有無にかかわらず集中指導群において、対照群に比べて血清総コレステロールの低下傾向がみられ、介入効果は非肥満者でも認められる可能性を示された。また、肥満を伴わない高血圧者に対しても減塩、節酒等の保健指導の有用性が示された。肥満の有無に関わらず、ポピュレーション・アプローチや減塩などの集中指導が有効であり、非肥満者への保健指導が有用であることが示唆された。
(3)非肥満者における循環器疾患リスクと予防介入方法のエビデンステーブルの作成:
検索式により挙がった9,946件を対象に、本研究の目的に従い研究分担者や研究協力者が選定した文献は86件だった。運動による血圧低下や食事・運動指導による糖尿病予防効果が示されたが、非肥満の日本人を対象に、生活習慣改善による循環器疾患危険因子や循環器疾患リスクへの効果を検討した介入研究は非常に少なく、生活習慣改善の効果を結論づけるに十分なエビデンスレベルではなかった。
結論
非肥満者の循環器疾患のリスクは肥満者と同等であり、介入による効果が期待されることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201508021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,253,481円
人件費・謝金 1,940,382円
旅費 474,148円
その他 527,428円
間接経費 1,846,000円
合計 8,041,439円

備考

備考
補助金確定額と支出合計額の差異については、利息52円、自己資金41,387円にて精算いたしました

公開日・更新日

公開日
2016-10-11
更新日
-