健康増進・栄養政策の推進における国民健康・栄養調査の活用手法の開発

文献情報

文献番号
201508015A
報告書区分
総括
研究課題名
健康増進・栄養政策の推進における国民健康・栄養調査の活用手法の開発
課題番号
H27-循環器等-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
古野 純典(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 )
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院)
  • 大久保 公美(国立保健医療科学院)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学医学部)
  • 玉腰 暁子(北海道大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民健康・栄養調査の充実と活用を図るために次の目標を設定した。①調査協力率の改善方策を考案し、食塩摂取量推定の随時尿検査を検討する。②年次推移及び都道府県別データを整備し、そのための統計解析手法を確立する。③食事構造の解析手法を開発する。④食事多様性の指標を開発する。
研究方法
1.協力率改善のための国民健康・栄養調査の実施状況に関する調査
平成27年調査地区の所轄保健所長に対して、「平成27年国民健康・栄養調査の実施状況に関する調査」を郵送調査により行った。

2.採尿導入の検討及び都道府県別解析
健診用に採取した早朝尿についてナトリウム、カリウム、クレアチニンの濃度を測定し、1日食塩摂取量等の推計を行った。

3.国民健康・栄養調査データの年次推移と都道府県別解析
1995年~2013年国民健康・栄養調査登録データの提供を厚生労働省より受けた。

4.がん死亡に関する都道府県格差
国立がん研究センターが公開するがん情報サービスがん登録・統計を利用し、都道府県がん別部位別の75歳未満年齢調整死亡率を比較した。

5.国民健康・栄養調査にもとづく料理に関する研究
食事を構成する料理に使用された食材料の種類と摂取量の分布を明らかにするために、平成25年国民健康・栄養調査で有効な1日間食事記録のデータを解析した。

6.国民健康・栄養調査にもとづく食事多様性指標の開発研究
平成24年国民健康・栄養調査の栄養摂取状況調査の参加者(n=32,228)のうち、妊婦・授乳婦を除く20歳以上の男女を対象とした。性別・5歳階級別エネルギー摂取量がそれぞれの分布の上下2.5%の者等を除外し、解析対象者は25,039名であった。
結果と考察
結果
1.協力率改善のための国民健康・栄養調査の実施状況に関する調査
調査票配布と記入方法説明の実施方法によって世帯協力率に違いがみられた。生活習慣調査実施人数に対する血液検査実施人数の比率には、調査総時間数が影響していた。世帯協力率と血液検査協力率のどちらも調査地区の特性によって著しく違っていた。

2.採尿導入の検討及び都道府県別解析(食品摂取量と脳血管疾患死亡の地域相関)
推計食塩摂取量の全体の平均値は11.8 g/dayであり、Na/K比と有意な相関が見られた。

3.国民健康・栄養調査データの年次推移と都道府県別解析
合計約24万レコードの登録データの内容を検討し、年次推移と都道府県別解析を行う際に必要な事項を整理した。国民健康・栄養調査の対象は層別無作為クラスター抽出標本であることを考慮した統計解析手法を考案した。SAS procedureのSURVEYREGにSTARATA(都道府県)とCLUSTER(年、都道府県、地区及び単位区の組合せ)を指定する方法である。年齢調整の基準人口としては、2010年国勢調査の80歳以上までの10歳階級別日本人人口を用いることにした。2012年の標本抽出は東京都15地区と道府県10地区のクラスター抽出であったので、例年との比較性を保つために2012年は都道府県別重みを使用することにした。

4.がん死亡に関する都道府県格差
47位と1位の都道府県の75歳未満年齢調整死亡率(人口10万対)の比は、男では白血病(4.91倍)、膀胱(3.50倍)、前立腺(3.11倍)、悪性リンパ腫(2.72倍)、肝及び肝内胆管(2.62倍)、女では膀胱(13.00倍)、胃(4.39倍)、白血病(3.96倍)、卵巣(3.91倍)、食道(3.89倍)であった。

5.国民健康・栄養調査にもとづく料理に関する研究
主食系料理の主な食材料である穀類のうち、めしが出現総数、摂取人数、穀類摂取量への寄与率ともに最も高かった。一方、他の料理区分の食材料群では、摂取人数と食品群総摂取量への寄与率が必ずしも一致しないことが明らかとなった。

6.国民健康・栄養調査にもとづく食事多様性指標の開発研究
食品数と多様性の一般的指標であるBerry-Indexはエネルギー摂取量、カリウム及び食塩と正相関を示した。健康的食品多様性(HFD)とエネルギー摂取量との相関はほとんどなく、食塩との相関も見られなかった。
結論
国民健康・栄養調査の実施状況調査の結果、協力率改善に向けた方策が示された。採尿導入を検討する研究では、早朝尿による食塩摂取量の推計が種々の地域・集団による差の検討や年次によるモニターに有用であると考えられた。国民健康・栄養調査の標本抽出の特性を考慮し、年齢調整を行うための統計解析手法がそれぞれ考案された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201508015Z