健康日本21(第二次)の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201508001A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21(第二次)の推進に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院)
  • 山之内 芳雄(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 武見 ゆかり(女子栄養大学)
  • 宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 中村 正和(公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1に、健康寿命の都道府県格差の推移について分析・評価すること。第2に、健康格差の現状と要因を解明すること。第3に、健康づくり運動の具体的な進め方に関する情報・スキルを提供すること。第4に、健康日本21(第二次)などに関する国民の認知度をモニタリングすること。これらを通じて、健康日本21(第二次)の円滑な推進と目標達成を研究者の立場からサポートする。
研究方法
厚生労働省「国民生活基礎調査」データを分析して、平成25年の「日常生活に制限のない期間の平均」(健康寿命)について全国値と各都道府県値を算定して、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」及び「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標が達成に向かっているかを検討した。21世紀出生児縦断調査のデータを用いて、社会経済的指標のカテゴリごとに母親の喫煙と児の出生体重減少との相関に対する父親の学歴の影響を検討した。国民生活基礎調査データを用いて、学歴別の喫煙率を性・年齢階級別に計算した。健康日本21(第二次)に関する実践マニュアルを作成し、その普及に向けた研修会を実施した。保健医療従事者を対象に、アルコール関連健康障害を予防するための保健指導(簡易介入)の研修会を開催した。愛知県内2市において、肥満等の生活習慣病対策の推進方策を環境面・保健事業面で検討した。e-stat、NDBを活用した「健康指標見える化ソフト」の改訂を行った。自治体における身体活動・運動分野や食環境整備に関する取組・実施状況を調査した。全国から1,800人を無作為抽出して健康日本21(第二次)と関連用語の認知度について電話調査を実施し、その結果を平成25・26年度調査と比較した。
結果と考察
平成25年の健康寿命(全国値)は、男性で71.19年・女性で74.21年であった。平成22年と同25年の間で、健康寿命の増加分は男性0.77年・女性0.59年であり、平均寿命の増加分(男性0.66年・女性0.31年)を上回っていた。都道府県格差の指標として、健康寿命の真の値をめぐる都道府県間のバラツキ(標準偏差)の推移を検討したところ、男性では平成22年0.57から同25年0.47へ約17%縮小した。女性でも0.64から0.61へ約6%縮小した。以上より、健康寿命に関する健康日本21(第二次)の2つの目標は、達成に向かっていることが示された。低学歴の者ほど喫煙率が高かった。母子保健における社会経済的指標の交互作用を検討する場合には、父親の学歴を用いることが有用である可能性が示唆された。健康日本21(第二次)に関する実践マニュアルの普及研修会を平成27年10月9日に東京で開催し、全国から約170名の参加を得た。参加者の職種は、保健師・看護師61.9%、管理栄養士・栄養士22.2%であり、所属は行政が60.3%、医療保険関係が16.7%であった。「講演内容は分かりやすかったか」との質問に対して、「強くそう思う」と「そう思う」との回答が合計で96.9%であり、「講演内容は今後の活動に活用できそうか」に対して同じく95.2%であった。アルコール関連健康障害を予防するための簡易介入の研修会を2回開催し、約100名の参加があった。参加者からの感想は高評価であり、実施の意義は十分にあった。特定健診の会場で喫煙者全員に短時間禁煙支援を円滑に実施できるように、指導者向けのマニュアルや教材を整備して指導者研修を実施した。大阪府の自治体を対象に、その効果を検証した。電話調査の結果、平成27年で認知度が高かった上位4位は、「メタボリックシンドローム(96.1%)」、「健康寿命(66.2%)」、「慢性閉塞性肺疾患COPD(42.8%)」、「ロコモティブシンドローム(40.7%)」であった。3年間の推移では、「健康寿命」と「ロコモティブシンドローム」の認知度は年とともに増加した一方、「慢性閉塞性肺疾患COPD」の認知度は年とともに低下した。「メタボリックシンドローム」の認知度はいずれの年次も高い水準であった。
結論
本研究課題は当初の計画通り順調に進捗し、所期の成果とともに完結となった。本研究事業の研究分担者は、今後もそれぞれの立場で健康日本21(第二次)の推進に貢献する所存である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201508001B
報告書区分
総合
研究課題名
健康日本21(第二次)の推進に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 )
  • 山之内 芳雄(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 武見 ゆかり(女子栄養大学)
  • 宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 中村 正和(公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター)
  • 伊藤 弘人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1に、健康寿命の都道府県格差の推移について分析・評価すること。第2に、健康格差の現状と要因を解明すること。第3に、健康づくり運動の具体的な進め方に関する情報・スキルを提供すること。第4に、健康日本21(第二次)などに関する国民の認知度をモニタリングすること。
研究方法
厚生労働省・国民生活基礎調査データを分析して、平成22年における全国20大都市の「日常生活に制限のない期間の平均(健康寿命)」を算定した。平成22年と同25年とで健康寿命を比較して「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」及び「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標が達成に向かっているかを検討した。21世紀出生児縦断調査データを用いて、両親の社会経済因子と児の健康との関係を検討した。国民生活基礎調査データを用いて、学歴別の喫煙率、年齢階級・学歴・医療保険別の受動喫煙率を計算した。特定健診等の会場で喫煙者全員に短時間禁煙支援を実施することの効果を大阪府内の自治体で検証した。健康日本21(第二次)に関する実践マニュアルを研究班員全員で作成し、その普及に向けた研修会を実施した。保健医療従事者を対象に、アルコール関連健康障害を予防するための保健指導(簡易介入)の研修会を開催した。愛知県内2市において、肥満等の生活習慣病対策の推進方策を環境面・保健事業面で検討した。e-stat、NDBを活用した「健康指標見える化ソフト」の改訂を行った。自治体における身体活動・運動分野や食環境整備の取組・実施状況を調査した。全国から1,800人を無作為抽出して健康日本21(第二次)と関連用語の認知度に関する電話調査を毎年実施し、推移を検討した。
結果と考察
平成22年の健康寿命は、男女とも浜松市が最長(男性72.98年、女性75.94年)で、男性は大阪市(68.15年)が、女性は堺市(71.86年)が最短であった。20大都市間の格差は都道府県間より大きかった。平成25年の健康寿命(全国値)は、男性で71.19年・女性で74.21年であった。平成22年と同25年の間で、健康寿命の増加分は男性0.77年・女性0.59年であり、平均寿命の増加分(男性0.66年・女性0.31年)を上回っていた。都道府県格差の指標として、健康寿命の真の値をめぐる都道府県間のバラツキ(標準偏差)の推移を検討したところ、男性では平成22年0.57から同25年0.47へ約17%縮小した。女性でも0.64から0.61へ約6%縮小した。以上より、健康寿命に関する健康日本21(第二次)の2つの目標は、達成に向かっていることが示された。父親の教育年数が長くなるにつれて、母親の喫煙が出生体重に与える影響が小さくなる傾向が認められた。低学歴の者ほど喫煙率が高かった。低学歴層・若年層・男性の協会けんぽ層で家庭・職場での受動喫煙曝露の割合が高かった。健康日本21(第二次)に関する実践マニュアルの普及研修会を平成26年と同27年に1回ずつ東京で開催し、各200名程度の参加があり、高い評価を得た。教材などは研究班ホームページで公開している。アルコールに関する簡易介入の研修会を計3回開催し、参加者から高い評価を得た。特定健診等の会場で喫煙者全員に短時間禁煙支援を実施している市町村では喫煙率減少割合が有意に高いことが分かった。この方法を全国に普及させるために、指導者向けのマニュアルや教材を整備して指導者研修を実施した。蒲郡市で市民1万人をまき込んだ事業「体重測定100日チャレンジ」を実施した。「健康指標見える化ソフト」の処理速度の向上等を図った。食環境に関する項目として飲食店における健康メニューの提供などの取組を目標にあげていたのは47都道府県中38箇所、適切な栄養管理を実施する給食施設の増加を目標にあげていたのは22箇所であった。健康日本21(第二次)と関連用語の認知度に関する電話調査の結果、平成27年で認知度が高かった上位4位は、「メタボリックシンドローム(96.1%)」、「健康寿命(66.2%)」、「慢性閉塞性肺疾患COPD(42.8%)」、「ロコモティブシンドローム(40.7%)」であった。3年間の推移では、「健康寿命」と「ロコモティブシンドローム」の認知度は年とともに増加した一方、「慢性閉塞性肺疾患COPD」の認知度は年とともに低下した。「メタボリックシンドローム」の認知度はいずれの年次も高い水準であった。
結論
本研究課題は当初の計画通り順調に進捗し、所期の成果とともに完結となった。本研究事業の研究分担者は、今後もそれぞれの立場で健康日本21(第二次)の推進に貢献する所存である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201508001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健康日本21(第二次)の健康寿命の目標を達成した場合における介護費・医療費の節減額や日本における年齢階級・学歴・医療保険別の受動喫煙格差など、6編の原著論文を発表した。論文は、Preventive Medicineなどの一流誌に掲載され、国内外で大きな注目を集めている。
臨床的観点からの成果
特定健康診査の場を利用した禁煙指導・睡眠評価という取組の実施可能性・効果を解明したことにより、保健指導の可能性が拡がった。低出生体重のリスクが解明されたことにより、妊娠中のケアが改善される。肥満・メタボリックシンドローム対策を地域で実践する方法を検証したことにより、地域保健のレベル・アップに貢献した。
ガイドライン等の開発
辻は、本研究成果などをもとに「健康長寿社会を実現する~2025年問題と新しい公衆衛生戦略~」という単行本(大修館書店、2015年)を出版した。本研究班の全体研究として「健康日本21(第二次)実践マニュアル」を作成し、研修会やウェブサイトなどで普及に努めた。
その他行政的観点からの成果
本研究班の成果は平成27年12月24日開催の厚生労働省「健康日本21(第二次)推進専門委員会」に報告され、健康日本21(第二次)の進捗管理に役立つとともに、中間評価の方法論として評価された。
その他のインパクト
20大都市別の健康寿命データは平成26年5月27日の朝日新聞で報道された。健康寿命延伸が医療・介護費に及ぼす影響に関する研究成果は同年12月28日の朝日新聞で報道された。全国の保健医療関連職を対象に、健康日本21の普及に向けた研修会を2回、アルコール関連健康障害を予防するための保健指導に関する研修会を3回実施した。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小澤啓子,武見ゆかり,他
壮中年期における野菜料理摂取に関する自己申告と食事記録の関連
栄養学雑誌 , 71 (6) , 311-322  (2013)
原著論文2
Nishino Y, Tsuji I, et al
Stroke mortality associated with environmental tobacco smoke among never-smoking Japanese women: a prospective cohort study
Preventive Medicine , 67C , 41-45  (2014)
原著論文3
田淵貴大, 中村正和
日本における年齢階級・学歴・医療保険別の受動喫煙格差
JACR Monograph , 20 , 39-48  (2014)
原著論文4
遠又靖丈,辻 一郎,他
健康日本21(第二次)の健康寿命の目標を達成した場合における介護費・医療費の節減額に関する研究
日本公衆衛生雑誌 , 61 (11) , 679-685  (2014)
原著論文5
Kawado M, Hashimoto S,et al
Factors associated with activity limitation used to calculate healthy life expectancy in Health Japan 21 (the second term): analysis of national health statistics data
Fujita Medical Journal , 1 (1) , 6-8  (2015)
原著論文6
増居志津子, 阪本康子, 中村正和.
禁煙支援・治療に関するeラーニングを活用した指導者トレーニングの普及(J-STOP事業)
月刊地域医学 , 29 (11) , 906-910  (2015)
原著論文7
橋本修二, 川戸美由紀, 尾島俊之.
国民生活基礎調査における日常生活に影響のある者の割合に対する無回答の影響
厚生の指標 , 63 (1) , 38-41  (2016)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
2018-05-28

収支報告書

文献番号
201508001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,100,000円
(2)補助金確定額
19,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,033,894円
人件費・謝金 5,263,087円
旅費 1,068,307円
その他 6,331,554円
間接経費 4,407,000円
合計 19,103,842円

備考

備考
自己資金3842円

公開日・更新日

公開日
2017-06-29
更新日
-