検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
201507028A
報告書区分
総括
研究課題名
検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究
課題番号
H27-がん政策-指定-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川元保(金沢医科大学)
  • 青木大輔(慶應義塾大学)
  • 渋谷大助((公財)宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 西田 博(パナソニック健康保険組合産業保健センター)
  • 松田一夫((公財)福井県健康管理協会)
  • 中山富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター)
  • 笠原善郎(恩賜財団福井県済生会病院)
  • 濱島ちさと(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部 )
  • 雑賀公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部 )
  • 町井涼子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧米でがん死亡率減少を実現している組織型検診では、品質保証の考え方に基づいて、(1)精度管理指標(指標)の設定(2)指標によるモニタリング(3)精度管理評価結果の還元を骨子とする精度管理体制が確立している。日本でもがん対策推進基本計画(以下、基本計画)の目標であるがん死亡率減少の達成に向け、これらの骨子を踏まえた精度管理体制の確立が不可欠である。そこで本研究ではこれらの各段階について課題を設定し検討を行った。更にがん対策の対象者を対象に含む職域がん検診についても、体制整備に向けた検討を開始した。
研究方法
(1)指標の設定
がん検診の体制指標としては、集団検診について厚労省から「事業評価のためのチェックリスト(CL)」が平成20年に公表された。しかし近年実施割合が増加中の個別検診についてCLが無いことが課題であった。そこで優良自治体へのヒアリング調査により個別検診に必須の要件を特定し、それを踏まえた新たなCLを作成した。もう一方の指標であるプロセス指標については、平成20年に国が許容値・目標値を公表し、その後の精度水準の向上に応じて随時改訂することが決まっていた。そこで直近7年間の県別プロセス指標値の推移を分析し、改訂の是非を検討した。
(2)指標によるモニタリング
基本計画では全市町村での精度管理の実施や、県主導による精度管理が求められている。この進捗度を測る為に国立がん研究センターがん対策情報センター(以下、国がん)と連携して、全市町村(約1700)及び47県を対象に精度管理体制に関する調査を実施した。研究班は調査票の作成(CLに沿って独自に回答基準を設定)と結果の分析を担当した。
(3)県主導による精度管理評価結果の還元
基本計画では県に生活習慣病検診等管理指導協議会(協議会)を活用した精度管理を求めているが、その手法は標準化されていない。そこで、協議会が管轄下市町村と検診機関の精度管理水準を評価・還元する手法を決定し、それに必要なツールを作成した。また、評価に必要なプロセス指標値についてデータベースを作成し提供した。
(4)職域検診での精度管理体制の基盤構築に向けた検討
職域がん検診の実態把握の為国の指針とほぼ同項目の検診を提供する全国健康保険協会(協会けんぽ)福岡支部にヒアリング調査を行いプロセス指標の把握体制の有無を調査した。
結果と考察
(1)指標の設定
新CLとして市町村版と検診機関版(約30-50項目)を各々5がん分作成した。この新CLは平成28年2月の厚労省健康局長通達の中で従来のCLに代わるものと位置づけられ3月に全国に周知された。これにより今後個別検診体制の実態が初めて把握できる。また新CLには自治体、医師会、検診機関の役割分担や各々の連携が明示された為、今後地域医師会も含めた組織的な精度管理体制の構築が期待できる。プロセス指標値は年々改善傾向を示していた為、許容値を上方修正する方針を固めた。今後許容値の引き上げにより更に精度管理水準の向上が期待される。
(2)指標によるモニタリング
市町村調査の回収率は初めて90%を超え、チェックリストが普及していることが示された。また今年度は試験的に個別検診のCL実施率を把握したところ集団検診より大幅に低かった。詳細は今後分析する。都道府県調査には45県が回答し、協議会の開催は約40県、協議会の検討結果の公表は約30県が行っており、これらは年々改善していた。全国研修会等で協議会による精度管理手法が周知された効果と考えられる。今後は協議会の活動が県内の精度管理水準向上に寄与したかを検証していく。
(3)県主導による精度管理評価結果の還元
協議会が利用可能な調査票、評価シート、評価結果公表文書等の雛形一式を作成した。またプロセス指標値のデータベースとして、2008-2011年の都道府県別、男女別、5歳階級別の指標値一覧を作成した。これまで協議会の活動は一部の県を除き形骸化していたが、今後は上記のツール等を全国講習会により周知することで、協議会の活性化が期待できる。
(4)職域検診での精度管理体制の基盤構築に向けた検討
協会けんぽでは、プロセス指標の把握体制が不十分な現状が明らかになったが、一方で今後は、検診データとレセプトデータの突合により、殆どのプロセス指標値が翌年までに算出/推定可能であることも分かった。今後実際にデータを入手しプロセス指標値の精度を検証していく。
結論
死亡率減少を実現できるがん検診精度管理体制の構築にむけた検討を進めた。これらは国のがん対策加速化プランに直結する課題であり、研究成果を今後実際に精度管理に活用することにより、全国の検診の質向上と標準化に寄与し、最終的に死亡率減少に資することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,998,000円
(2)補助金確定額
10,998,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 594,962円
人件費・謝金 202,800円
旅費 1,577,188円
その他 6,085,383円
間接経費 2,538,000円
合計 10,998,333円

備考

備考
報告書作成の為の資材を購入した際、333円の不足が出た(自己資金)。

公開日・更新日

公開日
2016-11-22
更新日
-