がん登録等の推進に関する法律下におけるがん登録情報の活用の実際に関する研究

文献情報

文献番号
201507027A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録等の推進に関する法律下におけるがん登録情報の活用の実際に関する研究
課題番号
H27-がん政策-指定-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 亜希子(国立がん研究センター がん対策情報センター がん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 海崎 泰治(福井県立病院 病理診断臨床病理科)
  • 増田 昌人(琉球大学 医学部附属病院がんセンター)
  • 西野 善一(金沢医科大学 医学部)
  • 大木 いずみ(栃木県立がんセンター研究所 疫学研究室)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 固武 健二郎(栃木県立がんセンター・研究所)
  • 平田 公一(札幌医科大学 消化器・総合 乳腺・ 内分泌外科)
  • 松本 公一(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院 希少がんセンター)
  • 松田 智大(国立がん研究センター がん対策情報センター がん登録センター )
  • 新野 真理子(国立がん研究センター がん対策情報センター がん登録センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成28年1月施行が予定されているがん登録等の推進に係る法律(以下「がん登録推進法」という)では、登録情報の十分な活用と国民への結果の還元が求められている。本研究班は、2018年度に予定されている全国がん登録情報の提供開始に向けて、3年計画でがん登録推進法の下に全国がん登録情報を活用する場合の問題の整理後、研究的に集積されているがん登録情報と全国がん登録情報の連携モデル構築を目的とした。初年度の平成27年度は、2016年1月のがん登録推進法施行を意識し、3つの課題を設定し、研究を進めた。
課題1 研究代表者及び研究分担者が、がん登録推進法における全国がん登録情報の利用及び提供、がん登録等の情報の活用について理解を深める。
課題2 課題1を受けて、全国がん登録、院内がん登録、主に学会等主導で研究的に集積されているがん情報によって得られる統計指標を改めて整理し、異なるがん登録情報の連携によって得られる有用な統計指標を検討する。また、連携するにあたり法的に整理すべき課題の有無を検討する。
課題3 がん登録推進法に基づき提供される予定の匿名化を行った全国がん登録情報に関する世論調査の準備を行う。
研究方法
 課題1については、厚生科学審議会がん登録部会におけるがん登録推進法の政省令及び指針の意見聴取及びパブリックコメント募集の前後に班会議を開催した。班会議では、全国がん登録情報の利用及び提供にかかる規定案について議論し、案の内容に偏りや考慮の不足がないかを確認した。政令、省令、大臣指針の公布後は、各分担研究者の専門領域に関係する部分はどこか、それらがどのように影響するのかについて理解を深めた。
課題2については、分担研究者を対象に自記式で「研究的に集積されてきたがん統計情報による科学的知見に関する調査」を行った。課題1の検討の場で得た知識を念頭において、各分担研究者の立場において、既存のがん登録が何を目的に行われていて、どのような情報を提供してきたのか、他の登録では提供できない情報は何か、異種のがん登録の連携によって得られる可能性のあるがん対策のための情報案について聞いた。
課題3については、がん登録推進法に基づき提供される予定の匿名化を行った全国がん登録情報に関する世論調査の準備として、調査客体及び内容の決定の参考にするため、先行研究のシステマティック・レビューを行った。班会議でレビュー結果を共有した結果、フォーカスグループ研究(質的調査)を先行し、適切な調査票を開発した後、意識調査(量的調査)を行う研究計画に変更された。
結果と考察
 課題1については、研究代表者及び研究分担者で、がん登録推進法における全国がん登録情報の利用及び提供、がん登録等の情報の活用について、全国がん登録情報の非匿名化情報の利用と提供には研究対象者本人の同意が必要であること、非匿名化情報の利用には照合のために研究者側が個人識別情報を提供する必要があること、病院等への提供又は研究者等への提供の規定で提供された情報には政令で規定される保有期間の制限があること等について理解を深めた。課題2については、「その他のがんの診療に関する情報」を収集しているがん登録と、全国がん登録や院内がん登録の連携による追跡研究への発展や調査研究対象の集積拡大が期待できること、一方で、連携にあたっては、法に基づき求められる各がん登録の登録情報の利用目的や登録対象者への説明内容について、関係者の理解と合意形成が望ましいこと、が整理された。課題3については、先行研究のシステマティック・レビューを行った結果、匿名化されたデータであっても研究対象者に事前に承諾を得て欲しい旨の結論が多いこと、本テーマに関して最近の日本人の意識に関する論文がないことが分かった。
結論
 2016年1月から全国がん登録事業に基づくがん情報等の収集が開始されたが、収集された情報の活用に関する法令は2015年に公布されたばかりであり、活用の本格的開始は2019年からである。今後、全国がん登録情報はどのようながんに関する研究に活用できるのか、及び活用にあたり必要な法令知識を、本研究班で事前に検討した内容を参考に関係者に広く周知していく必要がある。一方で、法令に基づく全国がん登録情報の利用と提供に関して国民がどう思うかも分かっていない。国民が理解、納得できる形で、科学的知見に基づき実施するがん対策のための調査研究のために全国がん登録情報を十分に活用できるよう社会的基盤を整えていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,997,000円
(2)補助金確定額
9,997,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,036,756円
人件費・謝金 249,600円
旅費 843,630円
その他 3,585,538円
間接経費 2,307,000円
合計 10,022,524円

備考

備考
物品費、旅費、その他の最終支出後の合計において、補助金確定額を25,524円超過したため、自己資金で補填した。(利息:40円、自己資金:25,484円)

公開日・更新日

公開日
2016-11-18
更新日
-