全国がん登録と連携した臓器がん登録による大規模コホート研究の推進及び高質診療データベースの為のNCD長期予後入力システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201507023A
報告書区分
総括
研究課題名
全国がん登録と連携した臓器がん登録による大規模コホート研究の推進及び高質診療データベースの為のNCD長期予後入力システムの構築に関する研究
課題番号
H27-がん対策-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
平田 公一(北海道公立大学法人札幌医科大学 医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
研究分担者(所属機関)
  • 森 正樹(大阪大学大学院消化器外科学)
  • 宮田裕章(東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座)
  • 後藤満一(福島県立医科大学臓器再生外科学講座)
  • 岩月啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 太田哲生(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科)
  • 岡本高宏(東京女子医科大学医学部)
  • 片渕秀隆(熊本大学大学院生命科学研究部・産婦人科学分野)
  • 菊田 敦(福島県立医科大学附属病院・小児腫瘍科)
  • 桑野博行(群馬大学大学院・病態総合外科学講座)
  • 國土典宏(東京大学医学部医学系研究科・肝胆膵外科・人工臓器移植外科分野)
  • 固武健二郎(栃木県立がんセンター・研究所・消化器外科学)
  • 小寺泰弘(名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学)
  • 今野弘之(浜松医科大学外科学第二講座・消化器外科)
  • 佐伯俊昭(埼玉医科大学国際医療センター・乳腺腫瘍科)
  • 佐藤雅美(鹿児島大学大学院医歯学総合研究所循環器・呼吸器病学講座・呼吸器外科学分野)
  • 佐野 武(がん研究会有明病院・消化器外科)
  • 柴田亜希子(国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部診療実態調査室)
  • 下瀬川徹(東北大学大学院医学系研究科消化器病態学)
  • 杉原健一(東京医科歯科大学腫瘍外科学)
  • 藤 也寸志(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター・消化器外科)
  • 徳田 裕(東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科学)
  • 中村清吾(昭和大学医学部・乳腺外科)
  • 西山正彦(群馬大学大学院医学系研究科・病態腫瘍薬理学)
  • 原 勲(和歌山県立医科大学・泌尿器科)
  • 藤原俊義(岡山大学医歯薬学総合研究科・消化器外科学)
  • 古川俊治(慶應義塾大学院法務研究科)
  • 三木恒治(京都府立医科大学・泌尿器科学教室)
  • 宮崎 勝(千葉大学大学院医学研究院・臓器制御外科学)
  • 山本雅一(東京女子医科大学・消化器外科)
  • 横井香平(名古屋大学大学院医学系研究科・呼吸器外科学)
  • 渡邉聡明(東京大学大学院医学系研究科・腫瘍外科学)
  • 今村将史(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
  • 今村正之(関西電力病院)
  • 沖田憲司(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
  • 奥坂拓志(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科)
  • 福井次矢(聖路加国際大学・聖路加国際病院)
  • 水口 徹(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
16,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦のがん治療成績が国際的に大きな影響を及ぼして来たのは一部の領域に限られるものの限られた少数母集団の正確な検討によって、世界のトップレベルの学術誌に掲載され大きな評価を得てきた。一方で本邦の医療の質は高いにもかかわらず、データ登録・分析体制については国際的評価を十分に得られずにきた。その背景には、(1)臨床成績の比較を行なう際に最も重要な因子である生存・羅患の情報収集が法令上かなり困難であった、(2)従って国際的に通用しうるがんデータ情報の収集・管理体制、とくにEUのそれに通用しうる法的・学術的指針を示し得なかった、(3)(1)に関わることとして第三者機関によるデータ分析体制の確立が難しかった、(4)臓器がん登録体制等について学会間共通の基盤の下、討論する的確な場がなかった、などをあげられる。本研究は、本邦のがん情報データベースを基に国内的、国際的に高い信頼と評価を学術的に示すことによって医療を更に向上させ、国際発信を一層図る為の新医療情報体制を構築することを目標とする。
研究方法
研究内容を大きく三大別(研究群として三群を形成)した研究体制とした。第一群は全国がん登録の実施直前にあって法の公表後における高質な臓器がん登録体制の構築に関する具体的応用に向けた体制の提案・試行、臨床研究に於いてオプトイン、オプトアウト等に代表される研究倫理と法的課題など、がん登録に関わる総論的課題解決を図る、第二群は臓器がん登録を積極的に実施している学会代表者を中心にその実施状況と課題内容を検討しより良い登録・分析体制を探る、第二群の検討内容については2分し、(1)既に第三者機関NCDシステムを応用した登録・分析の必要性と可否、(2)自学会独自に登録・分析を継続するうえでの課題研究、第三群は臓器がん登録については継続的登録を困難とする学会を対象にその方向性を検討、することとした。更に、本年度の研究に当たって、以下の三点について配慮することとした。[A]各群間での研究情報内容を交換し、それぞれの課題を可能な限り集約する、[B]第二、三群にあっては、全国がん登録の内容の学術的応用へ反映させるための精緻性を担保する具体的方法論を検討する、[C]三群間での全体研究結果として将来へ向け第一歩を踏み出すための具体的な理念と実行の為の素地形成に心掛けることに最大の努力を図る、こととした。
結果と考察
本邦のがん医療の質向上に向けた理念と登録基盤体制には、学術団体間で大きな差があり、その具体的解決の為には共有すべき理念の確立が必須であることを確認した。研究の最終的目標としては、国際基準に則った次世代臨床がん研究体制の確立に貢献することを確認した。全国がん登録の政令・省令が今年度秋に固まったこともあり、ようやくデータの継続的利用の担保と今後の研究方法の在り方に関心が寄せられた。研究倫理については多くの学会が、データの研究利用に当たっては米国に見られるオプトアウト方式の運用が国民に寄与しうるとの要望を寄せてきたが、今回の実体法ではオプトインが明示されており、高い視点からの解決策、研究方法論を早急に周知していかねばならない。これまでの臓器がん登録に学会間の隔差を生じていた背景として、財務的課題、人的課題、法的課題の複合的関与があげられる。分析を第三者機関に委ねぬ学術的、財務的な課題を抽出し、その解決には困難を要するもののその明示による近々での解決、通年に渡っての登録事業が為されてない癌種での背景・理由、また臓器がん登録を全く行っていない癌種にあっては、その学術的理由、社会的理由を明確に抽出すること、等の課題を明確にし、次年度には必ずこれらの個々の解答を確認することとした。
結論
法的制度としてのがん登録が始まった。将来のがん医療の質向上に向けて登録から得られるビッグデータを如何に有意義に利活用するかは早々に問われることとなる。本研究は、本邦初のがん種研究学術団体間の壁を取り除いた研究組織として機能し、本邦のがん医療の評価・研究へと結びつける為の体制基盤整備の充実をめざし研究中である。国家的事業としてのがん登録により、高質で大規模な学術的対応を可能とさせ、医療情報の収集・分析・研究・管理システムの確立、そして医療内容の改変、改良という医療の質向上サイクルに、寄与することで次代に新たな発展を生じることを確信している。現状では、本邦のがん医療の質向上に向けた登録体制基盤状況と理念には学術団体間に大きな差がある。その具体的解決は早期の新展開に結び付くことの合意が成された。その周知法が課題である。
今後は、国際的視点からも法的・倫理的基準の準拠による次世代の本邦のがん臨床研究体制の基盤作りの周知徹底とその研究展開を図る。初年度研究として十分な成果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-11-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507023Z