汎用性のある系統的な苦痛のスクリーニング手法の確立とスクリーニング結果に基づいたトリアージ体制の構築と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201507022A
報告書区分
総括
研究課題名
汎用性のある系統的な苦痛のスクリーニング手法の確立とスクリーニング結果に基づいたトリアージ体制の構築と普及に関する研究
課題番号
H27-がん対策-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
木下 寛也(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 研(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科)
  • 里見 絵理子(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)
  • 木澤 義之(神戸大学大学院医学研究科内科系講座先端緩和医療学分野)
  • 明智 龍男(名古屋市立大学大学院・精神腫瘍学)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院・緩和医学)
  • 大谷 弘行(国立病院機構九州がんセンター・緩和医療)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんと診断された時からの緩和ケアが第2期がん対策推進基本計画に明記され、苦痛のスクリーニングは、2015年度よりがん診療連携拠点病院の要件となった。しかし、診断された時からの緩和ケア、および苦痛のスクリーニングの効果に関しては、実臨床での実施可能性、効果について様々な議論がある。そこで、本研究では、スクリーニングの有用性の検証、スクリーニングの普及を目的に、看護師によるスクリーニング・トリアージ利用したスクリーニング・マネジメントの有用性を検証するための無作為化比較試験を行う。苦痛のスクリーニングを拠点病院に均てん化するための研究を行う。さらに、異なる2つのスクリーニングの有用性の検証をコホート研究により行う。
研究方法
1)看護師によるスクリーニング・トリアージプログラムの無作為化比較試験
実施可能性試験を終了し、分析を行い、無作化比較試験の研究実施計画書の作成に取り掛かった。
2)スクリーニング・トリアージプログラムを全国に普及するための研究
既存の知見のレビュー、腫瘍専門医,看護師,緩和ケア医,精神腫瘍医のエキスパートによる議論をもとに自記式のアンケートを開発し、拠点病院を対象にアンケート調査を行った。得られた結果を拠点病院現況報告データと結合し、記述統計解析を行った。
3) 電子カルテの5thバイタルサインを用いたスクリーニングの有効性の検討
電子カルテで運用されていた5thバイタルサインを実施されていた患者のスクリーニング後の対応等についてデータを集計し、分析を行った。
4) アドバンスケアプランニングの希望に関するスクリーニングの有効性の検討
単施設において通常臨床として行われている全入院患者に入院時に配布している「意思決定支援のための問診票」の通常臨床で取得されるデータの後ろ向き解析を行った。
結果と考察
1)入院した上で化学療法を行うIV期肺がん患者を対象に、実施可能性試験を実施し、50名の対象者のエントリーを終了した。70%(35名/50名)が試験を完遂し、実施可能性を確認した。無作為会比較試験の研究計画書作成に向けて、実臨床での活用を意識し、介入の再現性が重要であると考え、実施可能性試験の結果および文献レビュー、専門家の意見をもとに介入手順書の作成を行った。
2)拠点病院等の指定を受けている422施設を対象に調査を実施した。379施設(90%)から有効回答を得た。入院でも外来でも1/4以上のがん患者に対してスクリーニングを実施している施設を「良好実施施設」と定義したところ、良好実施施設は1/3程度であった。また半数の施設は、スクリーニング実施開始1年未満であった。スクリーニング陽性であった患者が、その後どうなったかをフォローアップする体制の不備など、スクリーニングを一連のシステムとして導入できていない施設も多く認めた。スクリーニング実施上の困難としては、人的資源の不足、スクリーニングツールの選択、スクリーングに関する本質的な知識不足を認めた。これらの結果を元に「緩和ケアスクリーニングに関する事例集」を作成し、厚生労働省HPに公開した。
3)入院患者に対して苦痛STASを「5thバイタルサイン」として週1回電子カルテに入力している。STAS2以上が少なくとも2回以上記録されたものをスクリーニング陽性とし、陽性患者に対して行われていた対応について分析を行った。対象患者は2427名、うち陽性患者は223名(9.2%)、新たな介入必要なしは211名、新たな介入は12名(0.5% 2427/12)と少数であった。新規に緩和ケアチーム等の介入に至った患者は0.5%と非常に低い割合であった。
4)連続した全入院患者2586名のうち、遠隔転移のあるがん成人患者469名を同定した。387名から回答を得た(回答率84%)。スクリーニング結果が陽性であった患者は、以下の通りである。13%(47人)の進行がん患者が、化学療法の目的は、『がんを完全に取り除くこと(がんが完治すること)が目標』と誤った認識をしていた。また、55%(218人)の進行がん患者が、『標準的ながん治療の継続が難しくなった場合でも、わずかでも効果が期待できる可能性があるなら、つらい副作用があっても、がん治療をしたい』と回答した。
結論
スクリーニング・トリアージによる早期からの緩和ケアの有効性を検証する無作為化比較試験の研究実施計画書作成のための介入手順書作成の準備が整った。
がん診療連携拠点病院における、スクリーニングの実態調査を実施し、この分析ともとに「緩和ケアスクリーニングに関する事例集」を作成した。
単施設ではあるが、電子カルテの5thバイタルサインを用いた簡単なスクリーニングと紙媒体を用いたいアドバンスケアプランニングに関するスクリーニングの実施可能性を検証した。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507022Z