文献情報
文献番号
201507008A
報告書区分
総括
研究課題名
がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
濱島 ちさと(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診研究部)
研究分担者(所属機関)
- 池田俊也(国際医療福祉大学)
- 福田 敬(国立保健医療科学院)
- 五十嵐 中(東京大学大学院 薬学系研究科)
- 白岩 健(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,164,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢化や医療技術の進歩により、がん関連医療費はさらに増加する一方、がん患者のライフサイクル転換は疾病負担に変化をもたらしている。限られた医療資源を有効に活用するため、がん患者の生涯医療費を推計し、がん患者のライフサイクル転換に伴う社会的経済的負担について医療経済学的観点から検討する。また、がん検診の費用効果分析と検診に関わる医療資源の検討もあわせて行う。
研究方法
1)がん患者の労働損失
胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんがん患者を診断1年以内、診断1年以降に分けて、1年間の外来、入院、死亡による労働損失を推計した。死亡による労働損失の算出は40~75歳を対象とし、割引率は年2%として算出した。
2)胃がん検診受診による生涯医療費
検診未施行と胃X検診受診を比較対照として、胃内視鏡検診を受診した場合の生涯医療費を算出した。分析には、マルコフモデル及びモンテカルロシミュレーションを用いた。
3)胃がん検診の費用効果分析
検診未施行と胃X検診受診を比較対照として、胃内視鏡検診の費用効果分析を行った。検診対象は40~69歳と50~69歳、検診間隔は1年及び2年とし、胃内視鏡検診・胃X線検診共に4つの方法を設定した。分析は公的医療保険の立場から行い、検診費用、診断費用、治療費用を含んでいる。アウトカムはQALY(Quality adjusted life year)を用いた。分析には、マルコフモデル及びモンテカルロシミュレーションを用いた。割引率は、福田班経済評価ガイドラインに基づき、年間2%とした。各検診方法について増分費用効果(ICER JPY/QALY)を算出し、最適戦略を検討した。
4)大腸がん検診(カプセル内視鏡による精密検査)の費用効果分析
判断樹モデルとマルコフモデルを組み合わせて、検診受診後の予後を予測し、(a)通常の内視鏡検査群、(b)カプセル内視鏡検査群の期待費用と期待効果を推計した分析は公的医療費支払者の立場で実施し、時間地平は生涯とした。アウトカム指標は生存年(life year: LY)とし、費用・効果ともに年率2%で割り引いた。
7)大腸がん検診の費用対効果推計モデル構築に関する研究
大腸がん検診に関して、真のエンドポイント(QALYや大腸がん死亡)を評価でき、なおかつより実態に即した動的な検診戦略を再現できる費用対効果評価モデルを構築した。検診なし・内視鏡(TCS)中心戦略・便潜血検査(FIT)中心戦略・混合戦略の4戦略について費用効果分析を行った。
胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんがん患者を診断1年以内、診断1年以降に分けて、1年間の外来、入院、死亡による労働損失を推計した。死亡による労働損失の算出は40~75歳を対象とし、割引率は年2%として算出した。
2)胃がん検診受診による生涯医療費
検診未施行と胃X検診受診を比較対照として、胃内視鏡検診を受診した場合の生涯医療費を算出した。分析には、マルコフモデル及びモンテカルロシミュレーションを用いた。
3)胃がん検診の費用効果分析
検診未施行と胃X検診受診を比較対照として、胃内視鏡検診の費用効果分析を行った。検診対象は40~69歳と50~69歳、検診間隔は1年及び2年とし、胃内視鏡検診・胃X線検診共に4つの方法を設定した。分析は公的医療保険の立場から行い、検診費用、診断費用、治療費用を含んでいる。アウトカムはQALY(Quality adjusted life year)を用いた。分析には、マルコフモデル及びモンテカルロシミュレーションを用いた。割引率は、福田班経済評価ガイドラインに基づき、年間2%とした。各検診方法について増分費用効果(ICER JPY/QALY)を算出し、最適戦略を検討した。
4)大腸がん検診(カプセル内視鏡による精密検査)の費用効果分析
判断樹モデルとマルコフモデルを組み合わせて、検診受診後の予後を予測し、(a)通常の内視鏡検査群、(b)カプセル内視鏡検査群の期待費用と期待効果を推計した分析は公的医療費支払者の立場で実施し、時間地平は生涯とした。アウトカム指標は生存年(life year: LY)とし、費用・効果ともに年率2%で割り引いた。
7)大腸がん検診の費用対効果推計モデル構築に関する研究
大腸がん検診に関して、真のエンドポイント(QALYや大腸がん死亡)を評価でき、なおかつより実態に即した動的な検診戦略を再現できる費用対効果評価モデルを構築した。検診なし・内視鏡(TCS)中心戦略・便潜血検査(FIT)中心戦略・混合戦略の4戦略について費用効果分析を行った。
結果と考察
[結果]
1)がんによる労働損失
胃がん患者の診断1年以内の労働損失は1,499億円であり、うち外来183億円、入院102億円、死亡1,214億円であった。診断1年以降の労働損失は2,756億円であり、うち外来85億円、入院127億円、死亡2,544億円であった。男性では1年以内の労働損失は胃がんが最も高く、診断1年以降は肺がんが最も高かった。女性では1年以内の労働損失は胃がんが最も高く、診断1年以降は乳がんが最も高かった。
2)胃がん検診受診による生涯医療費
検診を全く行わない場合の総医療費は10億5千万円となり、99.5%は初回治療費が占めている。現在行われているX線検診と同様の条件(40~69歳対象、毎年検診、受診率30%)で内視鏡検診を導入した場合、治療費は13%減少するが、検診関連費用は7億8千万円が必要となり、総医療費は17億7千万円となった。
4)胃がん検診の費用効果分析
検診未実施、対象・検診間隔別の胃内視鏡検診4方法、対象・検診間隔別の胃X線検診4方法に費用対効果を比較した結果、40~69歳を対象として毎年実施する胃内視鏡検診が最適戦略であった。
5)大腸がん検診(カプセル内視鏡による精密検査)の費用効果分析
大腸癌検診後に得られるLife Year(LY)は通常内視鏡では21.5359年、カプセル内視鏡では21.5747年であった。カプセル内視鏡の通常内視鏡に対するICERは166万円/LYであった
6)大腸がん検診の費用対効果推計モデル構築に関する研究
検診なし・内視鏡(TCS)中心戦略・便潜血検査(FIT)中心戦略・混合戦略の4戦略の費用対効果は、便潜血検査(FIT)中心の戦略が最も優れるという結果になった。
[考察]
がん患者の生涯医療費や労働損失を推計し、その社会的経済的負担の大きさを明らかにした上で、診断・治療のみならず、予防対策も含めたサバイバー支援対策を医療経済学的観点から検討する。さらに、がんの予防・診断・治療における適切な医療資源配分のための政策提言を行う。
1)がんによる労働損失
胃がん患者の診断1年以内の労働損失は1,499億円であり、うち外来183億円、入院102億円、死亡1,214億円であった。診断1年以降の労働損失は2,756億円であり、うち外来85億円、入院127億円、死亡2,544億円であった。男性では1年以内の労働損失は胃がんが最も高く、診断1年以降は肺がんが最も高かった。女性では1年以内の労働損失は胃がんが最も高く、診断1年以降は乳がんが最も高かった。
2)胃がん検診受診による生涯医療費
検診を全く行わない場合の総医療費は10億5千万円となり、99.5%は初回治療費が占めている。現在行われているX線検診と同様の条件(40~69歳対象、毎年検診、受診率30%)で内視鏡検診を導入した場合、治療費は13%減少するが、検診関連費用は7億8千万円が必要となり、総医療費は17億7千万円となった。
4)胃がん検診の費用効果分析
検診未実施、対象・検診間隔別の胃内視鏡検診4方法、対象・検診間隔別の胃X線検診4方法に費用対効果を比較した結果、40~69歳を対象として毎年実施する胃内視鏡検診が最適戦略であった。
5)大腸がん検診(カプセル内視鏡による精密検査)の費用効果分析
大腸癌検診後に得られるLife Year(LY)は通常内視鏡では21.5359年、カプセル内視鏡では21.5747年であった。カプセル内視鏡の通常内視鏡に対するICERは166万円/LYであった
6)大腸がん検診の費用対効果推計モデル構築に関する研究
検診なし・内視鏡(TCS)中心戦略・便潜血検査(FIT)中心戦略・混合戦略の4戦略の費用対効果は、便潜血検査(FIT)中心の戦略が最も優れるという結果になった。
[考察]
がん患者の生涯医療費や労働損失を推計し、その社会的経済的負担の大きさを明らかにした上で、診断・治療のみならず、予防対策も含めたサバイバー支援対策を医療経済学的観点から検討する。さらに、がんの予防・診断・治療における適切な医療資源配分のための政策提言を行う。
結論
1)胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん患者の労働損失を推計した。
2)胃がん検診、大腸がん検診の費用効果分析を行った。
2)胃がん検診、大腸がん検診の費用効果分析を行った。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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