先端的がん医療実施のための地域完結型病理診断および臨床・病理連携ネットワークの構築

文献情報

文献番号
201507005A
報告書区分
総括
研究課題名
先端的がん医療実施のための地域完結型病理診断および臨床・病理連携ネットワークの構築
課題番号
H26-がん政策-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
桑田 健(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 病理・臨床検査科)
研究分担者(所属機関)
  • 土井 俊彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター先端医療開発センター 先端医療科)
  • 吉野 孝之(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科・内科学)
  • 土原  一哉(国立研究開発法人 国立がん研究センター先端医療開発センター・TR分野)
  • 関根 茂樹(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院・病理学)
  • 加藤 健(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院・内科学)
  • 野口 雅之(国立大学法人筑波大学大学院・医学医療系・診断病理学)
  • 森脇 俊和(国立大学法人筑波大学大学院・医学医療系・内科学)
  • 石川 雄一(公益財団法人がん研究会がん研究所病理部)
  • 高橋 俊二(公益財団法人がん研究会有明病院・総合腫瘍科)
  • 中島 孝(静岡県立静岡がんセンター病理診断科)
  • 山崎 健太郎(静岡県立静岡がんセンター消化器内科)
  • 小松 嘉人(国立大学法人北海道大学病院腫瘍センター)
  • 畑中 豊(国立大学法人北海道大学病院コンパニオン診断研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,938,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病理診断は、形態診断から免疫組織化学や遺伝子増幅・変異検査などの情報を包括する診断へと変化している。また分子標的治療薬に対するコンパニオン診断(CDx)が導入され質の高い病理診断が要求される。本邦における病理医不足の状況を踏まえ、病理医および病理診断部門に対する十分なサポート体制の確立が急務である。このため、がん診療連携拠点病院病理診断部門における免疫染色ならびに遺伝子検査の現状を把握し、CoDx実施をサポートする臨床・病理連携ネットワーク体制に求められる要素を明確にする。
あわせて、今度導入が期待される次世代シークエンサー(NGS)を用いたクリニカルシークエンスを例に、がんゲノム医療に資する病理組織標本の在り方について、病理ネットワークモデルを用いた情報共有の有効性とNGS解析に資する病理組織標本の在り方について考察する。
研究方法
がん診療連携拠点病院409施設の病理診断部門宛アンケートの最終的な回答を集計し、がん診療連携拠点病院病理診断部門におけるCDx実施状況を把握した。あわせて、各病理診断部門における新規CDx導入に関する現状と、今後のCDx実施をサポートするネットワークについての意見を確認した。
臨床研究等における未承認検査実施に関わるネットワークに関して、NGSを用いたクリニカルシークエンスに資する病理組織標本に関する検討として、国立がん研究センター東病院が中心となり実施する他施設臨床研究 SCRUM-Japan/GI-SCREENと連携し、そこにおける臨床・病理双方からの要望の抽出と、参加施設病理部門への情報提供、ならびに病理組織標本を用いたNGSクリニカルシークエンス実施における問題点を抽出した。
結果と考察
がん診療連携拠点病院(409施設)を対象にCDxおよび遺伝子検査に関するアンケートを実施し、最終的に345施設(84.4%)より回答を得た。今回調査したCDxおよび遺伝子検査の実施率は、2項目を除き90%以上であった。90%を下回った2項目はGIST c-kitおよび 骨軟部悪性腫瘍遺伝子検査であり、いわゆる希少癌に対するものであった。乳癌・胃癌HER2 IHCを除き、自施設病理部門での実施率はいずれも50%未満であった。診療報酬「第3部検査」に該当する検査項目についても、5-10%の施設では病理部門で実施されていた。一方、検査部門での実施はいずれも2%未満であった。また、HER2免疫染色と骨軟部悪性腫瘍遺伝子検査を除けば、いずれも95%以上は衛生検査施設への委託であった。がん診療連携拠点病院制度を活用した検査委託はほとんど実施されていない。
病理診断部門ネットワークについては90%以上の施設が肯定的であった。提供を希望されている情報は分子標的治療薬から検査実施・判定に至るまで包括的な内容であった。新規CDx情報について、病理診断部門ネットワークに載せるタイミングは薬事承認直後が40%ともっとも高かったが、臨床試験の段階からも含め薬事承認以前での情報提供希望もあった。
病理組織標本中のDNA断片化の指標となるΔCT値がNGS解析成功・不成功の指標となった。各施設か病理標本についてΔCT値には施設間格差が存在した。またそれを反映して、各施設におけるNGS解析の最終的な成功率にも施設間格差が存在した。あわせて、提出検体の作成年代別の統計では、病理組織標本作製から3年目では80%程度であるが、その後急速に低下し標本作製から5年で54%にまで減少していた。このような病理組織標本中のDNAの劣化についてはこれまで明らかになっておらず、今後本邦におけるゲノム医療推進において考慮すべき要素と考えられた。
結論
個別化医療の実施に必要な分子標的治療薬に対するコンパニオン診断や病理標本を用いた遺伝子診断を実施していく上での病理診断サポート体制」として
①新規コンパニオン診断の導入・実施に関する情報・技術提供体制
②病理組織標本を用いた診療報酬「第3部検査」に分類される検査項目への関与
③衛生検査施設において実施されるコンパニオン診断に対する精度管理
の確立が必要であると考えられた。
これらに対する問題解決には日本病理学会との連携が必須と考えられたため、本研究班との連携について公式に依頼し、抽出された問題解決に向けた検討を行うこととなった。
また今後導入が予想されるNGS解析にあたり、その対象となる病理組織標本中のDNAの質に施設間格差があることが明らかになっており、その結果を用いた治療法選択に影響が出る可能性がある。今後その原因を特定し改善策を立てるとともに、現状をがん診療にかかわる臨床・病理部門双方で共有していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,419,000円
(2)補助金確定額
6,380,000円
差引額 [(1)-(2)]
39,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,456,571円
人件費・謝金 0円
旅費 439,080円
その他 1,003,463円
間接経費 1,481,000円
合計 6,380,114円

備考

備考
自己資金114円

公開日・更新日

公開日
2016-10-12
更新日
-