新生児マススクリーニングのコホート体制、支援体制、および精度向上に関する研究

文献情報

文献番号
201506011A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児マススクリーニングのコホート体制、支援体制、および精度向上に関する研究
課題番号
H26-健やか-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
山口 清次(国立大学法人島根大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 重松 陽介(国立大学法人福井大学 医学部)
  • 原田 正平(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所)
  • 松原 洋一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
  • 大浦 敏博(東北大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の新生児マススクリーニング(NBS)は、1977年度より全国実施され、2014年度からはガスリー法に代わってタンデムマス(TMS)法が導入された。これを機にわが国のNBSの課題を整理し今後の在り方について検討した。
研究方法
 以下の5つの分担研究:すなわち1)コンサルテーション・患者コホート体制に関する研究、2)マススクリーニング検査精度向上に関する研究、3)外部精度管理体制の確立に関する研究、4)次世代のマススクリーニングの在り方に関する研究、5)治療用特殊ミルクの効率的運用に関する研究を行った。
結果と考察
 (1)稀少疾患に対するコンサルテーション体制:TMSコンサルテーションセンター開設から2年目となり2015年度は約100件の相談があった。相談内容に対する対応マニュアルの作成を進めつつあり、全体として軌道に乗ってきたと思われる。
 (2)患者登録コホート体制:自治体の把握している患者数と研究班が医療機関を対象として調査した患者数は必ずしも一致しないことが明らかになった。また発見された患者の全数登録体制について自治体の意識調査を行った。現時点では半数以上の自治体が、個人情報保護の問題等を危惧して慎重な姿勢であることがうかがわれ、この問題についてはいくつかのハードルのあることが浮き彫りになった。
 (3)TMSスクリーニングで発見された患者の遺伝子診断体制:NBS対象疾患のテーラーメイド治療を目的として、次世代シーケンサ(NGS)を用いた遺伝子診断パネルを作り遺伝子診断サービスを開始した。2015年5月より約10か月間に50例を検査した。
 (4)カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅱ(CPT2)欠損症を一次疾患としてルチン化するための研究:TMS対象疾患のうちSIDS様またはALTE様症状で発症した症例15例を学会・文献報告から収集したところ、15症例中14例がCPT2欠損症であった。これまでCPT2欠損症は一次対象疾患でなかったがため、感度の良い診断指標を開発し一次次対象疾患にすべきことを提言した。
 (5)精度管理のための Web解析システムの構築:TMS検査施設とマススクリーニング学会技術者部会で行ってきた内部精度管理をWeb上で解析するシステムを開発した。これにより、検査施設は自施設の正常値の分布、カットオフ値の適正度、偽陽性者、患者の測定値のデータなどを簡単にみることができ、他施設との比較も容易になった。検査の質向上に貢献すると思われる。
 (6)成育医療センターにおける外部精度管理体制:TMSスクリーニングの外部精度管理を目的として1年目に作成した標準検体を用いて、2年目になる今年度は技能試験(PT試験)を3回、精度(QC)試験をスケジュールに従って行うことができ、体制が定着しつつあると思われる。また全国検査機関をネットワーク化してPT試験、QC試験の分析データを評価するためのWeb解析システムを試作した。運用を図りたい。
 (7)マススクリーニング検査施設基準の充足状況:日本マススクリーニング学会が努力目標として提示した「マススクリーニング検査施設基準」47項目の充足状況を調査したところ、現時点では全47項目を満たしている施設はなかった。検査の質的向上を目指して今後の努力目標とすべきである。またTMS導入前後の各自治体のNBS実施要綱の改定状況を調査したところ、連絡協議会を持たない自治体、低出生体重児の2回目採血などが要綱に示されてない自治体等が課題としてあげられた。
 (8)今後検討すべきNBS対象疾患に関する研究:NGSを導入したNBSについて米国NIHやバージニア州などで基礎研究が始まっている。費用面、診断精度、倫理的問題などの問題がクリヤーされる必要がある。また今後NBS対象疾患として検討すべき疾患として原発性免疫不全症は、米国、台湾などの一部ではすでにNBSが実施されている。NBSによる救命効果が示されており、わが国でも検討すべき対象疾患である。
 (9)治療用特殊ミルクの安定供給体制:年々患者数が蓄積し、またTMSの導入等により疾患の種類も拡大し、成人に達した患者数も年々増加しているため、治療用特殊ミルクの供給は年々増加している。メーカーのボランティアに依存する面が多かった供給体制は、限界にきている。安定供給体制の整備が必要である。
結論
 今年度の研究成果から主要な提言として以下の点があげられる。1)患者全数登録コホート体制の確立が必要である。2)CPT2欠損症を一次対象疾患として全国でルチンに検査すべきである。3)今後追加すべき対象疾患として原発性免疫不全症等について検討を進めるべきである。4)治療用特殊ミルクの安定供給のための体制整備を急ぐべきである。

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201506011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,600,000円
(2)補助金確定額
10,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,808,068円
人件費・謝金 264,800円
旅費 2,983,914円
その他 3,483,218円
間接経費 1,060,000円
合計 10,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
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