文献情報
文献番号
201506008A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦健康診査および妊娠届を活用したハイリスク妊産婦の把握と効果的な保健指導のあり方に関する研究
課題番号
H27-健やか-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター 産科)
研究分担者(所属機関)
- 木下勝之(日本産婦人科医会)
- 佐藤拓代(大阪府立母子保健総合医療センター母子保健情報センター長)
- 松田義雄(国際医療福祉大学病院)
- 上野昌江(大阪府立大学地域保健学域看護学類)
- 山崎嘉久(あいち小児保健医療総合センター保健センター長)
- 板倉敦夫(順天堂大学病院)
- 小川正樹(東京女子医科大学病院)
- 荻田和秀(りんくう総合医療センター周産期センター産科医療センター長兼産婦人科部長)
- 立花良之(独立行政法人国立成育医療研究センターこころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科)
- 藤原武男(国立成育医療研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
平成27年からの健やか親子21(第2次)において「妊娠期からの児童虐待防止対策」が重点課題の一つに設定された。児童虐待からみた妊娠期中の関連要因はいくつか指摘されている。しかし、妊娠中の要因からみた児童虐待や子育て困難を防止する対策は取られていない。そこで本研究班においては、妊婦健診や出産状況等から子育て困難を見いだせる要因を明らかにし、その支援対策を検討することを目的とした。
研究方法
出産後の子育て困難に繋がるハイリスク妊娠を社会的ハイリスク妊娠と医学的ハイリスク妊娠に分けて検討することとした。妊婦の社会的ハイリスク要因をアセスメントする方法は行政への妊娠届提出時と医療機関における妊婦健康診査実施時の二通りがある。両者のアセスメント要因の情報共有の仕方、出産後の育児状況の把握から望ましい保健指導のあり方を検討した。さらに、医学的ハイリスク要因と社会的ハイリスク要因が子育て困難にどのように関連するかを検討するために医学的妊娠転帰から妊娠中の医学的ハイリスク要因も検討した。母体メンタルヘルスに問題がある場合は、精神医学的には医学的ハイリスクであるが、多くの場合は同時に社会的ハイリスク状態も多いので、別個の検討課題とした。
結果と考察
大阪府における社会的ハイリスク妊娠は10%近くになることが推定された。妊娠中の社会的ハイリスク妊娠の出産後の追跡研究も開始された。児童虐待を受けたお子さんの妊娠中の要因分析も開始された。若年妊娠も子育て困難の要因であることが示された。さらに、社会的ハイリスク妊娠に対しての妊娠中の問診票の作成を行い、行政と医療機関の保健指導に繋げるマニュアル作成へと繋げる予定である。児童虐待死事例検証においては父母の精神疾患要因の関与が示された。妊婦を取り囲む地域関係機関との情報共有のありかたとして電子化についても検討を開始した。医学的ハイリスク妊娠検討においては産科合併症と関連するリスク因子として、母体年齢:20歳未満、35-39歳、40歳以上、喫煙、不妊治療:排卵誘発剤・AIH・ IVF-ET、その他内科合併症が示された。メンタルヘルスに問題があり介入が必要な妊産婦は全体の4.0%であることが推定された。中でも、比較的低年齢層が子育て困難を危惧された。メンタルヘルス不調の母親に対してのマニュアル作成を行った。
結論
子育て困難に関わる妊娠中の要因は社会的ハイリスクと医学的ハイリスクが複合的に関与することが示唆される。今後も事例研究、さらには後方視的研究、前方視的研究によって妊娠期からの望ましい保健指導、さらには切れ目のない子育て支援体制づくりが必要である。特に、若い妊婦さんは社会的にも医学的にもメンタルヘルスからも重要課題であると示唆される。
公開日・更新日
公開日
2016-07-21
更新日
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