乳幼児突然死症候群(SIDS)および乳幼児突発性危急事態(ALTE)の病態解明等と死亡数減少のための研究

文献情報

文献番号
201506006A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)および乳幼児突発性危急事態(ALTE)の病態解明等と死亡数減少のための研究
課題番号
H26-健やか-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 稲子(国立大学法人三重大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 戸苅 創(金城学院)
  • 高嶋 幸男(学校法人国際医療福祉大学 福岡保険医療学部)
  • 中山 雅弘(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 市川 光太郎(地方独立行政法人 北九州市立八幡病院 小児救急センター )
  • 中川 聡(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 山口 清次(国立大学法人島根大学 医学部)
  • 成田 正明(国立大学法人三重大学大学院 医学系研究科)
  • 平野 慎也(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 岩崎 志穂(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 山本 琢磨(国立大学法人長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 児玉 由紀(国立大学法人宮崎大学医学部不附属病院 総合周産期母子医療センター)
  • 吉永 正夫(国立病院機構 鹿児島医療センター)
  • 堀米 仁志(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
  • 清水 渉(日本医科大学 内科学)
  • 堀江 稔(国立大学法人滋賀医科大学)
  • 蒔田 直昌(国立大学法人長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SIDSおよびALTEの発症率軽減を目指して、SIDS, ALTEの病態解明、リスク因子の検討、診断方法の確立、鑑別診断方法の確立、乳児の安全な睡眠環境の検討、有効な啓発方法の検討を目的とする。
研究方法
SIDSは素因的因子、年齢的因子、睡眠関連因子、環境因子などが複雑に絡み合って発症することが示唆されている。病態解明およびリスク因子の検討として、覚醒反応等に関与するセロトニン系神経への胎生期ウィルス感染の影響、突然の胎児死亡あるいは神経予後不良例での周産期リスク因子の検討をおこなった。診断に関しては乳児の心肺停止症例に対する外来対応の現状、我が国の解剖診断の現状および倫理的・法的問題について検討した。ALTEの定義が改訂されたことを受け診断ガイドラインについて検討した。またSIDS, ALTEの鑑別診断としては、タンデムマススクリーニングを用いた脂肪酸代謝異常症の診断指標の検討、病理標本から次世代シークエンサーを用いた代謝性疾患および感染性疾患の鑑別法の検討、遺伝性不整脈については1ヶ月健診時の心電図検査による早期診断法の検討をおこなった。また保育施設等で問題となっている乳児の寝かせ方については、乳児突然死症例における睡眠体位の状況調査、これまで行った諸外国での乳児の安全な睡眠環境の調査から日本での安全な睡眠環境を考える上での方向性を検討した。普及啓発方法については両親学級での効果的な情報提供の方法について検討した。
結果と考察
脳内セロトニン神経系は胎内感染による影響を受けることを報告してきたが、セロトニン受容体発現は日齢19における胎内ウィルス感染動物モデルでは有意差がなかった。周産期因子として突然の胎児死亡あるいは突然の徐脈から死亡や神経予後不良となる症例には、母体合併症や先天異常が高率に認められた。
ALTEの診断については、特にALTEの定義が改訂され多岐に渡る原因が含まれることとなったこともあり、それぞれ症例における原因究明が必要となったことから、ALTE診断のガイドライン(案)を作成した。またSIDS, ALTEの鑑別診断としては、タンデムマススクリーニングを用いた新生児スクリーニング導入の結果、一次対象疾患が早期に診断されている可能性が示唆された。次世代シークエンサーを用いて病理標本から感染症および代謝性疾患の鑑別法の検討を行い診断に有用である可能性が示唆された。
寝かせ方に関してはこれまでに行ってきた米国、豪州、欧州の乳児の寝かせ方に関する実態調査を総合すると、いずれの国でもSIDSを含む睡眠に関連する突然死発症予防を目的としたキャンペーンが実施されていた。今後、日本においてもSIDSに限らず、窒息等の睡眠中の事故をも視野に入れた予防キャンペーンが必要であると思われた。乳幼児の突然死例の体位の検討からは生後3ヶ月を過ぎるとうつぶせで発見される症例が散見された。今回は対象症例にSIDSおよびそれ以外の突然死症例も含まれていると考えられるため、SIDSリスク因子解明のためには解剖により診断されたSIDS症例の検討が必要と考えられた。
SIDSの啓発については蘇生法講義を組み合わせた講習会を開催したが、講義だけでは知識が持続しにくいという結果であった。
結論
SIDSの病態については、出生後のリスク因子だけでなく胎生期におけるリスク因子も関与する可能性が示唆された。胎生期のウィルス感染により覚醒反応の発達過程に関連すると考えられているセロトニン神経系に異常をきたす可能性があることを報告してきたが、感染時期や受容体発現に関して検討の必要があり、周産期リスク因子の関与についてもさらに検討する必要がある。
作成したALTEの診断ガイドライン(案)は関連各学会にも了解を得て普及啓発していく予定である。
SIDSの鑑別診断においてはタンデムマススクリーニング、次世代シークエンサーなどを用いて代謝疾患、感染性疾患の鑑別などの方法確立について検討していく。
これまでに乳児の寝かせ方に関する欧米諸国の情報収集を行ってきた。各国の文化の違い、寝かせ方の歴史的な違いにより、各国の対応には少しずつ差が認められた。米国、豪州、欧州での調査結果と合わせて我が国においても安全な寝かせ方について検討していく必要がある。乳幼児突然死例の検討では、SIDS以外の疾患も含まれている可能性が示唆されたため、解剖を施行してSIDSと診断された症例の登録システムを構築し、リスク因子の解析を行う必要があると思われた。啓発方法についてはビデオ、動画など印象に残りやすい形での啓発が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201506006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,499,112円
人件費・謝金 1,682,713円
旅費 1,792,416円
その他 2,116,759円
間接経費 909,000円
合計 10,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
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