慢性疾患に罹患している児の社会生活支援ならびに療育生活支援に関する実態調査およびそれら施策の充実に関する研究

文献情報

文献番号
201506002A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性疾患に罹患している児の社会生活支援ならびに療育生活支援に関する実態調査およびそれら施策の充実に関する研究
課題番号
H25-次世代-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 及川 郁子(聖路加国際大学看護学部 )
  • 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 石崎 優子(関西医科大学医学部)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、慢性疾患を有する児が、そのライフステージに応じた適切な自立支援や療養支援が受けられるようにすることである。児とその家族への働きかけ、医療関係者・教育関係者への働きかけといった多面的かつ包括的な啓発ツールを作成し、具体的な支援モデルを提案することにより、慢性疾患を有する児の健全育成ならびに円滑な社会参加を促す。
研究方法
(1) 慢性疾患を有する児の身体的状況、心理社会的状況等に関する実態調査
 北海道地区を対象とした実態調査を行った。まずパイロット調査を行い、質問票の確定ならびに調査ツール(web調査)の動作確認等を行った。北海道地区の調査協力施設とのフィールド調整後、平成26年12月より調査対象者が直接webサイトにアクセスし、質問票に回答するwebベースの調査を開始した。北海道調査の際にその後の電話インタビューの同意が得られた保護者を対象にインタビュー調査を実施した。
(2) 病弱教育における自立支援施策の充実
 (1)慢性疾患児の療養を支える関係機関の動向と慢性疾患のある子どもの心理社会的課題の整理とそれに基づく慢性疾患児童等支援ネットワークの構築のためのモデル提示、(2)支援関係者向けの啓発ツールの活用方法の検討のため、北海道地区をフィールドとして、函館市、札幌市、旭川市へのアンケート調査と小児慢性特定疾病の診療体制調査の調査を行った。
(3) 成人移行期における自立支援の検討
 移行支援ツールとして完成した成人移行ガイドブック小児科医版を日本小児科学会ならびに分科会に配布した。また地域の小児科医にガイドブックを6か月間使用してもらい、意見を聞き、使用前後の意識を調べることによりその有効性を検討した。成人科各科との移行支援カンファレンスを試みた。
(4) 患者・家族に対する支援体制の構築
 モデル案の妥当性の検討を行い、子どもの自立に向けた療養支援モデルを作成した。チェックリストと具体的介入を合わせた療養支援モデルを作成し、広く活用・普及するために「慢性疾患児の自立に向けた支援ガイド」を作成した。
結果と考察
(1) 慢性疾患を有する児の身体的状況、心理社会的状況等に関する実態調査
 北海道地区における実態調査の有効回答数(回答率45.2%)は、1224名(156親子)であった。電話によるインタビュー調査を進めた。
(2) 病弱教育における自立支援施策の充実
 3市の小慢担当部局への質問紙による調査と3大学病院小児科の道内関連病院における専門外来の診療体制の調査を実施した。医療現場、教育現場、地域行政部門(教育、保健福祉)の連携方法を提言する公開シンポジウムを実施した。
(3) 成人移行期における自立支援の検討
 小冊子を小児科医に配布し、6か月使用した前後の移行の実施状況を調査した。各疾患で移行先の確保に有効な方法、成人科移行の推進のため求められている情報を検討した。
(4) 患者・家族に対する支援体制の構築
 チェックリストを用いて評価した結果、患児の自立度は概ね設定年齢で達成しており、親は早期から子どもの自立に向けた支援をしていた。モデル案を活用した介入支援(23事例に実施)が疾患の理解や自己管理を促進していることを明らかにした。「慢性疾患児の自立に向けた支援ガイド」を作成した。
結論
慢性疾患を有する児の健全育成、ならびに円滑な社会参加を促すことを目的として研究を行った。
1) わが国における慢性疾患を有する児の慢性疾患を有する児の身体的、心理社会的状態等の実態調査を行った。
2) 患者・家族に対する支援体制の構築を目指し、慢性疾患を有する子どものライフステージに応じた適切な療養支援のための「慢性疾患児の自立に向けた支援モデルのガイド」の枠組みを作った。
3) 成人移行期における自立支援を効果的に行うために作成した医療者向け移行支援ガイドブックを実際に使用して有用性を検討し、疾患別の移行支援モデルの構築を始めた。
4)学齢期における小児慢性疾患のある子どもの自立支援施策の充実のため、教育と医療が連携して患者を支援する具体的方法について検討した。

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201506002B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性疾患に罹患している児の社会生活支援ならびに療育生活支援に関する実態調査およびそれら施策の充実に関する研究
課題番号
H25-次世代-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 及川 郁子(聖路加国際大学 看護学部 )
  • 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 石崎 優子(関西医科大学 医学部)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 慢性疾患を有する児が、そのライフステージに応じた適切な自立支援や療養支援が受けられるようにする。児とその家族、医療関係者・教育関係者への働きかけに用いる多面的かつ包括的な啓発ツールを作成し、具体的な支援モデルを提案することにより、慢性疾患を有する児の健全育成ならびに円滑な社会参加を促す。
研究方法
(1) 慢性疾患を有する児の身体的状況、心理社会的状況等に関する実態調査
 児とその家族が受けている医療支援および社会支援、身体的・心理社会的問題、特有の問題に対する支援の必要性を調査した。平成25年度は調査コンテンツを作成し、慢性の病気をもつ子どものための調査票(DISABKIDS)を日本語に翻訳し妥当性を検証した。平成26~27年度は北海道地区を対象とした実態調査として、調査対象者が直接webサイトにアクセスし、質問票に回答するwebベースの調査を行った。電話インタビューの同意が得られた保護者を対象にインタビュー調査を実施した。
(2) 病弱教育における自立支援施策の充実
 北海道地区をフィールドとして、①慢性疾患児の療養を支える関係機関の動向と慢性疾患のある子どもの心理社会的課題の整理とそれに基づく慢性疾患児童等支援ネットワークの構築のためのモデル提示、②支援関係者向けの啓発ツールの活用方法の検討を行った。
(3) 成人移行期における自立支援の検討
 平成25年度は国内外で作成されたツールやガイドブックをもとに移行支援ガイドブック小児科医版の試案を作成した。平成26年度は試案を日本小児科学会の移行期支援WGにて検討し、使用後の意見を集約し、内容を改訂して完成した。平成27年度は完成した成人移行ガイドブックを日本小児科学会ならびに分科会に配布し、小児病院にて使用した際の有効性を検討した。
(4) 患者・家族に対する支援体制の構築
 ①文献検討と子どもの療養支援に携わる医療・福祉・教育関係者へのヒアリング調査から、子どもの自立度評価のためのチェックリストを作成し、その妥当性を評価した。②8医療機関の小児看護専門看護師が、チェックリストを用いて子どもの自立度、親の子どもへの支援の状況を評価し、23事例に自立に向けた支援を実施した。③「慢性疾患児の自立に向けた支援モデルのガイド」の活用指針を作成した。
結果と考察
(1) 慢性疾患を有する児の身体的状況、心理社会的状況等に関する実態調査
 平成25年度、DISABKIDS日本語版の妥当性が確認された。平成26~27年度に実施した北海道地区における実態調査の有効回答数(回答率45.2%)は、1224名(156親子)であった。子どもの介助の必要度別に収集したデータを解析した。
(2) 病弱教育における自立支援施策の充実
 研究①では、医療者は教育体制や内容等に関する知識が乏しく、地域支援という発想がないこと、福祉・相談事業や小慢手帳を知らないこと、小慢事業がすべての道保健所で行えていないことがわかった。小児慢性疾患支援事例を収集し、支援ネットワークモデルを検討した。研究②では、スマートフォン向けのアプリ開発を行い、電子化した小慢手帳のプロトタイプを示した。
(3) 成人移行期における自立支援の検討
 平成25年度にはガイドブック医師版(試案)を作成した。内容は移行支援総論およびコラムとした。平成26年度に小冊子『成人移行期小児慢性疾患患者の自立支援のための移行支援について』を完成し、発行した。平成27年度に小児科医に配布し、6か月使用した前後の移行の実施状況を調査した。
(4) 患者・家族に対する支援体制の構築
① 子どもの自立度の評価指標の開発:患児と親を対象とした調査の結果、チェックリスト76項目のうち達成・部分達成を含めて70%に達していない項目は、子ども8項目、親1項目であった。チェックリストを再検討し、全77項目に整理した。② 小児看護専門看護師を窓口とした自立に向けた支援の実施:介入の実施状況としては、「子どもの社会化と関連機関との連携」に向け、「疾患の理解」や「自己管理(セルフケア)の促進」を高めることであった。介入に当たっては、患児が医療者とコミュニケーションが図れているかが大事な要素となっていた。チェックリストと介入内容を一体化した支援モデルを作成した。③ 「慢性疾患児の自立に向けた支援モデルのガイド」の活用指針を作成した。
結論
 慢性疾患を有する児の健全育成、ならびに円滑な社会参加を促すことを目的として研究を行うことにより、患児(患者)ならびにその家族の現状を把握し、課題を明確にした。移行支援に関する啓発ツール(小児科医向け、患者向け、保護者向け)を作成した。啓発ツールを用いた支援システム・モデルを提案、検証した。

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201506002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児慢性疾病を有する患児の成人期移行において医師(小児科医など)や看護師(小児専門看護師など)が患者・家族の自立支援を行う際のチェックリストやガイドブックを作成し、チェックリストの各項目の年齢別達成度を確認し、ガイドブックの有用性を検証した。北海道地域におけるフィールド調査から患児・家族の身体的、心理社会的状態および教育と医療が連携した公的な自立支援の実態とさまざまな問題点を明らかにした。
臨床的観点からの成果
小児慢性疾病の患者・家族の自立支援を行う際のガイドブックの医師(小児科医など)版として「成人移行期小児慢性疾患患者の自立支援のための移行支援について」を日本小児科学会小児慢性疾患患者の移行支援ワーキンググループの協力を得て編纂した。また看護師(小児専門看護師など)版として「慢性疾患児の自立に向けた支援ガイド」を作成した。患児・家族の身体的、心理社会的状態および教育と医療が連携した公的な自立支援に関して医療・保健がなすべき施策、支援モデルを提示した。
ガイドライン等の開発
小児慢性疾病を有する患児の成人期移行において患者・家族の自立支援を行う際のガイドブックの医師(小児科医など)版として「成人移行期小児慢性疾患患者の自立支援のための移行支援について」を刊行した。日本小児科学会では移行ガイドブックの総論として位置づけられ、各論編纂への足がかりとなった。看護師(小児専門看護師など)版としては「慢性疾患児の自立に向けた支援ガイド」を発表した。
その他行政的観点からの成果
北海道のフィールド調査を通じて慢性疾患を有する患児と保護者の身体的、心理社会的状態等の実態が明らかになった。さまざまな疾患における特有の状態や必要としている社会福祉的支援が明確となり、具体的なモデルの構築につながり、政策立案に資する貴重な情報になった。難病支援団体の協力を得て、自立支援事業で、広域モデルを提示が出来たことで、地域における慢性疾病児童等地域支援協議会や自立支援員の施策が進んだ。行政施策立案の基礎資料となった。
その他のインパクト
新聞(Medicament News第2215号、2015年12月5日発行)の特集「移行医療の現状と課題」として報道された。日本家族計画協会の主催する研究発表会「次世代を担う子どもの健やかな育成のために」(2016年3月17日開催、東京)で一般人に対して研究成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
2021-06-03

収支報告書

文献番号
201506002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,370,086円
人件費・謝金 6,230,088円
旅費 1,727,402円
その他 3,264,719円
間接経費 2,500,000円
合計 15,092,295円

備考

備考
及川郁子(研究分担者)の分担研究においてワーキンググループの開催や当事者へのヒアリング調査などを実施したために、交通費が予算額を超過した。不足分は自己資金を充当した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-