国際的整合性を踏まえた医薬品の品質管理に関する査察手法の質的向上に資する研究

文献情報

文献番号
201504034A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的整合性を踏まえた医薬品の品質管理に関する査察手法の質的向上に資する研究
課題番号
H27-特別-指定-029
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 櫻井 信豪(医薬品医療機器総合機構)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品製造所における「医薬品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)」の遵守状況の行政側の確認調査の中で、製造所の不正の検出の可能性について、国際的に先進的な査察手法を国内GMP査察実施部署に導入することを目的とした。また、査察手法の国際的整合性を踏まえ、国内GMP査察員の質的向上に資するために、資料・情報を提供することを目的とした。あわせて、「医薬品の品質の確保・向上と医薬品の品質管理に関する調査結果の相互利用に関する協定(Mutual Recognition Agreement: MRA)」の締結を含めた国際調和の推進にも寄与する。
研究方法
スイス、英国、カナダ、米国、欧州医薬品品質理事会のGMP査察担当官から、査察手法のうち特に不正発見の方法について情報収集と比較検討を行い、我が国の今後の査察手法の方向性について考察した。
方法: 対策の概要等をメールで事前調査したのち、訪問調査または電話会議でのインタビュー形式で情報収集を行った。
調査事項:1.GMP査察体制・制度 2.GMP査察の財源 3.不正を発見するための手法 4.不正を防止するための制度 5.将来的な課題。 
調査対象機関:スイス医療製品庁(Swissmedic)、英国 医薬品・医療製品規制庁(MHRA)、カナダ保健省(Health Canada)、米国 食品医薬品庁(FDA)、 欧州医薬品品質理事会(EDQM)。
結果と考察
GMP査察の目的は、いづれの調査対象国等でも医薬品製造所の品質システムの確認であり、製造所側の不正を発見するためのものではないという認識は共通していた。査察手法に関して次の特徴が明確になった。
1.各当局ともGMP査察は原則、実地にて行われていた。特に国内査察ではすべて     実地により実施している。
2.製造所単位で査察の実施計画を立てることを基本とし、リスク評価手法にて対象とする製造所を選択し、概ね2-3年に1度の頻度でGMP査察していた。
3.日本のような申請品目の承認毎のGMP調査は行われておらず、各当局とも承認審査の過程で必要に応じてGMP査察を行う制度であった。また、承認申請書と製造指図記録などによる製造実態の整合性はGMP査察で確認していない。一部の国では代表品目のみに対しては行われていた。
4.製造所側の不正の発見には内部通報が大きな役割を果たしており、専用ホットラインを設置している当局もあった。無通告査察も半数の国で取り入れていた。税関等との協力も有益である。また、不正に対しては、日本とは異なり警察的権限を持つ組織が対応するなど、より強力な体制を持っている。カナダは指摘内容、製造所ランクを査察後30日以内にWEBで公開することにしており、ビジネス上インパクトを持たせている。
5.急速な技術進歩の時代に即応した、Data integrity など査察官の教育研修が各当局で行われていた。 
欧米諸国では、日本とは異なる査察手法や制度が取り入れられていることが明らかとなり、GMP査察の改善や国際的整合性の検討にあたって一顧に値する情報が得られた。
結論
国際整合やMRAを視野に入れた我が国のGMP制度・手法の改善の方向性として、検討すべき事項は以下の通りである。
1. GMP査察は、一定頻度で製造所へ実地にて行うことが基本となるよう、制度、体制を考慮すべきである。
2. 承認(申請書)と製造実態の整合性は製造者や製造販売者が法令遵守の観点から担保するものであり、行政側は講演会等でその必要性を唱える活動が重要である。
3. 行政側が実施する承認(申請)書と製造実態の整合性確認は、GMP査察部署とは別の部署が実施することが効率的である。
4. GMP査察で不正を発見することは困難であるが、抑止策として1)内部通報ホットラインの設置、2)無通告査察の実施、3)製造所のGMP管理状況の公表、は一定の効果が見こまれる。
5. 特に無通告査察については、米国では日常的に実施していることからも、我が国もGMP査察部署の人員を増強する等、頻度・対象を拡大する。
6. 警察的な権限を持つ部署を設置し、GMP査察部署と共同して対処することで、不正に対する迅速な対応が可能になる。
GMP査察員に対する教育研修の充実を図る(Data Integrity 等)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201504034C

収支報告書

文献番号
201504034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,443,060円
人件費・謝金 515,272円
旅費 2,002,790円
その他 38,878円
間接経費 1,200,000円
合計 5,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-07-01
更新日
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