日本における画像検査利用の適正基準に関する研究

文献情報

文献番号
201504030A
報告書区分
総括
研究課題名
日本における画像検査利用の適正基準に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-032
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
隈丸 加奈子(順天堂大学 医学部 放射線診断学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,120,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
画像診断技術の普及や進歩は、疾患診断や患者の予後改善に大きく貢献してきた。ところが同時に、「エビデンスに基づいた適切な適応」ではない理由で撮影される検査も増えている。その結果、検査の増加による医療費への負荷、不必要な医療被ばくの増加、過診断や擬陽性の増加、頻回受診による患者の負担増加に加えて、適切な検査への誘導がなされないことによる診断能の低下、検査増加による重要検査の遅延、限られた放射線科医の読影力が適正に配置されないことによって画像検査の総合的な質が低下するなど、多方面への影響が懸念されている。本研究では、適切な適応の画像検査を、医療現場が自律的に実行できる診療支援システムの開発を視野に入れ、その基盤となる画像検査適応推奨グレードの構築を検討した。
研究方法
主に米国のAmerican College of RadiologyのAppropriateness Criteria (ACR-AC)を研究対象とし、日本の検査状況や疾病背景を調査分析した上で、ACR-ACの日本適用可能性を検討した。

1)米国と日本の検査機器状況の差異
米国と日本では検査機器へのアクセシビイティや検査機器の種類などに違いがあることが予想される。これらがACR-ACに反映されている可能性を考慮し、まずは日米の検査機器状況の差異につき調査・研究を行った。

2)米国と日本の主要疾病頻度の差異
検査適応を決める重要な因子である検査前確率は、検出しようとする疾患の有病率・罹患率に大きく影響をうけるため、日米の疾病頻度の差異につき、WHO、CDC、厚生労働省や国立研究所等の統計をもとに調査・研究を行った。

3)ACR Appropriateness Criteriaの日本への適用可能性
上記2点を踏まえた上で、ACR-ACの個々のシナリオ・バリアントに関して、各領域の画像検査の専門的知識を有する者が、日本への適用可能性につき科学文献や専門的経験を元に検討・研究を行った。
結果と考察
画像検査機器の設置状況や検査状況・疾病状況には日米間で無視できない差異が存在した。ACR-ACの全81シナリオに含まれる全975個の推奨グレードを研究対象とし検証したところ、147個(15.1%)のグレードに修正の必要性が示唆された。これは、米国の機器や検査状況が潜在的にACR-ACのグレードに反映されていることによるものと考えられ、具体的には1)日本で利用できない検査、もしくはアクセスが著しく限られる検査がACR-ACに記載されている 2)日本で発行されているガイドラインと相違がある 3)エビデンスがない場合の検査選択に対する認識が日米で異なる 4)検査前確率と検査施行閾値の関係に対する認識が日米で異なる 5)疾患頻度に日米間差異がある 6)造影検査に対する閾値が日米で異なる、などが理由として考えられた。
結論
日本の画像検査機器設置・使用状況や疾病構造などを踏まえ、海外のガイドラインの盲目的な取り入れではなく、日本の医療現場が受け入れやすく、社会への定着が容易な形の検査適応推奨グレードを構築する必要があることが示唆された。次年度以降は、本邦における画像検査推奨グレードの構築を開始・評価するとともに、最終的なゴールである「適切な適応の画像検査を、医療現場が自律的に実行できるような仕組みづくり」を目指していく。

公開日・更新日

公開日
2016-10-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201504030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・日米の画像検査機器設置状況、利用状況の差異が明らかとなった
・科学的エビデンス以外に、検査設置状況や機器へのアクセシビリティが学術ガイドラインに反映されている可能性が明らかとなった
・エビデンスがない場合の検査選択に対する認識、検査前確率と検査施行閾値の関係に対する認識が、日米間で異なることが明らかとなった
臨床的観点からの成果
・海外のガイドラインの盲目的な取り入れではなく、日本の医療現場が受け入れやすく、社会への定着が容易な形の検査適応推奨グレードを構築する必要があることが示唆された
ガイドライン等の開発
・本研究結果を踏まえ、日本の医療現場が受け入れやすく、社会への定着が容易な形の検査適応推奨グレードを今後構築していく
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
・欧州放射線学会にて本プロジェクトに関する発表を行った
・日本医学放射線学会総会のシンポジウムで本プロジェクトに関する発表を行った
・国立大学法人放射線診療部門会議で本プロジェクトに関する発表を行った
・AMED研究事業として採択され、日本版ガイドライン策定プロジェクトが始動した

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201504030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,120,000円
(2)補助金確定額
1,120,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 286,547円
人件費・謝金 407,200円
旅費 109,840円
その他 316,386円
間接経費 336,000円
合計 1,455,973円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
-