危機管理の観点からの血漿分画製剤の安定的確保・供給体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201504028A
報告書区分
総括
研究課題名
危機管理の観点からの血漿分画製剤の安定的確保・供給体制の構築に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-028
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平時・有事を問わず血漿分画製剤のサプライチェーンを維持する具体的な方策を検討するにあたり、血漿分画製剤の製造実態と供給上の問題点、およびこれらの背景因子を整理することが本研究の目的である。
研究方法
危急時の血漿分画製剤の安定的確保や供給体制を規定している「オーストラリア国家血液供給緊急時対応計画(NBSCP;National Blood Supply Contingency Plan)」と「カナダ サスカチュワン州地域保健医療施設血液不足管理計画」の記載内容を分析した。また、企業ホームページ、企業事業報告書、調査会社購入資料(MRB、QYResearch)を用いて国内の血漿分画製剤の製造・供給上の課題を整理した。
血漿分画製剤の安定供給のための関係者の役割の同定および安定供給のシステム化については、関係学会の提示するガイドラインおよび国内外の状況に関して多くの資料や情報を得るために、日本血液製剤機構や外資メーカー等の公表資料を用いた。
(倫理面への配慮)
本研究は、政策研究であることから、倫理面への配慮を要するものは含まない。
結果と考察
「オーストラリア国家血液供給緊急時対応計画(NBSCP;National Blood Supply Contingency Plan)」と「カナダ サスカチュワン州地域保健医療施設血液不足管理計画」の2つは、内容的にも類似していた。血漿分画製剤を含む血液製剤の不足事象を4つのフェイズに分けて、各々の関係者が講じるべき対策と活動を計画書として明示していた。
 これらの計画は、血液製剤の製造者、中央政府、地方政府、製造事業者、医療機関関係者などを含む包括的な計画であり、わが国としても大いに参考になるものとして位置づけることができると考える。
次に、平時・有事を問わず血漿分画製剤のサプライチェーンを維持する具体的な方策を検討するにあたり、血漿分画製剤の製造実態と供給上の問題点、およびこれらの背景因子を整理することを目的として、国内事業者の製造拠点が天災や人的要因により機能不全に至った場合の代替手段を検討するために、製造上の特性から検討した。
日本で販売されている血漿分画製剤の製造事業者や販売事業者を整理すると、一事業者のみが製造又は輸入販売しているシングルサプライ品や複数の事業者が製造又は輸入販売していることがあることから、代替手段を検討するには①シングルサプライ品、②他社が代替品を有するが、代替可能な製造能力を有しない場合、③他社が代替品を有し、代替可能な製造能力を有する場合に分類できるので、それぞれについて代替手段とその問題点を抽出した。
 すべてのケース、特にシングルサプライ品の場合において多くの課題があることがわかった。特にシングルサプライ品の場合では、もともと事業採算性に乏しいことが考えられ経済的な理由から、シングルサプライを製造する事業者や他の事業者が積極的に代替手段を講じるとは考えられないことが推察される。また、すべてのケースにおいて製造事業者は血漿分画製剤事業の安定的な運営を図るために、自身の事業採算性を維持・向上させること必要性があるため、通常では必要としない過剰な対応、設備投資を要することが障害となると考える。なお、これら製造上の問題を解決するためには、自社の企業情報を競合他社に開示する必要もあり、製造事業者間だけでは解決しにくい問題も浮き彫りとなった。
 また、血漿分画製剤について製剤別、工程別にその脆弱性を明らかにした上で、脆弱性の検証に向けた評価フロー図も作成した。
結論
平時・有事を問わず血漿分画製剤の安定供給を図るために、豪州やカナダの危機管理計画は大いに参考になる。わが国でも製剤の不足を惹起する様々な事象を考え、関係者の具体的な役割分担を明確にし、協力体制を構築することが問われている。加えて、血液法に基づく需給計画については、平時だけでなく有事に際しての計画や対応を記述して行く必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-12-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201504028C

収支報告書

文献番号
201504028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,150,000円
(2)補助金確定額
3,150,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 594,564円
人件費・謝金 727,437円
旅費 216,546円
その他 1,612,472円
間接経費 0円
合計 3,151,019円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-12-16
更新日
-