文献情報
文献番号
201504024A
報告書区分
総括
研究課題名
National Clinical Databaseを用いた医療の質と費用の両面からの医療資源の利用の現状と改善課題を同定する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H27-特別-指定-024
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学教室)
研究分担者(所属機関)
- 岩中 督(東京大学医学部附属病院小児外科)
- 伏見 清秀(東京医科歯科大学・医療政策情報学)
- 北川 雄光(慶應義塾大学医学部一般・消化器外科)
- 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本の急性期医療は、良好な治療成績に比して、術後在院期間が長いことが特徴である。医療資源を有効に活用し、持続可能な医療提供体制を構築するために、適切な術後入院期間を実現することは極めて重要な課題であると考えられる。医療の質を担保した標準的な在院期間内で退院可能かどうか施設別の検討を行い、結果、施設別の改善幅を検討することが可能。一方でDPC研究班のデータと組み合わせて、医療費に対してのインパクトを検討する。分析の有効性を確認した後には、National Clinical Database(以下NCD)に参加する全ての領域に取り組みを拡大することが可能である。また第2段階においては、地域医療提供体制の再構築により、どの様な改善効果が見込まれ、どのような課題があるのかについてのシミュレーションを行うことも可能。支払い制度の再構成においても、また、医療の質を担保した上で医療費の投入効率を最大化する検討においても極めて重要な貢献が期待される。
研究方法
本研究のデータ収集・分析においてはNCDネットワークを活用。NCDは2014年3月の段階で400万件以上の症例が集積している. 国内施設間はもとより欧米施設との直接的な成績比較が可能であり、国内施設の成績向上につながっている。本研究では臨床現場との連携において確立されているNCDのイニシアチブとネットワークを用いて、医療の質と費用の両面からの医療資源の利用の現状と改善課題を同定する研究である。また、医療の質を担保した標準的な在院期間内で退院可能かどうかについても、施設別の検討を行う。これらの分析の結果、施設別の改善幅を検討することができる。一方でDPC研究班のデータと組み合わせて、改善の結果どの程度のインパクトが医療費に対してあるのかも検討する。NCDのデータ管理・分析部門の責任者である宮田裕章が主任を務め計画の策定と分析を行う。また分担研究者としてNCD代表理事の岩中督が計画の監修を行い、消化器外科学会理事長 瀬戸泰之が分担研究者となり学会内のとりまとめを行う。DPC研究との連携においては伏見清秀がNCDと対応した施設単位の記述統計の集計値を算出する。
結果と考察
本研究の実施にあたっては、NCDデータとDPCデータを個票レベルで突合することなく、二つのデータベースを連携させ、日本の在院日数の検証する方法を模索した。DPCデータに含まれるDPCコードの制限は、医療資源・医療行為の使用や一日当たり包括入院費の基準を同一のものとすることができ、在院日数のバラつきを均一な条件化で比較することに重要であった。また、NCDデータの詳細な臨床情報を使い、症例ケースミックスを調整した上での施設の死亡率の評価を行い、病院レベルの情報をDPCデータ中のモデル施設群同定に利用した。同定されたモデル施設群の在院日数の分布を全症例に適用することができる、という仮定のもとではあるが、在院日数が短縮された際に見込まれる入院費削減割合が概算された。一方、二つのデータベースの価値を最大化させ、より精緻な在院日数の適正値を推計するには、症例レベルでの突合が必要になると考えられる。今後、データ環境の整備を進め、統合されたデータを用いた在院日数のモデル化や在院中のイベントと在院日数の延長の関係の検証を通して、医療費削減割合の推計を再度行い、今回の概算を検証することが望まれる。
結論
全体的な在院日数が短いほど施設在院日数の中央値のばらつきが少ない傾向にあり、25-75thパーセンタイルの範囲は、三種の腹腔鏡手術、三種の開腹手術、食道切除再建術の順に大きかった。ただし、胃切除術は在院日数の中央値が18日と胃全摘(20日)に比較して短いものの、病院中央値の25-75th パーセンタイル範囲は5.5とより大きく、ばらつきが相対的に大きいことを示した。
各術式の観察された総包括入院費は症例数に強く依存し、小さいもので腹腔鏡下胃全摘術の3500症例に対する14億円、大きいもので開腹胃切除術の16600症例に対する73億円程度であった。全ての術式において、モデル施設群における在院日数は、非モデル施設群の在院日数に比較して有意に短かかった。非モデル施設群での在院日数とモデル施設群での在院日数の分布の違いによる推定削減割合が最も大きかったのは開腹胃全摘術の10.1%であり、最も小さい食道切除再建術でも5.2%であった。
入院費によって重み付けをした削減割合の加重平均はこの7術式で8.1%であり、この7術式、8万症例
程度に対して30.8億円ほどの削減効果が見込まれた。
各術式の観察された総包括入院費は症例数に強く依存し、小さいもので腹腔鏡下胃全摘術の3500症例に対する14億円、大きいもので開腹胃切除術の16600症例に対する73億円程度であった。全ての術式において、モデル施設群における在院日数は、非モデル施設群の在院日数に比較して有意に短かかった。非モデル施設群での在院日数とモデル施設群での在院日数の分布の違いによる推定削減割合が最も大きかったのは開腹胃全摘術の10.1%であり、最も小さい食道切除再建術でも5.2%であった。
入院費によって重み付けをした削減割合の加重平均はこの7術式で8.1%であり、この7術式、8万症例
程度に対して30.8億円ほどの削減効果が見込まれた。
公開日・更新日
公開日
2016-06-13
更新日
-