文献情報
文献番号
201504021A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症に対するかかりつけ医の向精神薬使用の適正化に関する調査研究
課題番号
H27-特別-指定-021
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
新井 平伊(順天堂大学大学院医学研究科 精神・行動科学)
研究分担者(所属機関)
- 秋山 治彦(東京都医学総合研究所)
- 本間 昭(認知症介護研究・研修東京センター)
- 中島 健二(鳥取大学医学部・神経内科学)
- 石郷岡 純(東京女子医科大学医学部精神医学講座・精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,681,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新オレンジプランに基づき認知症の人が住み慣れた地域での生活を継続するためには、医療・看護・ケアの包括的アプローチが重要である。その多くは地域医療の重責を担っているかかりつけ医により実践されており、早期発見・治療から医療連携までの流れの中で重要な存在である。かかりつけ医による診療では、認知症の存在を疑い早期発見につなげ認知症を専門とする医師に橋渡しすることがまず第一に要求されるが、一方で認知機能障害などの中核症状や、行動心理症状(BPSD)に対する治療も求められている。後者の治療では向精神薬が投与されることもしばしば起こるが、適用量の問題や副作用の観点から適切なコンサルテーションや使用ガイドラインが必要となる。そのような事情から認知症疾患センターや医師会を中心に講習会や研修会が行われてきた。またそうした講習会や多くの研修会では平成24年度に厚生労働科学特別研究事業により作成された「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」が広く使われてきた。
しかし、このガイドラインに関しては見直し作業といくつかの改善の必要性も指摘されてきた。特に、非専門医であるかかりつけ医に対して抗精神病薬使用の意義と危険性、開始や中断の基準、記載されている薬剤の種類や投与量などに対してより明確な記載や加筆修正が求められている。
本研究では従来のガイドラインの利用に関する実態調査とともに認知症における向精神薬治療に関わる関連6学会の専門医がかかりつけ医の治療の指針となる既存のガイドラインの改訂第2版を作成することを目指した。
しかし、このガイドラインに関しては見直し作業といくつかの改善の必要性も指摘されてきた。特に、非専門医であるかかりつけ医に対して抗精神病薬使用の意義と危険性、開始や中断の基準、記載されている薬剤の種類や投与量などに対してより明確な記載や加筆修正が求められている。
本研究では従来のガイドラインの利用に関する実態調査とともに認知症における向精神薬治療に関わる関連6学会の専門医がかかりつけ医の治療の指針となる既存のガイドラインの改訂第2版を作成することを目指した。
研究方法
認知症の薬物療法、とりわけ向精神薬が中心となるため、認知症における向精神薬治療に関わる関連6学会の専門医から構成される研究体制とした。実際の計画・方法としては、かかりつけ医を対象とした調査研究、各向精神薬に関する国内外の医学研究論文の情報収集とその詳細な解析、そしてガイドライン第1版の再点検、他の治療ガイドラインとの整合性などが重要課題として挙げられたため、分担研究員における研究とそれらの詰めを行う合同検討会議の実施が主体となった。またかかりつけ医のガイドラインの使用状況や必要性を調査するためにインターネット上でのアンケート法を採用した。
上記のようにガイドライン第1版の改訂を目指し、各課題を分担研究者が検討の上合同会議とメールを通しての情報交換によって加筆修正を行った。また公開性を高めることを目指し、班会議ではメディア同席、班会議で協議の上で班員の所属学会の規定に基づいた利益相反の開示を行うことを決定した。
上記のようにガイドライン第1版の改訂を目指し、各課題を分担研究者が検討の上合同会議とメールを通しての情報交換によって加筆修正を行った。また公開性を高めることを目指し、班会議ではメディア同席、班会議で協議の上で班員の所属学会の規定に基づいた利益相反の開示を行うことを決定した。
結果と考察
今回のかかりつけ医を対象としたアンケート調査では、家族がもっとも困る症状はもの忘れと共に興奮性のBPSDであり、そしてかかりつけ医の半数以上がBPSDに向精神薬を処方しているとの結果であった。
地域医療を担うかかりつけ医の向精神薬使用の際の医療安全面をバックアップすることがこのガイドラインの目標であり、初版のガイドラインはEBMに基づき、そこに経験(エキスパート・コンセンサス)も加えることでより実践的なものをめざしたが、今回の改訂でも趣旨に変更はなく、第1版の構成を継続し、初版に必要な修正を加えるマイナーチェンジを中心に行った。薬物療法についてはエビデンスを優先し、副作用については経験も十分尊重して記載した。そのためEBMに完全には従うことができなくなるものの、ガイドラインに限界を明記して医療連携によるチーム医療を推奨することで医療安全を確保するよう心掛けた。
上記を踏まえ各学会の認知症ガイドライン、既存のガイドラインとの整合性、記載する向精神薬の処方上の注意点や副作用、エビデンスの確認などを行い、各班員の利益相反を第2版ガイドラインに記載した。なお今後、研究報告や研究経費については積極的にWebに公開し、パブリックコメントは必要に応じて複数回実施することを方針とし、その上で作成した最終版案は日本老年精神医学会、日本認知症学会、日本神経学会、日本神経精神薬理学会、日本神経治療学会、日本認知症ケア学会の各認知症関連学会でもその内容の審議を依頼し、可能であれば学会の承認を得ることを目指すこととした。
地域医療を担うかかりつけ医の向精神薬使用の際の医療安全面をバックアップすることがこのガイドラインの目標であり、初版のガイドラインはEBMに基づき、そこに経験(エキスパート・コンセンサス)も加えることでより実践的なものをめざしたが、今回の改訂でも趣旨に変更はなく、第1版の構成を継続し、初版に必要な修正を加えるマイナーチェンジを中心に行った。薬物療法についてはエビデンスを優先し、副作用については経験も十分尊重して記載した。そのためEBMに完全には従うことができなくなるものの、ガイドラインに限界を明記して医療連携によるチーム医療を推奨することで医療安全を確保するよう心掛けた。
上記を踏まえ各学会の認知症ガイドライン、既存のガイドラインとの整合性、記載する向精神薬の処方上の注意点や副作用、エビデンスの確認などを行い、各班員の利益相反を第2版ガイドラインに記載した。なお今後、研究報告や研究経費については積極的にWebに公開し、パブリックコメントは必要に応じて複数回実施することを方針とし、その上で作成した最終版案は日本老年精神医学会、日本認知症学会、日本神経学会、日本神経精神薬理学会、日本神経治療学会、日本認知症ケア学会の各認知症関連学会でもその内容の審議を依頼し、可能であれば学会の承認を得ることを目指すこととした。
結論
かかりつけ医を対象としたガイドラインの普及はいまだ不十分であり今後の公知を含めたより積極的な展開が必要なことが明らかとなった。また、かかりつけ医のもとで向精神薬が高率に使用されている実態からガイドライン改訂の意義が再確認され、諸検討結果をもとにより新しい医学情報を含めて安全かつ適切な薬物療法を確保するためのガイドライン第2版を作成した。今回の改訂版は、かかりつけ医の医療安全の向上をめざし、これまで以上により質の高い在宅医療の推進、認知症の人と家族の生活の質(QOL)の向上につながるものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2016-06-21
更新日
-