「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染問題に関する指針」の見直しに関する研究

文献情報

文献番号
201504020A
報告書区分
総括
研究課題名
「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染問題に関する指針」の見直しに関する研究
課題番号
H27-特別-指定-020
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,628,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植医療において、ヒト臓器を用いる同種移植は数多く行われ成果をあげてきているが、臓器提供数不足の問題が生じている。問題解消に向けた一つの選択肢として、ヒト以外の動物由来臓器を活用する異種移植の可能性が検討されている。しかし、異種移植に伴う未知の感染症拡大等のリスクには留意する必要があり、公衆衛生学的対応は重要課題である。そこで本邦では、平成13年に「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」が作成された。それ以降の約15年の間に、科学技術は進歩し、異種移植に対する国際的見解の変化や本邦での新たな関連法の施行もみられている。本研究では、これらの状況変化への対応を目的として、特に臨床応用へ進展の可能性が高いブタ膵島を用いた異種移植に焦点をおき、本指針の見直し案を作成した。
研究方法
人獣共通感染症を含む微生物感染症専門家、臓器移植医療専門家、再生医療専門家、倫理専門家および法律専門家等の調査・議論をふまえ、異種移植実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する意見をとりまとめ、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」の見直し案を作成した。
結果と考察
異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に焦点を絞り議論を行った。そのうえで、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」の見直し案を作成した。本指針は、異種移植に起因し出現するかもしれない感染症に対して、これを見逃し、感染が拡大することの無いようにすることを目的とする。したがって、異種移植を実施する際に関わる法や指針が適用される場合については、これらの法令・指針を併せて用いることが重要である。今回の見直しにおいては、近年のこれらの法令・指針の新規施行等に対応するための修正を加えた。次に、異種移植臓器のドナー動物の条件についての記載に修正を加えた。特に、感染危険性が排除されるべき病原体に関する記載を明確にし、その病原体リストを更新・修正した。PERVについては、全てのブタの遺伝子にPERV-A・PERV-Bが組み込まれていること等により感染危険性の完全な排除が困難であることををふまえ、高度なレベルのモニターの必要性およびその方法等についての記載を加えた。
今回の見直し案は、本指針の当初の基本理念を継承し、公衆衛生学的な見地から異種移植に起因する感染症拡大のリスクを最小限にすることを目的とし、国内の異種移植医療実施施設が遵守すべきものである。異種移植実施施設等において本指針を参照し、最大限の感染症対策を行いつつ、国内外で異種移植に関係する問題が発生した際には的確な対応が取れるような体制を確立することが必要である。今後、さらなる規制の変化や技術の進歩等に応じて、さらなる本指針の修正や新たな公衆衛生学的管理体制の構築が必要となる可能性がある。
一方、国外でブタ膵島移植が開始されている現状において、国外で異種移植を受けた患者等の国内流入が想定されるが、本指針の異種移植実施に伴う公衆衛生上の管理の視点から、国外で異種移植を受けた患者等についても、国内で異種移植を受けた患者と同様な微生物学的監視等の対応がなされる必要がある。このような移植実施施設以外にも求められることが推奨される事項については、本指針見直し案に記載した。しかし、国内異種移植医療実施施設を主な対象とする本指針のみでは、この新たな課題への対処は不十分である。国外異種移植患者等の本邦における微生物学的監視等の公衆衛生学的管理体制を早急に構築することの必要性を提言する次第である。
結論
現時点での科学技術では、異種移植の実施に伴う未知の感染症リスクを完全に排除することは困難である。異種移植に伴う感染症拡大のリスクを最小限にすることを目的とする「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」に基づく公衆衛生学的管理は重要である。本研究は、本指針の見直し案を示すとともに、国外で異種移植を受けた患者等の本邦における公衆衛生学的管理体制の早急な構築の必要性を提言するものである。

公開日・更新日

公開日
2016-10-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201504020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で作成した指針見直し案では、近年の科学技術等の進歩をふまえ、感染危険性が排除されるべき病原体に関する記載を明確にし、その病原体リストを更新・修正した。現時点での科学技術では、異種移植の実施に伴う未知の感染症リスクを完全に排除することは困難である。異種移植に伴う感染症拡大のリスクを最小限にすることを目的とする本指針に基づく公衆衛生学的管理は重要である。
臨床的観点からの成果
本研究で作成した見直し案は、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」の当初の基本理念を継承し、公衆衛生学的な見地から異種移植に起因する感染症拡大のリスクを最小限にすることを目的とし、国内の異種移植医療実施施設が遵守すべきものである。
ガイドライン等の開発
平成13年に作製された「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」の見直し案を作成した。
その他行政的観点からの成果
国外でブタ膵島移植が開始されている現状をふまえ、国内流入が想定される国外異種移植患者等について、本邦における微生物学的監視を含む公衆衛生学的管理の必要性についての記載を追加した。しかし、国内異種移植医療実施施設を主な対象とする本指針のみでは、この新たな課題への対処は不十分である。国外にて異種移植を受けた患者等の本邦における公衆衛生学的管理体制の早急な構築の必要性を提言する次第である。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
平成13年に作製された「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」の見直し案を作成した。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201504020Z