国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)等において構築する疾患登録システム(患者レジストリ)を基盤とした、新たな治験・臨床研究の推進方策に関する研究

文献情報

文献番号
201504018A
報告書区分
総括
研究課題名
国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)等において構築する疾患登録システム(患者レジストリ)を基盤とした、新たな治験・臨床研究の推進方策に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-018
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宍戸 稔聡(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 研究推進支援部)
  • 山本 晴子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 先進医療・治験推進部)
  • 原口 亮(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 情報統括部)
  • 櫻井 孝(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 鈴木 啓介(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 治験・臨床研究推進センター)
  • 林 邦彦(国立大学法人群馬大学 大学院保健学研究科)
  • 和田 圭司(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 柴田 大朗(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究支援センター)
  • 大松 広伸(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院)
  • 田代 志門(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
  • 野坂 生郷(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
  • 杉山 雄大(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
  • 斉藤 和幸(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター)
  • 矢作 尚久(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター)
  • 松山 晃文(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬資源部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
部局変更  分担研究者 田代 志門  部局:研究支援センター (平成27年12月31日まで) → 社会と健康研究センター(平成28年1月1日以降)  

研究報告書(概要版)

研究目的
クリニカル・イノベーション・ネットワーク(以下、CIN)とは、疾患登録システム等を活用し、関係機関が連携して効率的な治験・臨床研究を実施できる臨床開発の環境を整備することを目的としている。疾患登録システムを構築している、厚生労働省所管のナショナルセンター(以下、NC)、医薬基盤・健康・栄養研究所(以下、基盤研)において、疾患登録システムの内容や情報提供の方法、治験・臨床研究における疾患登録システムのあり方、企業とのコンソーシアム、倫理面での問題点、自然暦調査、治験における対照群としての疾患登録システムの情報の有効活用、レギュラトリーサイエンスの論点整理を行う。
研究方法
疾患登録システムの活用による臨床開発の環境整備にかかる論点を横断的に検討するため、各NC、基盤研からそれぞれ分担研究者が参画する形で、現状分析と論点整理を行った。各NC担当者への調査票により、患者レジストリ登録情報、患者レジストリ活用状況、電子カルテとの連携状況、既存データベースとの連携状況、企業との連携状況等を調査した。また、班会議の開催、製薬企業、および各NC への訪問により意見聴取を行い、議論を行った。
結果と考察
疾患登録情報の治験・臨床研究への活用において、臨床開発における有用性は、市場調査、治験実施可能性の調査、治験計画の作成、治験への患者リクルート、治験対照群の設定、製造販売後調査、安全性対策に大きく要約でき、目的の広汎性や規制要件からは、登録システムの階層性を考えることも重要であると考えられた。情報システムのあり方については、医療情報を巡る状況の変化から、情報インフラ整備の課題として、長期的なプラットフォームの構築、情報マネジメントシステムの構築と電子カルテシステムとの連携、同意取得体制の整備とともに、短期的にレジストリ登録項目の整理、既存レジストリの情報公開、臨床研究ネットワーク構築とオープン化が挙げられる。倫理面での問題点では、行政事業二次利用型、診療情報二次利用型、研究利用明示型の3類型に分類した上で、特に診療情報二次利用型における企業の利活用における同意、オプトアウトにおける情報公開、個人情報保護法改正の影響が課題とされた。治験対照群としての疾患登録情報の活用は、患者レジストリ等を利用し治験対照群として活用される状況は少ないものの、疾患領域によってはその期待も大きいことから、規制当局との連携のうえで、登録項目、規制要件への適合性、患者レジストリを利用した典型的な二重盲検化比較試験の代替方法論の検討を踏まえ、新たなレジストリ構築も検討すべきと考えられた。
製薬企業からの聞き取り調査より、CINを推進するための中央支援の仕組み“ワンストップ”の機能、体制のあり方について検討すべきと考えられた。
NC及び基盤研へ各施設の状況を調査より、必ずしも構築当初から臨床開発、治験等での利用を目的としているものではなく、製薬企業のすべてのニーズに対して構築されたものではないものの、臨床開発に資する活用可能性もある。疾患領域や研究開発基盤の状況により、臨床開発における疾患レジストリ等の疾患登録情報の必要性は異なるものと思われた。
結論
本研究においては、患者レジストリ、疾患登録情報の治験・臨床研究への活用のあり方、情報システムのあり方、倫理的観点、治験における対照群としての活用の観点、から検討した。検討の中で、①NC及び基盤研以外が構築する既存の患者レジストリも含めた情報収集と分析及び製薬企業等が利用しやすい形でのリスト化、②倫理的課題、個人情報の取り扱い、③登録項目の標準化も含めた患者レジストリ、情報システムのあり方、④疾患登録情報の治験・臨床研究への利活用の仕組みについては、個別疾患領域に関わらず共通の問題点であり、継続して議論することが必要であると考えられた。また将来的には、CINを推進するための中央支援の仕組み、製薬企業からも要望のある“ワンストップ”の機能、体制のあり方を製薬企業の意向も含めて議論する必要がある。さらに、課題解決に向けて、総論的な議論に終始せず、問題となっている領域においては、規制要件も踏まえた上で、具体的な疾患登録システム、レジストリ構築について検討すべきである。その際には、①臨床開発を促進するために治験対照群が必要とされる領域において、具体的にレジストリ構築や疾患登録情報の活用方策の開発、②製造販売後調査、安全対策に資するレジストリ、疾患登録情報の活用、の観点が必要である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201504018C

収支報告書

文献番号
201504018Z