文献情報
文献番号
201504016A
報告書区分
総括
研究課題名
ドクターヘリの適正な配置及び安全基準のあり方に係る研究
課題番号
H27-特別-指定-016
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
猪口 貞樹(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 坂本 照夫(久留米大学 医学部)
- 荻野 隆光(川崎医科大学 医学部 )
- 高山 隼人(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター・救命救急センター )
- 中川 儀英(東海大学 医学部)
- 野田 龍也(奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成13年より整備が始まった我が国の救急医療用ヘリコプター(以後ドクターヘリ)事業は、救急患者の早期診療開始を主目的とした救急現場への医師派遣システムであり、現在運航開始後14年が経過し、平成27年度当初には全国37道府県45カ所で運航されるに至っている。一方で、国全体としてとらえた際、ドクターヘリはどの程度の機数であれば適切な社会的投資といえるか、という観点では十分に議論されてこなかった。
本研究の目的は、我が国におけるドクターヘリの適正な配置、安全基準のありかたを提言することである。
本研究の目的は、我が国におけるドクターヘリの適正な配置、安全基準のありかたを提言することである。
研究方法
1.欧州各国におけるヘリコプター救急医療システム(以下HEMS)の現状調査を行い、我が国におけるドクターヘリの機数と配置のあり方の考え方を検討した。
2.外傷および非外傷性疾患に対するHEMSの有効性・費用対効果に関する文献調査を行った。
3.日本外傷データバンクのデータを利用し、我が国にける外傷に対するドクターヘリの救命効果および費用対効果を推計のうえ、ドクターヘリの効率的な運用システムのあり方を検討した。
4.我が国におけるドクターヘリの安全管理について、アンケート調査を実施した。
5.各地域のドクターヘリ基地病院責任者と連携して、我が国におけるドクターヘリの広域連携および適正配置について検討した。また、これを踏まえてドクターヘリの適正配置案を作成した。
2.外傷および非外傷性疾患に対するHEMSの有効性・費用対効果に関する文献調査を行った。
3.日本外傷データバンクのデータを利用し、我が国にける外傷に対するドクターヘリの救命効果および費用対効果を推計のうえ、ドクターヘリの効率的な運用システムのあり方を検討した。
4.我が国におけるドクターヘリの安全管理について、アンケート調査を実施した。
5.各地域のドクターヘリ基地病院責任者と連携して、我が国におけるドクターヘリの広域連携および適正配置について検討した。また、これを踏まえてドクターヘリの適正配置案を作成した。
結果と考察
1.欧州における現状調査から、HEMSの位置付けと運用方法は、国によって大きく異なっていることが明らかになった。
2.先行研究では、HEMSには重症外傷の生存退院に対する改善効果が見られたが、非外傷性疾患に対する転帰の改善効果は明確ではなかった。
3.日本外傷データバンクの分析結果から、我が国ではドクターヘリの介入により重症外傷の死亡退院率が有意に減少していることが明らかになり、また医療経済効果は妥当な範囲内であることが示唆された。費用対効果の精緻化のため、今後本邦でのコホートスタディが必要と考えられた。
4.ドクターヘリの安全管理に関するアンケート調査結果から、運航体制の標準化とガイドラインの作成が必要と思われた。またインシデントデータベースを用いた多職種の情報共有化にむけて、パイロット研究の実施が望まれる。
5.ドクターヘリ適正配置案の検討から、現在のドクターヘリ46機に加えて、全国で11機(北海道2、東北3、中部・近畿・中国・四国に各1、九州2)の追加が必要と判断された。また追加配置の際には、希少な医療資源を有効に活用するため、隣県との連携等、機体の有効活用を必須条件にすべきと考えられた。
2.先行研究では、HEMSには重症外傷の生存退院に対する改善効果が見られたが、非外傷性疾患に対する転帰の改善効果は明確ではなかった。
3.日本外傷データバンクの分析結果から、我が国ではドクターヘリの介入により重症外傷の死亡退院率が有意に減少していることが明らかになり、また医療経済効果は妥当な範囲内であることが示唆された。費用対効果の精緻化のため、今後本邦でのコホートスタディが必要と考えられた。
4.ドクターヘリの安全管理に関するアンケート調査結果から、運航体制の標準化とガイドラインの作成が必要と思われた。またインシデントデータベースを用いた多職種の情報共有化にむけて、パイロット研究の実施が望まれる。
5.ドクターヘリ適正配置案の検討から、現在のドクターヘリ46機に加えて、全国で11機(北海道2、東北3、中部・近畿・中国・四国に各1、九州2)の追加が必要と判断された。また追加配置の際には、希少な医療資源を有効に活用するため、隣県との連携等、機体の有効活用を必須条件にすべきと考えられた。
結論
今後、我が国のドクターヘリが、国の医療政策において中・長期的にどのような役割を果たすべきかを十分に検討することが望ましい。
従来のように、ドクターヘリの目的を「重症・重篤例に対して迅速に救急医療を提供し、その死亡率を減少させること」とするならば、全国に57機程度を配置し、介入が有効な症例に集中対応するための体制を整備することが望ましい。このようなドクターヘリの効率的運航を実現するには、さらに調査・研究をすすめ、介入が有効な症例を選別するための出動基準を明確化するとともに、継続的な効果検証を行わなければならない。同時に安全管理体制の強化も必要である。
一方、中・長期的な地方の人口減少・過疎化を前提に、救急医療機関を集約化し、同時にHEMSで
広域救急搬送を行う方針をとるのであれば、対象疾病を現在より拡大し、より多くの機体を全国に
配備する必要がある。この場合には、中・長期的な計画と社会資本整備が必須である。同時に、消防・防災ヘリや自衛隊の航空機などのさらなる有効活用についても検討を要する。
従来のように、ドクターヘリの目的を「重症・重篤例に対して迅速に救急医療を提供し、その死亡率を減少させること」とするならば、全国に57機程度を配置し、介入が有効な症例に集中対応するための体制を整備することが望ましい。このようなドクターヘリの効率的運航を実現するには、さらに調査・研究をすすめ、介入が有効な症例を選別するための出動基準を明確化するとともに、継続的な効果検証を行わなければならない。同時に安全管理体制の強化も必要である。
一方、中・長期的な地方の人口減少・過疎化を前提に、救急医療機関を集約化し、同時にHEMSで
広域救急搬送を行う方針をとるのであれば、対象疾病を現在より拡大し、より多くの機体を全国に
配備する必要がある。この場合には、中・長期的な計画と社会資本整備が必須である。同時に、消防・防災ヘリや自衛隊の航空機などのさらなる有効活用についても検討を要する。
公開日・更新日
公開日
2016-05-30
更新日
-