医療行為にかかわる分類の国際比較に関する研究

文献情報

文献番号
201504014A
報告書区分
総括
研究課題名
医療行為にかかわる分類の国際比較に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-014
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大井 利夫(一般社団法人 日本病院会)
研究分担者(所属機関)
  • 川合 省三(社会医療法人さくら会病院)
  • 高橋 長裕(公益財団法人ちば県民保健予防財団総合健診センター)
  • 大塚 秋二郎(宇都宮リハビリテーション病院)
  • 末永 裕之(一般社団法人 日本病院会)
  • 阿南 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター)
  • 荒井 康夫(北里大学病院)
  • 鎌倉 由香(昭和大学病院)
  • 川瀬 弘一(聖マリアンナ医科大学)
  • 波多野 賢二(国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,715,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究目的は、現状、国際標準的な医療行為分類が定められておらず、数種類の分類を世界各国で使用している状況を把握することにより、世界保健機関(WHO)において作成中の医療行為の分類(ICHI)の情報収集を行い、さらに既存の分類とICHIとの比較検証、ICHI開発貢献のための体制作りを行い、ICHI開発に対する今後のわが国の対処方針の検討材料を提供することにあり、このことは世界的な医療行為統計の質の向上の視点からも極めて重要である。併せて、わが国に適した医療行為に関わる分類の体制作りを思索した。
研究方法
現存する主要な分類を比較検証するため、①ICHI、②米国医師会のCPT、③米国で作成・利用されてきたICD-9-CM、④わが国の診療報酬制度にて用いられているKコード・Jコード、⑤日本の外科系諸学会のもと運用されている外保連試案コードの5つの分類を研究対象とした。これらを対象に、基本理念、開発経由、基本構造等について調査し、比較表を作成した。また、ICHI、Kコード、外保連手術試案コードの相違点も纏めた。さらに、具体的医療行為に対して5つの分類を用いたコード付けを行い、その対比表を作成した。研究分担者である医師、診療情報管理士が各々の見地から、各分類体系の概要の比較を行い、この過程において抽出された問題点等について考察した。
結果と考察
各コードについて基本構造を比較した結果、ICHIは7桁、CPTは5桁、ICD-9-CMは4桁、J・KコードはKないしJに続く3桁、外保連手術試案コードは7桁であった。項目数について、ICHIは約5,300項目、CPTは約8,000項目、ICD-9-CMは約3,600項目、J・Kコードは約2,300項目、外保連手術試案コードは2,003項目を数えた。各コードが分類されている領域数については、ICHIはセクション1において計12領域、CPTは計12領域、ICD-9-CMは計17領域、J・Kコードは計16領域、外保連手術試案コードは計24領域であり、同カテゴリーにおけるコード数では、多数からCPT、ICHI、ICD-9-CM、J・Kコード、外保連手術試案コードの順であった。外保連手術試案コードとICHIの体系比較を行った結果、いずれも7桁であり、ICHIは最初の3桁が「行為の対象」、中間の2桁が「行為の種類」、最後の2桁が「行為の方法」と設定され、外保連手術試案コードは最初の3桁が「操作対象部位」、次の2桁が「基本操作」、次の1桁が「手術部位へのアプローチ方法」、次の1桁が「アプローチ補助器械」となり、構造が類似していた。一般社団法人日本病院会・診療情報管理士通信教育の教材に掲載されている例題から30の医療行為を5つの分類でコード付けを行い、ICD-9-CMを基準として、Kコード、ICHI、CPT、外保連手術試案コードの順にて対比表を作成した。5分類コードすべてが1対1対応となったのは7行為で、その他の23行為では、5分類のいずれかで1対複数または1対0が発生した。複数コードの発生数についてKコードは8、ICHIは1、CPTは9、外保連手術試案コードは12だった。
結論
医療行為にかかわる国際標準的な分類は、各国の医療水準を客観的に評価する為に重要であるが、現時点ではWHOにおいて開発中のICHIが唯一これに該当する。国内の医療行為分類および米国のCPTは基本的に診療報酬請求の為のものであり、その構造等の面から国際比較の為の使用には不十分である。ICHIは国際比較の標準的ツール等として開発されているとされているため、わが国においても、将来的に対応する必要性があると考えられる。そのためICHI使用に向けて、本研究班研究者は関連国際会議へ参加し、国内の医療行為分類とICHIとの比較検証結果のプレゼンを実施した。その結果、ICHIと他国の分類について比較検証を行った研究はこれまでほとんど行われていなかった点等から、ICHIのメンバーからは本研究班の成果について関心が示された。いずれにしても、各分類により医療行為の定義等が異なっており、有償行為に限った医療行為分類だけでは、国際比較の目的には不十分であり全ての目的を包含できないことがわかった。また、ICHIと国内で使用している医療行為の分類とのマッピング等を行い、比較検証する体制を整えられれば、保険診療情報がそのまま国際比較の目的にも使用できると考えられるが、そのためには積極的にICHI開発に貢献することを検討する必要がある。また、最終的に国内で使用する分類を決定する際は、様々な目的を考慮し、国民的な合意のもと選択されるべきであることを付記したい。

公開日・更新日

公開日
2016-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201504014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究結果から、国内に存在する医療行為分類は基本的に診療報酬請求の為のものであり、その基本理念、構造の面から国際比較の為の使用には不十分であり、米国のCPTも実臨床で行われる手術・手技に関しては詳細な分類であるが、同じく国際比較には適していないことがわかった。また、ICHIは国際比較の標準的ツール等として開発されているとされているため、わが国においても、将来的には対応する必要性があると考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究結果から、各分類により医療行為の定義と範囲が異なっており、有償行為に限った医療行為分類だけでは、国際比較などの目的には不十分であり全ての目的を包含できないことがわかった。
ガイドライン等の開発
各分類には長所、短所があり、それぞれを強制的に修正すべきではないと考える。ICHIと国内で既に使用している医療行為の分類とのマッピング等を行い、比較・検証する体制を整えられれば、日常の保険診療情報がそのまま国際比較の目的にも使用できると考えられるが、そのためにはICHI開発の方向を注意深く見守ると同時に、積極的に参画し、開発に貢献することを検討する必要がある。
その他行政的観点からの成果
最終的に国内で使用する分類を決定する際は、様々な目的を考慮し、国民的な合意のもと選択されるべきであることを確認した。
その他のインパクト
ICHI使用に向けて、本研究班研究者は関連国際会議へ参加し、国内の医療行為分類とICHIとの比較検証結果のプレゼンを実施した。その結果、ICHIと他国の分類について比較検証を行った研究はこれまでほとんど行われていなかった点等から、ICHIのメンバーからは本研究班の成果について関心が示された。特にSurgical and Medical Interventionの項目については外保連試案コードとの比較などから得られた知見を提供することによりICHI開発に貢献できる可能性が示唆された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
2021-06-02

収支報告書

文献番号
201504014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,715,000円
(2)補助金確定額
1,715,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 416,511円
人件費・謝金 0円
旅費 836,380円
その他 462,149円
間接経費 0円
合計 1,715,040円

備考

備考
利息40円が発生し、同額を支出したことによる。

公開日・更新日

公開日
2016-07-20
更新日
-