文献情報
文献番号
201504012A
報告書区分
総括
研究課題名
厚生労働科学研究における研究成果のアウトカム評価の指標及び手法の開発に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-012
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 緒方 裕光(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
- 前田 秀雄(東京都医学総合研究所)
- 神里 彩子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野・研究倫理支援室)
- 福井 次矢(聖路加国際大学・聖路加国際病院、内科学)
- 萱間 真美(聖路加国際大学大学院 精神看護学)
- 満武 巨裕(医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、厚生労働科学研究における研究成果のアウトカム(成果の本質的又は内容的側面であり、活動の意図した結果として、定量的又は定性的に評価できる、目標の達成度を測る指標)を適切に把握するための指標及び手法を提案し、研究成果を総合的かつ長期的に評価する仕組みを検討することを目的とした。
研究方法
米国におけるアウトカム評価の調査(米国の国立衛生研究所(NIH, National Institute of Health)及び保健医療向上研究機構(AHRQ, Agency for Health Care Research and Quality)におけるアウトカム評価に関するインタビュー調査)、行政的アウトカムの評価方法の検討(行政担当者を対象とした自記式調査票調査、半構造化インタビュー調査、文献調査)、アウトカム評価の活用方策の検討(自殺対策のための戦略研究の2つの研究プロジェクトについて文献検討、半構造化インタビュー)、地方自治体の視点からの検討(地方自治体における政策決定過程の各段階における評価指標の考え方の検討)、学術的アウトカムの評価方法の検討(厚生労働科学研究成果データベースに登録されている原著論文の発表数とそれらの被引用数を用いた定量的分析、同データベースに登録されている行政効果報告に含まれる文章データのテキストマイニング分析)、経済効果に関する検討を行い、最後にそれらの結果をふまえてアウトカム評価の指標・手法の検討を行った。
結果と考察
推奨されるアウトカム指標としては、(1) 死亡率(米国NIHにおける主要なアウトカム評価指標となっており、国内においても肝炎に関する研究が肝癌死亡率の減少に寄与している可能性が示唆されているなどの事例が存在)、(2) 研究領域に特有の指標(例えば、移植成績、患者に適切に説明する医療機関の割合、自殺企図の再発率など)、(3) 制度形成に関する定性的評価(例えば、支援制度、健診制度、診療報酬改定などに資する研究成果など)が挙げられる。一方で、現時点で推奨を保留とする指標としては、QALY(Quality Adjusted Life Year、本質的に健康に関する最も重要な指標のひとつであるが、研究の評価指標として未確立)、金銭表示での便益(研究評価としての実例が希)、学術論文の被引用数(学術面でのアウトカム評価指標として挙げられることが多いが、系統的に把握するための費用や労力・研究領域等による格差・行政的な成果が軽視されるおそれ等が課題)、マスメディアへの掲載数(社会へのインパクトを定量化する指標となりうるが、定量化の方法が確立していない・研究の成果以外の要因が大きいなどが課題)がある。
アウトカム評価の方法として、制度形成への貢献などについては、引き続き研究者から、また必要に応じて行政担当者からの報告を求める意義は大きいと考えられる。一方で、諸外国や多分野における実施状況を注視しながら、過度な負担にならないよう、データベースの検索や統計資料の解析などを中心にアウトカム評価を実施することが推奨される。
良いアウトカムが得られる研究を活性化するためには以下の点が推奨される。(1) 目的・ゴールの明確な設定(どのような研究成果が期待されるかを明確化することが重要)、(2) 行政的な成果の推進(研究者と行政担当者のコミュニケーションを密に行うことによって、異なる立場の者の間で共通の目標を形成することが重要)、(3) 学術的な成果の推進(行政的な成果のための研究であっても、国・地域や時代を超えてその成果を共有する必要が高いため、学術論文や学会発表等により研究成果を国内外に発信し、後生に残すことが重要)、(4) 社会への情報発信の推進(厚生労働科学研究が社会に貢献した事例や、ある症例における研究の恩恵などを含めて、一般国民にとって具体的でわかりやすい形での情報発信を推進する必要。また研究者の任用や昇進において、学術的な研究業績だけではなく、行政的な研究業績も重視されるように情報発信する必要)、(5) 体制の構築(研究班を組織する際に、行政的な成果、学術的な成果、社会への情報発信などそれぞれに秀でた人々のチームとして組織。また、研究の本体部分が終了した後にも、学術的な成果発表や社会への情報発信を支援する体制の充実が必要)。
アウトカム評価の方法として、制度形成への貢献などについては、引き続き研究者から、また必要に応じて行政担当者からの報告を求める意義は大きいと考えられる。一方で、諸外国や多分野における実施状況を注視しながら、過度な負担にならないよう、データベースの検索や統計資料の解析などを中心にアウトカム評価を実施することが推奨される。
良いアウトカムが得られる研究を活性化するためには以下の点が推奨される。(1) 目的・ゴールの明確な設定(どのような研究成果が期待されるかを明確化することが重要)、(2) 行政的な成果の推進(研究者と行政担当者のコミュニケーションを密に行うことによって、異なる立場の者の間で共通の目標を形成することが重要)、(3) 学術的な成果の推進(行政的な成果のための研究であっても、国・地域や時代を超えてその成果を共有する必要が高いため、学術論文や学会発表等により研究成果を国内外に発信し、後生に残すことが重要)、(4) 社会への情報発信の推進(厚生労働科学研究が社会に貢献した事例や、ある症例における研究の恩恵などを含めて、一般国民にとって具体的でわかりやすい形での情報発信を推進する必要。また研究者の任用や昇進において、学術的な研究業績だけではなく、行政的な研究業績も重視されるように情報発信する必要)、(5) 体制の構築(研究班を組織する際に、行政的な成果、学術的な成果、社会への情報発信などそれぞれに秀でた人々のチームとして組織。また、研究の本体部分が終了した後にも、学術的な成果発表や社会への情報発信を支援する体制の充実が必要)。
結論
厚生労働科学研究がより効果的に実施され、国民の健康等にさらに一層貢献できるように、期待される研究成果を明確化して、それに沿ったアウトカム評価を推進していくことが必要である。
公開日・更新日
公開日
2017-05-26
更新日
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