文献情報
文献番号
201504008A
報告書区分
総括
研究課題名
視覚障害者の就労継続における早期支援と介入のあり方に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 政代(公益財団法人先端医療振興財団 先端医療センター病院 眼科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
視覚障害者の多くは医学的失明者ではなくロービジョン(弱視)であり、多くはロービジョンケアにより就労・日常生活だけでなく、スポーツや趣味まで健常者と同様にもしくは一緒に行うことが可能となる。しかし、視覚障害者や眼科医及び産業医、企業の中におけるロービジョンケアの認知度は一般的に低く、関連する情報提供の有効性が知られていないのが現状である。
そこで、本研究では、医療・福祉・産業など就労支援を行う各分野の有識者による研
究会を立ち上げ、就労支援コンシェルジュシステムを検討し、就労(支援)につなげることを目的に当事者、人事担当者、産業医、眼科医、支援施設等をつなぎ、情報提供、収集、アーカイブする情報ネットワークを構築する。
そこで、本研究では、医療・福祉・産業など就労支援を行う各分野の有識者による研
究会を立ち上げ、就労支援コンシェルジュシステムを検討し、就労(支援)につなげることを目的に当事者、人事担当者、産業医、眼科医、支援施設等をつなぎ、情報提供、収集、アーカイブする情報ネットワークを構築する。
研究方法
当事者へのロービジョンケア・リハビリテーションによる事例を通して、現状把握、情報収集、課題抽出を目的に就労支援フロー検討研究会を計5回開催し、主に次の3項目について検討を行った。
(1) 視覚障害者の就労支援情報アプリ基本設計書作成:就労支援情報アプリにおける情報の流れ・有効性・必要性を検討。アプリの設計開発にあたって検索に必要な項目を選定し、基本設計書の作成を行った。
(2)支援・サービス情報共有度シートによる情報分析:15の支援機関・施設・団体間における相互の業務内容および支援情報共有度を可視化するために相互評価および自己評価によるアンケート調査を行った。評価項目は①他施設との連携、②教育・訓練、③補助具、④企業との連携、⑤経済的支援、⑥支援形態に分類し、全23項目について相互評価を行った。
(3)カテゴリー別就労事例による情報分析と実態把握:個人の具体的な就労事例ではなく、情報の流れを確認することを目的に就労事例情報の集積を行った。事例の記入には経歴をカテゴリー別にすることで、就労事例パターンの可視化を目指した。
(1) 視覚障害者の就労支援情報アプリ基本設計書作成:就労支援情報アプリにおける情報の流れ・有効性・必要性を検討。アプリの設計開発にあたって検索に必要な項目を選定し、基本設計書の作成を行った。
(2)支援・サービス情報共有度シートによる情報分析:15の支援機関・施設・団体間における相互の業務内容および支援情報共有度を可視化するために相互評価および自己評価によるアンケート調査を行った。評価項目は①他施設との連携、②教育・訓練、③補助具、④企業との連携、⑤経済的支援、⑥支援形態に分類し、全23項目について相互評価を行った。
(3)カテゴリー別就労事例による情報分析と実態把握:個人の具体的な就労事例ではなく、情報の流れを確認することを目的に就労事例情報の集積を行った。事例の記入には経歴をカテゴリー別にすることで、就労事例パターンの可視化を目指した。
結果と考察
3項目についての結果と考察は次のとおり。
(1) 視覚障害者の就労支援情報アプリ基本設計書作成
(結果)本研究においては就労支援情報の提供のキーパーソンは眼科医、産業医、企業の人事担当者であると結論づけたことから本アプリにおいても3者が必要とする情報を得られるように設計した。
(考察)視覚障害者の就労支援情報アプリと既存の情報データベースとの大きな違いは、利用者を産業医と企業の人事担当者に限定した点である。視覚障害者本人でなく、第三者である産業医や人事担当者が視覚障害者に情報を提供するため、質問項目に対してそれぞれ選択肢から回答を選んで入力することで、視覚障害者(労働者)のニーズにあった支援施設・機関を自動的に抽出する就労継続に特化したアプリはこれまでになかった。
(2)支援・サービス情報共有度シートによる情報分析
(結果)各施設によって支援内容の特徴があり、強い部分と弱い部分があることがわかった。また、自己評価と他者評価に差があるケースがあり、興味深いのは、特に点数差が大きな場合において、自己評価よりも他者評価の得点が高くなっている点であった。
(考察)相互評価の差異の原因のひとつに考えられるのは、医療・教育・行政といった縦割りの支援体制による弊害と考えられる。また、この調査で明らかになった各施設の支援内容の特徴は当事者、眼科医、企業の人事など外部の者にはわからないことで、(1)で開発するアプリはこの特徴をとらえて適切な施設を紹介することに寄与すると考えられる。
(3)カテゴリー別就労事例による情報分析と実態把握
(結果)本研究では、62の事例を集積し、16のカテゴリーに分類することができた。就労事例のパターン化が可能か検証するため、経歴をカテゴリー別にしたが一見すると偏った傾向が見られる反面、地域性など原因も明らかになった。
(考察)今後は職業の一つとして自営、起業という選択肢があることがもっと広く知られていくことが望まれる。また、スポーツを職業とするような新規事例を積極的に取り上げるなど新たな事例収集が必要である。記載情報を極限まで少なくし、カテゴライズすることにより、短時間で見やすい就労事例にまとめることができたと考える。
(1) 視覚障害者の就労支援情報アプリ基本設計書作成
(結果)本研究においては就労支援情報の提供のキーパーソンは眼科医、産業医、企業の人事担当者であると結論づけたことから本アプリにおいても3者が必要とする情報を得られるように設計した。
(考察)視覚障害者の就労支援情報アプリと既存の情報データベースとの大きな違いは、利用者を産業医と企業の人事担当者に限定した点である。視覚障害者本人でなく、第三者である産業医や人事担当者が視覚障害者に情報を提供するため、質問項目に対してそれぞれ選択肢から回答を選んで入力することで、視覚障害者(労働者)のニーズにあった支援施設・機関を自動的に抽出する就労継続に特化したアプリはこれまでになかった。
(2)支援・サービス情報共有度シートによる情報分析
(結果)各施設によって支援内容の特徴があり、強い部分と弱い部分があることがわかった。また、自己評価と他者評価に差があるケースがあり、興味深いのは、特に点数差が大きな場合において、自己評価よりも他者評価の得点が高くなっている点であった。
(考察)相互評価の差異の原因のひとつに考えられるのは、医療・教育・行政といった縦割りの支援体制による弊害と考えられる。また、この調査で明らかになった各施設の支援内容の特徴は当事者、眼科医、企業の人事など外部の者にはわからないことで、(1)で開発するアプリはこの特徴をとらえて適切な施設を紹介することに寄与すると考えられる。
(3)カテゴリー別就労事例による情報分析と実態把握
(結果)本研究では、62の事例を集積し、16のカテゴリーに分類することができた。就労事例のパターン化が可能か検証するため、経歴をカテゴリー別にしたが一見すると偏った傾向が見られる反面、地域性など原因も明らかになった。
(考察)今後は職業の一つとして自営、起業という選択肢があることがもっと広く知られていくことが望まれる。また、スポーツを職業とするような新規事例を積極的に取り上げるなど新たな事例収集が必要である。記載情報を極限まで少なくし、カテゴライズすることにより、短時間で見やすい就労事例にまとめることができたと考える。
結論
再生医療や先進医療などの最新の治療とロービジョンケアおよび視覚リハビリテーションは視覚障害者支援における車の両輪であり、どちらか一方が欠けても体をなさない。
我々が研究拠点とする神戸で神戸アイセンター(仮称)を中心に再生医療研究で世界をリードする我々が中心となり、視覚障害者の就労支援情報アプリなどのツールを活かした就労支援コンシェルジュシステムを立ち上げることで地域の特性を活かした就労支援フローの構築が可能になると考えている。
さらに今後は視覚障害者の就労支援情報アプリの基本設計書を公開し、兵庫県(神戸)版をモデルとして全国への普及を目指すためにも研究継続は必至である。
我々が研究拠点とする神戸で神戸アイセンター(仮称)を中心に再生医療研究で世界をリードする我々が中心となり、視覚障害者の就労支援情報アプリなどのツールを活かした就労支援コンシェルジュシステムを立ち上げることで地域の特性を活かした就労支援フローの構築が可能になると考えている。
さらに今後は視覚障害者の就労支援情報アプリの基本設計書を公開し、兵庫県(神戸)版をモデルとして全国への普及を目指すためにも研究継続は必至である。
公開日・更新日
公開日
2016-05-30
更新日
-