文献情報
文献番号
201504004A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師2年課程(通信制)への進学者の就業年限と就業内容に応じた教育(実習)内容についての研究
課題番号
H27-特別-指定-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
井部 俊子(聖路加国際大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、看護師学校養成所2年課程(通信制)(以下「通信課程」)への入学要件である、准看護師としての経験年数10年を短縮するための検討資料とするため、准看護師の就業の状況や、通信課程における教育提供体制の実情を明らかにすることを目的としている。
研究方法
本研究は「准看護師の就業に関する調査(准看護師調査)」および「通信課程の教育に関する調査(教員調査)」の2つの調査で構成した。【准看護師調査】通信課程在籍の准看護師および都道府県看護協会主催の准看護師対象研修に参加した准看護師を対象とし、「准看護師の就業内容に関する調査票」を配布した(データ収集期間:2015年8月11日~9月30日)。【教員調査】①通信課程の教員を対象とし、「看護師学校養成所2年課程(通信制)の教育に関する調査票」を配布した(データ収集期間:2015年8月11日~9月10日)。②通信課程の教員を対象とし、教育の実態について半構造化面接を実施した(2015年8月11日~9月30日)。全ての研究は聖路加国際大学研究倫理審査委員会の承認を得たうえで実施した(承認番号15-035)。
結果と考察
【准看護師調査】全国の看護師学校養成所2年課程(18箇所)および5か所の都道府県看護協会に調査票を送付し、研究への参加を依頼した。4350通配布し、2208票の調査票を回収した(回収率50.8%)。対象者の実技技能実施度は准看護師経験年数よりも、就業場所による差が大きく、特に入院病床がない診療所で就業する准看護師の平均値が低かった。入学要件としての経験年数は「5年」が適切とするものが最も多かった(32.6%)。【教員調査】①調査票は180通送付し116票の調査票を回収した(回収率64.4%)。通信課程就学中に学生が最も身に付けるべき力は「アセスメント能力」であった。入学要件としての経験年数は「5年」が最も適切と回答した者が最も多かった(48.3%)。なお、本研究は通信課程への入学要件としての准看護師経験年数について「『10年以上の実務経験』という現行の規制を大幅に緩和する方針を決め」、「5年程度とする方向」という報道(2015年7月5日読売新聞)の直後に実施されており、回答内容が報道の影響を受けた可能性がある。業務経験年数の短縮に際して、「見学実習の受け入れ施設の充実」、「教員の増員」、「教員の教育力向上」などの対策が必要だという回答が多かった。②教員46名にインタビューを実施した。学生の就業期間、基礎的な学習経験の違いによって学生の準備状況が大きく異なることが、教育上の大きな課題であることが指摘された。また、通信課程では現状でも「見学実習」という実習方法や実習場所の確保、通信機器を通じた学習支援方法、技術の習得支援方法、教員の人材育成等に、大きな課題があることが指摘された。さらに、現行の制度における入学要件としての経験年数が10年であることにも明確な根拠がない上、看護基礎教育を通信制で行うという方法についても、その効果が検証されないまま継続しているという指摘があった。本研究をきっかけに、看護基礎教育制度、准看護師制度のあり方を再考することが必要である。
結論
通信課程に入学する准看護師の業務経験は、経験年数のみならず経験の質(内容)にもばらつきが大きいことが分かった。通信課程での教育については、特に「見学実習」のあり方の検討と、受け入れ機関の協力が必要であることが指摘された。准看護師においても、教員においても通信課程への入学要件としての准看護師業務経験を短縮する場合、「5年」が適切とするものが多かった。ただし、実習のほか、教員数、教員の教育力、学習支援方法などにおいては現状でも課題があることから、教育側が対策を講じる必要がある。
公開日・更新日
公開日
2016-06-07
更新日
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