文献情報
文献番号
201504003A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国の医師配置等に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小林 廉毅(東京大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
- 松本 正俊(広島大学 医学部 地域医療システム学)
- 豊川 智之(東京大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
- 武田 裕子(順天堂大学 大学院医学研究科 医学教育学)
- 八木 聰明(人間環境大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,066,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の医師数は総数で増えている一方、医師の地域偏在・診療科偏在については、近年の医療をめぐる重要な課題となっている。医師確保対策としては、すでに各医学部における入学定員増や地域枠創設、各都道府県における地域医療介護総合確保基金による取り組みや地域医療支援センターの設置などの施策が実施されている。このような施策の効果や評価については、今後検証されていくであろうが、長期的な医師確保のあり方の検討も必要と考えられる。その基礎資料として、本研究では諸外国における医師配置の仕組み等について情報収集と分析を行う。
研究方法
日本と同程度の医師養成の仕組みを有する諸外国(英国、ドイツ、フランス、米国、カナダ、オーストラリア等)における、以下の内容について、国内外の既存の文献等を調査して情報を整理する。必要に応じて専門家や当事者から聞き取り調査を行う。また、わが国の医師・歯科医師・薬剤師調査等の既存統計情報の個票データを活用し、経年変化を追うことにより、わが国の医師の動向を把握し、諸外国と比較検討する。
(倫理面への配慮)
諸外国の医師配置等に関する文献・資料等の調査については、個人情報等を含まないことから、特段の倫理的な配慮は必要ないと考えられる。わが国の医師調査の個票データについては統計法に則した申請及び取扱いを行う。
(倫理面への配慮)
諸外国の医師配置等に関する文献・資料等の調査については、個人情報等を含まないことから、特段の倫理的な配慮は必要ないと考えられる。わが国の医師調査の個票データについては統計法に則した申請及び取扱いを行う。
結果と考察
英国、ドイツ、フランス、米国、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾における医師養成及び医師配置の仕組み等について情報収集と分析を行った。多くの調査対象国において、医師全体に関する過剰問題は現在起こっておらず、むしろ地域偏在の問題が指摘された。診療科についても、国によっては特定の診療科における医師不足が指摘されていた。地域ごとの医師の配置等、診療科ごとの専門医養成・配置等については、各国の医療制度のありようとも関連しており、施策・取り組みの主体は、国(中央政府)、州政府、専門診療科団体、医師会、大学など、それぞれの国によって異なり、施策の内容についても違いが見られた。ドイツでは偏在対策として、医師会や保険医協会等の協議のもとに地域・診療科ごとに保険医定員(開業医師)を設けて偏在を是正する取り組みを実施していた。また、非都市部で開業する一般医(GP)には、開業資金の助成や子どもの保育・教育支援等のインセンティブが設けられていた。オーストラリアでは、各大学医学部定員や地域別のGP専門医研修定員については連邦政府が裁量権を持っており、これらをコントロールすることで適正な医師数と医師分布を目指していた。また、へき地勤務の医師を増やすため、州政府の主導でほとんどの大学医学部にRural Clinical Schoolが設置されていた。医師の労働時間については、ヨーロッパの調査対象国において、EU規則等により統一的な規制がなされていることが特徴的であった。
わが国の医師の動向については、過去約30年間の医師免許取得者の約半数が、卒業大学と同一都道府県に勤務していた。新設大学卒業医師は旧設大学卒業医師にくらべ同一県内勤務割合が低かった。また、医師全体では地域偏在について縮小傾向が見られたが、病院勤務医や産婦人科医は拡大傾向が見られた。集約化の影響と考えられた。
以上の結果から、多くの調査対象国において、医師全体に関する過剰問題は現在起こっておらず、国によって程度は異なるものの、地域偏在の問題があると考えられた。診療科についても、国によってはGP、精神科医、小児科医、救急医など特定の診療科における医師不足が指摘されていた。地域ごとの医師の配置、診療科ごとの専門医養成数・配置等については、各国の医療制度のありようとも密接に関連しており、施策・取り組みの主体は、国(中央政府)、州政府、専門診療科団体、医師会、大学など、それぞれの国によって異なり、施策の内容についても違いがあると考えられた。また、医師の労働時間については、ヨーロッパの調査対象国において、EU規則等により統一的な規制がなされていることが特徴的であった。
わが国の医師の動向については、過去約30年間の医師免許取得者の約半数が、卒業大学と同一都道府県に勤務していた。新設大学卒業医師は旧設大学卒業医師にくらべ同一県内勤務割合が低かった。また、医師全体では地域偏在について縮小傾向が見られたが、病院勤務医や産婦人科医は拡大傾向が見られた。集約化の影響と考えられた。
以上の結果から、多くの調査対象国において、医師全体に関する過剰問題は現在起こっておらず、国によって程度は異なるものの、地域偏在の問題があると考えられた。診療科についても、国によってはGP、精神科医、小児科医、救急医など特定の診療科における医師不足が指摘されていた。地域ごとの医師の配置、診療科ごとの専門医養成数・配置等については、各国の医療制度のありようとも密接に関連しており、施策・取り組みの主体は、国(中央政府)、州政府、専門診療科団体、医師会、大学など、それぞれの国によって異なり、施策の内容についても違いがあると考えられた。また、医師の労働時間については、ヨーロッパの調査対象国において、EU規則等により統一的な規制がなされていることが特徴的であった。
結論
現状で医師の過剰問題が起こっている国はほとんどなく、医師の地域偏在や診療科ごとの偏在が多くの国で問題とされていた。これらに対する取り組みについては、医療制度のありようとも密接に関連しており、それぞれの国での取り組みの主体、施策内容などに違いが見られた。
公開日・更新日
公開日
2016-06-14
更新日
-