文献情報
文献番号
201504001A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国に適応した神経学的予後の改善を目指した新生児蘇生法ガイドライン作成のための研究
課題番号
H27-特別-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)
- 細野 茂春(日本大学医学部小児科学系小児科学分野)
- 岩田 欧介(久留米大学 小児科)
- 中村 友彦(長野県立こども病院 総合周産期母子総合医療センター)
- 草川 功(聖路加国際大学・聖路加国際病院 小児科)
- 杉浦 崇浩(静岡済生会総合病院 新生児科)
- 河野 由美(自治医科大学 小児科学)
- 松田 義雄(国際医療福祉大学 周産期センター)
- 池田 智明(三重大学 産科婦人科)
- 米本 直裕(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神薬理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の周産期医療は世界的に高い水準に維持され、ハイリスク新生児の予後は近年著明に改善している。しかし、救命できない例、神経障害が発生する例が存在することも事実である。特に神経障害発生例では、出生後の低酸素・酸血症の持続が脳性麻痺発症の原因となる例は決して少なくない。そこで、わが国の周産期医療体制に適合した新生児蘇生のための基礎研究を実施し、新生児蘇生法のガイドラインの作成を行う。また、周産期医療で行ったクラスターランダム化比較試験である「周産期医療の質と安全の向上のための研究」で登録された極低出生体重児の予後の追跡調査を行い、新生児蘇生法を含めた周産期医療の質の向上のために必要な治療法の標準化を行う。
研究方法
1. 日本の医療体制に適合した新生児心肺蘇生法ガイドラインの作成のために、以下の項目について検討を行った。
1)小型脳組織酸素飽和度モニターを用いた仮死蘇生法の妥当性の検証
2)看護師による予定帝王切開分娩立ち会いの検討
3)カプノメータを用いた新生児蘇生法の有効性の検討
4)胎盤血輸血が生後のビリルビン値におよぼす影響の検討
5)低体温療法の適応基準に満たない新生児仮死児の体温管理法の検討
6)極低出生体重児の出生時の体温保持のためのラップの使用法の検討
7)分娩室における正確な心拍数検出方法の検討
8)ラリンゲアルマスクおよび声門上気道デバイスの有用性の検討
2. 周産期医療の質と安全の向上のための介入研究の結果の検証について、以下の項目について検討を行った。
1)介入研究に参加して登録された極低出生体重児について、エンドポイントである修正1.5歳および3歳時の予後データを収集する。
2)介入試験に参加した施設の組織としての評価項目を収集する。
3)ハイリスク児の予後に影響する産科因子を検討する。
4)新生児の予後改善に必要な新生児医療行為の妥当性を検証する。
5)介入試験のデータマネジメントと統計解析法の検討と固定
6)作成したガイドラインの試験対象施設以外での参加型ワークショップの開催と医療の標準化
1)小型脳組織酸素飽和度モニターを用いた仮死蘇生法の妥当性の検証
2)看護師による予定帝王切開分娩立ち会いの検討
3)カプノメータを用いた新生児蘇生法の有効性の検討
4)胎盤血輸血が生後のビリルビン値におよぼす影響の検討
5)低体温療法の適応基準に満たない新生児仮死児の体温管理法の検討
6)極低出生体重児の出生時の体温保持のためのラップの使用法の検討
7)分娩室における正確な心拍数検出方法の検討
8)ラリンゲアルマスクおよび声門上気道デバイスの有用性の検討
2. 周産期医療の質と安全の向上のための介入研究の結果の検証について、以下の項目について検討を行った。
1)介入研究に参加して登録された極低出生体重児について、エンドポイントである修正1.5歳および3歳時の予後データを収集する。
2)介入試験に参加した施設の組織としての評価項目を収集する。
3)ハイリスク児の予後に影響する産科因子を検討する。
4)新生児の予後改善に必要な新生児医療行為の妥当性を検証する。
5)介入試験のデータマネジメントと統計解析法の検討と固定
6)作成したガイドラインの試験対象施設以外での参加型ワークショップの開催と医療の標準化
結果と考察
1. わが国の周産期医療体制に適合した新生児蘇生法ガイドラインの作成について
1)正期産児22例の測定で、有害事象は認めず安全に使用可能であった。また、蘇生を必要としない新生児での生後10分までの酸素飽和度の正常変動値を得た。
2)分娩立ち会300例を検討した結果、新生児死亡や重大な合併症の発生はなく、NICUの入院率の有意な増加も認めなかった。
3)蘇生時の有効な換気を評価することが可能であった。
4)胎盤血輸血により生後の高ビリルビン血症のリスクが増大することが認められ、わが国で全例に実施すると重症黄疸のリスクが高くなることが示された。
5)現行の低酸素虚血性脳症での低体温療法の適応基準を満たさない、早産児または低出生体重児、治療開始が6時間以降の児、中等症の低酸素虚血の所見を有する児、等での低体温療法の有効性と安全性を検証する多施設共同試験の研究計画書が作成された。
6)極低出生体重児の出生時の体温保持のためラップを使用することで体温維持が可能であることが示された。
7)新生児蘇生時の心拍数の評価として、胎児ドプラ装置を用いることで分娩時に正確な心拍数を短時間で取得できることが示された。
8)ラリンゲルマスクおよびi-gelTMの有用性が示され、両デバイスによる安全で迅速な新生児蘇生法の可能性が示唆された。
2. 周産期医療の質と安全の向上のための介入研究の結果の検証について
1)介入研究に参加して登録された3435例の極低出生体重児について、エンドポイントである修正1.5歳および3歳時の予後データが継続して収集された。
2)介入試験に参加した施設の組織としての評価項目の収集を継続した。また、介入試験のデータマネジメントと統計解析法の検討および固定が行われた。
3)ハイリスク児の予後に影響する産科因子を検討するために、産科診療に関するデータベースとのリンクが進められた。また、母体ステロイド投与されて出生した早産児の予後の解析の結果から、出生前母体ステロイド投与のガイドラインが作成された。
4)新生児の予後改善に必要な新生児医療行為の妥当性の検証では、胎盤血輸血による早産児の死亡率と輸血率の減少効果が科学的に示された。
5)作成したガイドラインの試験対象施設以外での参加型ワークショップの開催による医療の標準化のために、2個所の総合周産期母子医療センターでガイドラインの解説とワークショップを行った。
1)正期産児22例の測定で、有害事象は認めず安全に使用可能であった。また、蘇生を必要としない新生児での生後10分までの酸素飽和度の正常変動値を得た。
2)分娩立ち会300例を検討した結果、新生児死亡や重大な合併症の発生はなく、NICUの入院率の有意な増加も認めなかった。
3)蘇生時の有効な換気を評価することが可能であった。
4)胎盤血輸血により生後の高ビリルビン血症のリスクが増大することが認められ、わが国で全例に実施すると重症黄疸のリスクが高くなることが示された。
5)現行の低酸素虚血性脳症での低体温療法の適応基準を満たさない、早産児または低出生体重児、治療開始が6時間以降の児、中等症の低酸素虚血の所見を有する児、等での低体温療法の有効性と安全性を検証する多施設共同試験の研究計画書が作成された。
6)極低出生体重児の出生時の体温保持のためラップを使用することで体温維持が可能であることが示された。
7)新生児蘇生時の心拍数の評価として、胎児ドプラ装置を用いることで分娩時に正確な心拍数を短時間で取得できることが示された。
8)ラリンゲルマスクおよびi-gelTMの有用性が示され、両デバイスによる安全で迅速な新生児蘇生法の可能性が示唆された。
2. 周産期医療の質と安全の向上のための介入研究の結果の検証について
1)介入研究に参加して登録された3435例の極低出生体重児について、エンドポイントである修正1.5歳および3歳時の予後データが継続して収集された。
2)介入試験に参加した施設の組織としての評価項目の収集を継続した。また、介入試験のデータマネジメントと統計解析法の検討および固定が行われた。
3)ハイリスク児の予後に影響する産科因子を検討するために、産科診療に関するデータベースとのリンクが進められた。また、母体ステロイド投与されて出生した早産児の予後の解析の結果から、出生前母体ステロイド投与のガイドラインが作成された。
4)新生児の予後改善に必要な新生児医療行為の妥当性の検証では、胎盤血輸血による早産児の死亡率と輸血率の減少効果が科学的に示された。
5)作成したガイドラインの試験対象施設以外での参加型ワークショップの開催による医療の標準化のために、2個所の総合周産期母子医療センターでガイドラインの解説とワークショップを行った。
結論
わが国の周産期医療に適応した新たな新生児蘇生法ガイドライン作成に繋がる基礎データの集積およびハイリスク児の神経学的障害をさらに予防できる周産期医療の標準化を実施体制が整った。
公開日・更新日
公開日
2016-05-30
更新日
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