ポスト国連ミレニアム開発目標における保健関連及びその他目標の採択過程、実施体制と目標間の関連性の研究

文献情報

文献番号
201503005A
報告書区分
総括
研究課題名
ポスト国連ミレニアム開発目標における保健関連及びその他目標の採択過程、実施体制と目標間の関連性の研究
課題番号
H27-地球規模-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
村上 仁(国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国際医療協力局、保健医療開発課)
研究分担者(所属機関)
  • 池上 清子(日本大学総合社会情報研究科 )
  • 大橋 正明(聖心女子大学文学部人間関係学科)
  • 高橋 華生子(明治大学情報コミュニケーション学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,838,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は以下の 3 つの目的で実施する:(1)ポスト 2015 年開発目標採択と、その後の目標実現に向けた国際動向を把握・報告;(2)保健関連目標・ターゲット達成(2030 年まで)に向けた実施体制と、モニタリング・評価指標をめぐる議論を分析・報告。WHO 執行理事会、世界保健総会などにおける要対応事項に関し、対応を提案;(3)保健関連目標(ゴール 3)と、それ以外の新たな国際アジェンダを反映した目標(例:ゴール 10「国内・国家間の不平等削減」、ゴール 11「包摂的、安全、リジリエントで持続可能な都市・居住区」等)の関連性を、グローバルガバナンスの視点から分析・報告。

研究方法
初年度9月の国連総会でのSDGs採択までは、採択に向けた動向を取りまとめた。採択後は、SDGs全体の実施体制に留意し、主要論点を取りまとめた。SDGs健康関連ゴール・ターゲット達成の実施体制の把握・調査を実施。また、持続可能な開発アジェンダの展開に向けた、グローバルな官民の動きを分析した。平成27年度はバングラデシュ、米国、ケニア、ザンビア、インドにて現地調査を実施した。
結果と考察
SDGs に反映された価値観として、包括的パートナーシップによる変革、開発観の転換(先進国から途上国への ODA に頼り「世界総先進国化」するという開発観から、ユニバーサルなパートナーシップへ)、持続可能な開発資金、ユニバーサリティー「誰も取り残さない」、包摂性(インクルーシブネス)、官民連携、市民社会の参加、データ革命が挙げられる。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) は SDGs の保健ゴールに関連したアジェンダの中で、最も transformative かつシンボリックなものである。SDGs 時代に、生活習慣病対策は、非常に幅広い多セクター間の取り組みになりうると認識されている。他方、生殖母性新生児小児保健(RMNCH) アジェンダについては、国連事務総長が主管する Every Woman Every Child (EWEC) が 2011 年 に 発 足 し、RMNCHのグローバル戦略が打ちだされた。進捗モニタリングのためCOIA(情報とアカウンタビリティ委員会)とその下部組織であるiERG(独立専門家レビューグループ)が設立され、アカウンタビリティの強化が図られた。2015年以降は第二次グローバル戦略に沿って実施される。バングラデシュにおいては、SDGsと第7次国家開発計画(5か年計画)の整合性を確保するための調整が行われていた。ザンビアにおいては、2015年3月から持続可能な開発目標のための技術委員会が設立された。ザンビアにおける保健医療に関する取り組みは、SDG3全体をUHCの傘の下に置き、ケアの向上、サービスの拡大、財政的な危機回避と保護(社会保障、特に健康保険の導入)を進めていた。MDGsの目標であった母子保健の状況が向上していないことを受けて、母子と新生児死亡削減が課題となっていた。インドにおいては、SDG3(全ての人に健康と福祉を)の中核をなすUHC達成に向けた制度設計ならびに動向が明らかとなった。インド政府は2012-17年の12次五か年計画で、2020年までにUHC達成を謳った。2005年に中央政府主導によりNational Rural Health Mission (NRHM)が始まり、ガイドラインが作成された。目標11の舞台は都市や地域であり、地方自治体が主導的な実施主体となる場合が多い。したがって地方自治体のキャパシティ・ビルディングが目標11の上位課題であると仮定できる。多くの途上国の自治体が財政難に苦しんでいることを鑑みると、目標11のビジョンを実現させるには、地方レベルにおける資金調達力の向上が急務となる。
結論
保健セクターでは、UHC が社会変革的アジェンダとして出され、生活習慣病対策など、新規分野で多セクター的な展開が模索されている。一方、RMNCH のように、既存事業がポスト 2015 年に継続実施される部分も多い。今後、SDGs が提示する開発パラダイムの転換を、どのように保健セクター全体に反映するのか、議論の余地は大いにあると思われる。本研究では、ジェンダー主流化、貧困、飢餓、都市居住環境などが、健康課題と密接に関連していることが明らかとなった。今後、SDG3と他のゴールに向けた取り組みを、レトリックでなくどのように政策的、実務的に調和させていくか、日本を含めた各国の取り組みが待たれる。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201503005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,838,000円
(2)補助金確定額
4,838,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 323,236円
人件費・謝金 799,339円
旅費 2,675,777円
その他 1,039,764円
間接経費 0円
合計 4,838,116円

備考

備考
銀行利息116円。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-