文献情報
文献番号
201503003A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア、ASEAN諸国の人口高齢化と人口移動に関する総合的研究
課題番号
H27-地球規模-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
- 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 千年よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 中川雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 小島克久(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 佐々井司(福井県立大学 地域経済研究所)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 中川聡史(埼玉大学 大学院人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本を追って急速な経済発展を果たしたアジアNIEsと中国に続き、発展の波はASEAN諸国へと波及している。これらの国々では出生率が急激に低下し、日本以上に急速な高齢化が予想される。東アジア・東南アジアの多くの国で人口ボーナスは消失しつつあり、十分な経済発展と社会保障制度の整備が達成される前に人口高齢化の負の影響が現れる「未富先老」が懸念される。世界で最も高齢化した日本の先行事例を伝えるとともに、これらの国の政策対応を比較分析することは、日本に有益な示唆を与え得る。同時に大都市への人口集中が地方の高齢化を加速させ、高齢化が外国人労働者、国際結婚、退職者の移住等を促進する側面にも注目する必要がある。
研究方法
本事業においては、まず東アジア、ASEAN諸国における人口変動過程(少子化、長寿化、高齢化、国内・国際人口移動等)および関連する政策(少子化対策、家族政策、健康医療介護政策、地方分権政策、移民政策等)の比較分析により、個々の特徴や問題点を明らかにする。また、人口変動に対処する社会保障制度、とりわけ高齢化により需要が急増する医療・介護人材に関する比較を行い、現状や課題、対応策などの多様性を明らかにし、各国の介護政策のあり方とともに、わが国の医療・介護施策の東アジアでの位置、施策の普遍性、今後のあり方に資する知見を得ることを目指す。さらに低出産・高齢化と国内・国際人口移動の交互作用、及び政策との関連を分析する。
結果と考察
韓国では圧縮的都市化により高齢者への家族支援の弱体化が進んだが、台湾は都市化が緩慢で状況はは韓国ほど悪化していない。台湾の出生率低下は、儒教的家族パターンが最もよく保存されていることと関係がある。出生促進策策は期待したほどの効果を上げていないが、外国人人口の増加は外国人雇用政策と密接な関連がある。韓国の首都機能移転が人口分布・移動にどの程度影響するかは未知数である。中国では先進国化する以前に高齢化のため経済成長が止まってしまう「未富先老」が懸念されているが、タイとベトナムの状況はさらに深刻である。日本・韓国・台湾・シンガポールが外国人労働者・外国人花嫁の受入国であるのに対し、ASEAN諸国は送出国で、中国はその両面を持つ。中国やASEAN諸国の労働者・人材に対しては、今後分野によって日本・韓国・台湾といった受入国の間で獲得競争が激化する可能性がある。
結論
経済が未成熟なまま人口高齢化によって発展が阻害される状況は、東南アジア全般に拡散する可能性がある。賢明な経済政策と外国資本の意欲的な投資などで、人口学的不利をはね除けて経済発展できればよいが、そうでなければ深刻な事態に陥り得る。社会保障制度が未成熟なまま高齢者人口が増加した場合、政府は家族移転を保持・強化しようとするだろう。既に中国・韓国でそうした試みが見られ、近い将来ASEANでも現れるかもしれない。韓国の首都機能移転は、先進国的な状況下で人口分布への介入がどの程度可能かを見極めるための貴重な事例となるだろう。
公開日・更新日
公開日
2016-05-24
更新日
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