複数の厚生労働統計をリンケージしたデータによる医療提供体制の現状把握と実証分析

文献情報

文献番号
201502012A
報告書区分
総括
研究課題名
複数の厚生労働統計をリンケージしたデータによる医療提供体制の現状把握と実証分析
課題番号
H27-統計-若手-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
高久 玲音(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 別所 俊一郎(慶応義塾大学経済学部)
  • 安藤 道人(国立社会保障・人口問題研究所 公共経済学 (社会保障基礎理論研究部))
  • 山岡 淳(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
  • 佐方 信夫(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会を間近に控え、医療提供体制の改革について多くの議論が行われている。しかし、望ましい改革の方向性についての知見は未だ十分とは言えない。その理由は、厚生労働省の保有する医療機関に関する公的統計が十分に活用されていないことも一因だろう。特に、医療提供体制の中核をなす医療機関行動に関する我が国の知見は多くない。病院・診療所単位の分析が我が国で進展していないことを端的に示している事実は、厚生労働省の保有する代表性の極めて高い医療機関に関する様々な基幹統計が、十分に活用されてこなかったことである。『医療施設調査』『患者調査』『受療行動調査』『医師歯科医薬剤師調査』『病院報告』『社会医療診療行為別調査』など継続性と代表性の高い調査は全て医療機関番号をもとに連結可能と考えられ、その連結データによって、医療提供体制の改革に資するようなエビデンスが数多く提供されると考えられる。
研究方法
調査開始にあたって、まず、厚生労働省の行っている公的統計の調査票情報の利用申請を行った。具体的には、患者調査(病院奇数票・退院票)、医療施設調査(静・動)、受療行動調査、社会医療診療行為別調査、病院報告(患者票・従事者票)について、1999年から2011年までの調査票を取得した。2014年度調査に関しては、次年度に継続が認められれば利用申請を行う予定である。
次に、取得したデータを統計ソフトに読み込み、各統計を医療施設単位で連結した。患者調査と受療行動調査については、施設コードと患者の性・生年月日で連結した。このデータにより、受療行動調査において調査されている入院満足度や退院の意向などの調査項目が、病院の属性(看護スタッフ数など)や患者の属性(主傷病、救急搬送の有無など)と連結可能になった。その後、「看護配置の充実度と入院患者のアウトカムの関連に関する分析」「救急医療提供体制の地域差に関する分析」「病院における雇用や在院日数の季節性・及び時系列変化に関する分析」「MRI等高額機器の導入要因に関する分析」「自治体病院改革と地域医療・地域福祉に関する分析」などの個別テーマに関する分析が各研究分担者によって進められた。
結果と考察
まず、患者調査、受療行動調査、病院報告、医療施設調査のリンケージ・データを用いて、看護スタッフの充足度(看護師数/病床数)が入院患者のアウトカムにどのような影響を与えるか検討した。海外の類似の研究でも米国において看護スタッフの数が入院患者の満足度に大きな影響を与えていることが示されているが、本研究班ではわが国の大規模なデータを用いてこの知見について再検討できる。分析の結果、看護スタッフの数は入院について満足だと答える確率を大きく引き上げることが示唆された。それだけではなく、分析結果は、看護師数が増えることにより患者の退院意向が向上することを示唆した。これらの分析結果は、大規模なリンケージデータを作成したことで初めて明らかになった点であり、今後の医療政策に対しても多くの示唆を有すると考えられる。その他の個別的な研究課題についても、初年度については基礎的な集計表の作成や分析を終えており、次年度にリンケージ・データを利用した患者アウトカムへの影響を明らかにしたい。
結論
本研究班では複数の厚労統計をリンケージ・データを作成することで、医療機関の行動変化から患者アウトカムへの影響に至るまで、一体的に分析することを目指している。初年度においては、特に看護スタッフの多寡が患者アウトカムへ大きな影響を与える可能性が示唆されたほか、その他の個別的テーマについても基礎的な結果を得ることができた。これらの分析については、次年度により詳細な考察と分析を加えるべきものであり、確定的な見解とは言えないが、少なくともリンケージ・データが医療政策の効果を測定するための極めて有用なデータとなりえることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201502012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,355,320円
人件費・謝金 0円
旅費 22,680円
その他 624,336円
間接経費 0円
合計 2,002,336円

備考

備考
2336円支出が超過したが、細かい金額の調整が困難だったことによる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-